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朝の光が、カーテン越しに優しく差し込んでいた。
「おはよー……って、え、もう書いてるの? 日記?」
「うん、書いてる。“今日の幸せ。彩と庭にハーブを植えた。”って」
「まだ植えてないじゃん!? 今日の午後でしょ!?」
「未来幸せ予約。先取りだよ」
「そんなのアリ!? じゃあ私、“今日の幸せ。昼にお兄ちゃんが洗い物してくれた”って書く」
「プレッシャーかけるな!? それ実行前提!?」
二人は笑いながら朝ごはんの席に着く。食卓には、焼きたてのパンと昨夜のスープの残り。
ふと彼が、窓の外に目をやる。
「それと、今追加。“今日の幸せ。朝の光が、すごくきれいだった。”」
「うん、それは反則級にきれいだったね……」
「あともう一個。“ただいまって言ったら、彩がぎゅっとしてくれた。”ってのも、昨日分に追加しといた」
「なにそれ、こっそり感動入れてくるのズルいなあ……じゃあ私も、昨日の“幸せ欄”に“お兄ちゃんの背中があったかかった”って追加しとこ……」
「……俺、今日から背中にヒーター内蔵してることにするわ」
「それ多分、医療相談案件だからやめて」
そんなやりとりをしている間に、彼の「小さな幸せ日記」は、もうとっくに1万件を超えていた。
だけど、不思議とカウントは気にならなかった。
「ねえ、いつまで書くの?」
彩が聞いた。
彼は、ペンをくるくる回しながら考え込む。
「うーん……うちらがヨボヨボになって、字が震えて、“今日の幸せ。味噌汁の具をちゃんと飲み込めた”とかになるまでかな」
「じゃあ、“今日の幸せ。おじいちゃんがちゃんと靴下履けた”って書くのもアリ?」
「うん、超アリ」
彼は日記を閉じ、そっと胸にしまった。
「……人生ってさ、やっぱり、悪いことばかりじゃないよな」
「うん、ていうか、うちの場合……むしろ笑い話多すぎるんだけど?」
「それも含めて、いい人生ってことで」
そう言って、彼はコーヒーを一口。
その隣で、彩が猫のミケノフスキーを膝にのせながら、小さくつぶやいた。
「よーし、今日の幸せ。“ミケが私の足をふみふみしてくれた”っと……」
今日もまた、「小さな幸せ日記」はふたりぶん、増えていく。
きっと明日も、その次の日も。
そしてその積み重ねこそが――
世界でいちばん、あたたかな奇跡だった。
最後までお読みいただきありがとうございます🌷
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あなたのひと言が、次のお話を書く力になります✨
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「そんなのアリ!? じゃあ私、“今日の幸せ。昼にお兄ちゃんが洗い物してくれた”って書く」
「プレッシャーかけるな!? それ実行前提!?」
二人は笑いながら朝ごはんの席に着く。食卓には、焼きたてのパンと昨夜のスープの残り。
ふと彼が、窓の外に目をやる。
「それと、今追加。“今日の幸せ。朝の光が、すごくきれいだった。”」
「うん、それは反則級にきれいだったね……」
「あともう一個。“ただいまって言ったら、彩がぎゅっとしてくれた。”ってのも、昨日分に追加しといた」
「なにそれ、こっそり感動入れてくるのズルいなあ……じゃあ私も、昨日の“幸せ欄”に“お兄ちゃんの背中があったかかった”って追加しとこ……」
「……俺、今日から背中にヒーター内蔵してることにするわ」
「それ多分、医療相談案件だからやめて」
そんなやりとりをしている間に、彼の「小さな幸せ日記」は、もうとっくに1万件を超えていた。
だけど、不思議とカウントは気にならなかった。
「ねえ、いつまで書くの?」
彩が聞いた。
彼は、ペンをくるくる回しながら考え込む。
「うーん……うちらがヨボヨボになって、字が震えて、“今日の幸せ。味噌汁の具をちゃんと飲み込めた”とかになるまでかな」
「じゃあ、“今日の幸せ。おじいちゃんがちゃんと靴下履けた”って書くのもアリ?」
「うん、超アリ」
彼は日記を閉じ、そっと胸にしまった。
「……人生ってさ、やっぱり、悪いことばかりじゃないよな」
「うん、ていうか、うちの場合……むしろ笑い話多すぎるんだけど?」
「それも含めて、いい人生ってことで」
そう言って、彼はコーヒーを一口。
その隣で、彩が猫のミケノフスキーを膝にのせながら、小さくつぶやいた。
「よーし、今日の幸せ。“ミケが私の足をふみふみしてくれた”っと……」
今日もまた、「小さな幸せ日記」はふたりぶん、増えていく。
きっと明日も、その次の日も。
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