辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷

文字の大きさ
26 / 61
第1章

第26話 龍の治療へ

しおりを挟む
 ラースとクレインはドラグス王国の騎士たちと共に、龍の治療へと向かっていた。

「ラース先生、クレイン様、ここからは徒歩になります。大丈夫ですか?」

 どうやら、馬車で入れるのはここまでということらしい。

「問題ありません。行きましょう」

 ラースは、馬車を降りると医療セットが入った鞄を持って騎士たちの後ろをついて歩く。

「もう少しです!」

 騎士たちの後について歩くこと15分ほど。
森の中でも、少し開けた場所へと出た。

「あれは、黒龍……」

 ぐったりとした龍がそこに居た。
黒龍を見るのは初めて。

 龍族の中でも黒龍はかなり、位が高いものとされている。

『人間が何用だ?』

 黒龍の声だ。

「ラースと言います。あなたを治療しに来ました」
『治療など要らん。龍を舐めるな』
「でも、あなたはだいぶ弱っているようです。私に、治療させてください」

 龍は誇り高き種族である。
よって、人間の施しなどは滅多に受けない。
でも、このまま放置するのは危険だとラースは判断した。

『黒龍よ、意地を張ってないでラース殿の治療を受けろ。お前、このままだと死ぬぞ』

 ララが黒龍へと言った。

『なんだ、懐かしい気配がすると思ったらフェンリルのララか。人間と一緒に行動しているなどお前も落ちたか』
『死に損ないに言われたかないわ。ささっと治療を受けろ馬鹿者が』
『お前がそこまで言うなら治療を受けてやろう。頼んだぞ』

 黒龍がララの説得によって治療に応じてくれた。

「ララと黒龍は知り合いなの?」
『はい、実際に会うのは250年ぶりになりますが』
「仲良いんだね。じゃあ、早速診せてもらうね」

 ラースは黒龍の診察を始める。

《医療魔法・スキャン》

 黒龍の体の様子を見る。
体内に異物や腫瘍などといった異常は感じない。

《医療魔法・検知》

 すると、黒龍の体内から毒物の反応があった。

「あなたを苦しめているものがわかりました。毒です」
『毒だと? 我にそんなものが効くはずがなかろう』
「ちょっと待ってください」

《医療魔法・分析》

 ラースは毒の成分分析を行った。

「これはただの毒ではありません。対龍用に作られた人工的な毒です」
『そんな馬鹿な』
「原因が分かれば後は対処するだけです」

《医療魔法・調剤》

 ラースは医療魔法で解毒剤を生成した。

「これを飲んでください。対龍毒の解毒剤です。騙されたと思って」
『わかった』

 黒龍はその薬を全て飲み干してくれた。

『これは、凄いな。先ほどまでの苦しみが嘘のようだ』
「これで、もう大丈夫。よく、頑張りましたね」

 そう言って、ラースは黒龍の首を撫でた。

「黒龍様は治ったのですか!!」

 騎士たちがラースが治療を終えたのを見て駆け寄って来た。

「黒龍は毒にやられていました。今、その毒は取り除きました」
「そうですか! ありがとうございます!!」
「でも、まだ解決しなければならない問題があります。黒龍の水飲み場に案内してもらえますか?」
「わ、わかりました! こちらです」

 ラースたちは、黒龍の水飲み場へと向かった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

婚約者に捨てられた私ですが、なぜか宰相様の膝の上が定位置になっています 

さくら
恋愛
 王太子との婚約を一方的に破棄され、社交界で居場所を失った令嬢エリナ。絶望の淵に沈む彼女の前に現れたのは、冷徹と名高い宰相だった。  「君の居場所は、ここだ」  そう言って彼は、ためらいもなくエリナを自らの膝の上に抱き上げる。  それ以来、エリナの定位置はなぜか宰相様の膝の上に固定されてしまう。  周囲からの嘲笑や陰口、そして第一王子派の陰謀が二人を取り巻くが、宰相は一切怯むことなく、堂々とエリナを膝に抱いたまま権力の中枢に立ち続ける。  「君がいる限り、私は負けぬ」  その揺るぎない言葉に支えられ、エリナは少しずつ自信を取り戻し、やがて「宰相の妻」としての誇りを胸に刻んでいく。  舞踏会での公然の宣言、王妃の承認、王宮評議会での糾弾――数々の試練を経ても、二人の絆は揺らがない。むしろ宰相は、すべての人々の前で「彼女こそ我が誇り」と高らかに示し、エリナ自身もまた「膝の上にいることこそ愛の証」と誇らしく胸を張るようになっていく。  そしてついに、宰相は人々の前で正式に求婚を告げる。  「エリナ。これから先、どんな嵐が来ようとも――君の定位置は私の膝の上だ」

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

処理中です...