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第62話 アリアとシャルの日常

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 オリエンス王国の姫様が樹の家に居候を始めて一週間ほどが経過した。

「旦那さま、ギルド本部より書簡が届いております」

 セザールが樹の部屋へとやって来た。

「おう、ありがとうな」

 樹は書簡を受け取るとペーパーナイフを使い、綺麗に開けた。


『明日の昼、ギルドマスター室へと来られたし。重要な話がある。アリアとシャルも同伴するように』

 書簡にはそう書かれていた。

「重要な話って何だろうな。とりあえず、アリアとシャルに話さないとな」

 ギルド本部に呼ばれるのも久しぶりな気がする。
樹はアリアとシャルに伝えるため、階段を降りた。

「アリア、シャル、ちょっといいか」

 二人ともキッチンに居たので声を掛けた。

「ええ、大丈夫ですよ」

 アリアが振り返った。

「明日、ギルド本部にアリアとシャルを連れてきて欲しいらしい。大丈夫か?」
「え、私もですか?」

 シャルは驚いたような声を上げた。

「ああ、今回は俺とアリア、シャルの呼び出しだ。なんか、重要な話があるらしいぞ」
「そうですか」

 シャルはちょっと不安気な顔をした。

「大丈夫だって。きっとなんかの依頼だろ。シャルも強くなってきたしな」
「分かりました。明日、準備しておきます」
「私も大丈夫ですよ」

 アリアとシャルの了承をもらった所で、樹は二人に尋ねた。

「ところで、それは何を作っているんだ?」
「シャルさんにお菓子作りを教えてたんですよ。樹さんに食べてもらいたいとかで」
「ちょっと、アリアさん! それは言わない約束でしたよね!」

 シャルが頬を真紅に染めた。

「へぇ、これはプリンだな。アリアは料理全般上手いからな。期待してるぞ」

 樹はそう言うと自分の部屋に戻って行った。

「旦那様、夕食のご用意が出来ました」

 セザールが部屋まで呼びに来た。

「ありがとう。今行く」

 そう言うと樹はリビングへと向かった。

「お、これはさっき作っていたプリンだな」

 夕食にはデザートとしてシャルが作ったプリンが置かれていた。

「はい、うまく出来たかわかりませんが」

 メインの料理を食べ終わると樹はプリンを口にした。

「うん、これ美味いよ」

 なめらかな舌触りで甘さ控えめ。
カラメルソースが苦手な樹のために、カラメルソースは使われていなかった。

「良かったです!」


 樹が褒めるとシャルは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

「シャルは料理も上手いんだな」
「アリアさんが手伝ってくれたおかげです」

 シャルは照れくさそうに笑った。

 翌日、樹は昼前に起きだした。

「おはよう。そろそろ時間だよな」
「あ、おはようございます。そうですね、そろそろ向かった方がいいかと」
「了解」

 樹はアリアとシャルを連れてギルド本部へと向かった。

「はぁ、やっぱ目立つなぁ」

 美少女メイドを二人も連れて歩いている樹に対する男たちの目が痛い。
まあ、羨ましかったらそのくらい稼いでみろと言いたいがそうもいかない。
なんやかんやギルド本部に到着し、その扉を開いた。

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