最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷

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第83話 死者を映す水晶

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 最深部へと続く階段を降りて行く。

「ここが、最深部か……」

 最深部には守護者となるモンスターが居ると聞いていたのだが、そのモンスターの姿はどこにも無かった。

「守護者は居ないみたいですね」
「ああ、そうだな」
「なんだ、守護者とは戦って見たかったのだがな」

 シルフィルは久々の戦いを楽しんでいる様子だ。

「まぁ、何にせよ面倒な敵との戦闘は避けるに越したことはない」
「まぁ、そうなのだがな」

 樹は最深部の部屋の中央にある水晶に目がいった。

「これが、死者を映すと言われている水晶か」

 死者への思いが強く無いと映し出すことは出来ないとされている。

「マスターは誰か居るのか?」
「ああ、映ってくれるかは分からないがな」

 何せよ相手はこの世界とは別の世界の人間。
確実に彼女と会話出来る保証は何処にも無い。

「芽衣……」

 樹は通り魔に刺され、この世を去った幼なじみの芽衣を想って水晶に軽く触れた。

「うっ……」

 その時、水晶は白く強い光に包まれた。

「め、芽衣か……」
「久しぶりだね。樹」

 水晶に写し出されたのは紛れもなく元いた世界で失った芽衣の姿だった。

「樹、なんか凄く雰囲気変わったね。ますますカッコよくなったんじゃない?」

 樹の目には涙が溢れていた。

「芽衣……芽衣……」
「樹さま」

 樹の背中にアリアが手を当てた。

「せっかく、強くなられたんです。泣いてばかりでは無く、カッコ良くなった樹さまを芽衣さまにも見せて差し上げたらいかがですか?」

 アリアが樹の背中を押してくれた。

「芽衣、俺も一度死んだんだ。訳あってこの通り生きているがな……」

 樹はアリアたちに聞こえないくらいの声で言った。

「今でも後悔してるよ。この力が、この強さがあれば、お前を守ってやれたのにな」
「仕方ないよ。もう。だからさ、樹の力は今、困ってる人に手を差し伸べてよ」
「おう、分かった」

 すると芽衣は微笑んだ。

「本当に樹なんだよね。カッコ良くなったね。ずっと伝えたかったんだ。私、樹のこと好きだったよ」

 そう言うと芽衣の目にも一筋の涙が流れた。

「俺も、俺も芽衣の事が好きだったよ」
「ありがとう。もし、生まれ変わった先でも手を取り合えたら沢山の恋をしよ」
「おう。もちろんだ。それまで俺はこの国を、世界を、出会った大切な人たちを死ぬ気で守るよ」
「うん、約束だね」

 芽衣がそう言った瞬間、またしても水晶が光った。
やがてその光が落ち着くと芽衣の姿は見えなくなっていた。

「芽衣、約束は必ず果たすよ……」

 樹はその拳を固く握った。

「お話、出来ました?」
「う、うん。ありがとう。アリアのおかけだ」
「いえ、私は何も」
「マスター、カッコ良かったぜ」

 アリアと美人精霊が声を掛けてくれた。

「帰ろう」
「はい」

『転移』

 樹は転移魔法を起動し、王都の屋敷へと帰還した。

 芽衣との大切な約束と今後の目標を胸にし、樹たちは悪を切る。
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