異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

第3部 第29話 「兄貴、ミズノに立つ！新副団長“レオン”始動」

「おーい、団長ォ！ 今日からよろしく頼むぜ！」
朝の農場に、豪快な声が響き渡る。
門の前に立っていたのは、深緑のマントをなびかせた、筋骨隆々の男。
鋭い眼差しと、快活な笑顔。肩には大剣、腰には農具セット。
初めて会った時とは、違って貫禄が出ている。
きっと、たくさんの修羅場をくぐったのだろう。
そしてその背後には、数人の精鋭たちが従っていた。
「うわ、あれが……あの有名なレオンさん……！」
「マジで来たんだ、あの“雷刃の副隊長”が……！」
「まさかミズノに配属されるなんて……すごすぎる……！」
農場騎士団の若手たちがざわめき、憧れの眼差しを向ける。
「……ほんとに来てくれたんですね、レオンさん」
「おうよ、約束したからな。こっちはこっちで、面白そうだ」
陽介と握手を交わすレオン。その力強い手に、団員たちは自然と背筋を伸ばす。
________________________________________
🛠 新体制、スタート！
その日から、ミズノ農場では新体制がスタートした。
• 団長：水野陽介（領主兼任）
• 副団長：紬（行政・技術・戦略）
• 訓練指導副団長：レオン（戦闘・戦略・士気）
「おい新人、耕す前に、まず腰の入れ方から教えてやる！」
「はいっ！！」
「カーラ、そっちの討伐スケジュール、昼に見せてくれ。次の巡回ルート再調整するぞ」
「了解！」
軍隊的な統率力と、農場の現場感覚の両立――
レオンは、見事に“ミズノ流”に順応していた。
「剣も鍬も、使い方は同じさ。力を入れすぎず、芯をとらえる。そうだろ？ 陽介」
「はい。――それ、僕が最初に言われたセリフですよ」
________________________________________
🌿 紬との会話
その夜。仕事を終えた陽介と紬は、焚き火を囲んでいた。
「レオンさん、すごいね。あっという間に“空気”つくっちゃって」
「うん。本当にありがたい。団員たちもすごく安心してる」
「ねぇ陽介」
「ん？」
「……これから先、もっと“大きな波”が来る気がする。魔物も、街も、エネルギーのことも」
陽介はしばし黙り、火の揺らぎを見つめたあと、静かに言った。
「だからこそ、こうやって“準備”してる。レオンも来てくれた。
君もそばにいてくれる。それだけで、俺は負けないよ」
紬は微笑んで、小さく「うん」とうなずいた。