辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷

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第1章

第10話 開業許可

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 翌日、ラースは少し遅めの時間に起きた。
魔力は、睡眠によって回復している。

「ラース様、お食事の用意ができました」
「はい、すぐに」

 着替えを済ませると、リビングへと向かう。
そこには、辺境伯とクレインの姿があった。

「すみません。お待たせしました」
「いや、私たちも今来た所だ。食事にしよう」
「はい、いただきます」

 ラースは2人と食事をする。

「食事が終わったら、2人とも私の部屋に来てくれないか?」
「分かりました」

 そう言うと、辺境伯は一足先に書斎へと戻って行った。
辺境伯は国防の要とも言われている。
その権限も大きい分、忙しいのであろう。

 食事を終えると、ラースはクレインと共に辺境伯の書斎へと向かった。

「座ってくれ」
「失礼します」

 ラースはクレインの隣に腰を下ろす。
対面のソファーには辺境伯が座った。

「今回の魔物の暴走を止めてくれた事、感謝する。これもラースさんのおかげと言っていいだろう」
「そんな、クレイン様や騎士さんの協力があってこそです」

 1では、あんなに簡単には行っていなかっただろう。

「父上、ラースさんはこう言っていますが、私も彼女の功績は大きいと思います。私たちはただ護衛したに過ぎません」
「そうだな。ラースさん、今回の功績で何かさせて欲しい。欲しいものはあるかね?」
「欲しい物、ですか……」
「ああ、お金でも権力でも好きなものを言うといい」

 ラースは考えた。
別に何か欲しいからやった行動ではなかった。

 ただ、領民たちに一刻も早く普通の生活に戻って欲しかった。
それだけである。

「いらないと言うのは無しだからな。それでは我がオーランド家の名が折れる」
「分かりました。辺境伯様にお願いがあります」

 ラースは考えた結果、一つ思いついた。

「何だね?」
「オーランドの街で病院を開業させてはもらえないでしょうか? 動物も人間も貴族も平民も関係ない。そんな病院を作りたいんです」

 ラースは獣医師免許と医師国家資格を有している。
動物も人間も診ることができるのだ。

 そして、医療というのは平等であるべきだと思う。
そこに、貴族や平民というのは関係ない。

 命の価値というものは皆同じなのである。

 しかし、現状としては全く違う。
病院で診察し、回復してもらうには決して安くはないお金がかかる。

 平民にとっては、かなり大きな額である。
それでは、医療では無い。
ラースはそう思っていた。

「そんなことでいいのか?」

 辺境伯が驚いたように言った。

「新しく病院を開業するには、その街の領主の許可が必要なはずです。私は、それを貰えたら十分です」
「分かった。開業許可を出そう。病院の建物についても早急に手配する」
「ありがとうございます」

 こうして、ラースは正式にこの街で病院を開業することになる。
これが、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースの第一歩目であった。
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