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第2章

第10話 獣医師会議

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「もうすぐですね」

 辺境伯邸で夕食を取っているとクレインが言った。

「そうですね。ちょっと緊張します」

 ラースがローラン獣医師会の会長に就任してから、初の獣医師会議が今週末に迫っていた。
なので、ラースは明日にでも王都へと向かうことになるのである。

「ラースさんなら大丈夫ですよ」
「そうだといいんですがね」

 今回の会議では、ラースの会長就任の挨拶がメインになってくるだろう。

「今回は、私が同行出来ないので心配です」

 クレインは別の仕事があるので、今回のラースの王都遠征には同行できないらしい。

「心配しなくても大丈夫ですよ。辺境伯の騎士さんたちが護衛してくれることになっていますから」

 辺境伯に鍛えられた騎士たちは、この国の国境を守る砦でもある。
王都の騎士にも負けないほどの実力者が揃っている。 

「気をつけて行って来てくださいね」
「ありがとうございます。またすぐに戻りますから」

 日程としては、会議を終えたらすぐに戻るつもりである。
1週間ほどで帰って来れるだろう。

 ここには、ラースのことを待っている患者さんも多いのだ。


 ♢

 
 ラースがオーランドを出発して数日。
王都に到着し、獣医師会議の当日となった。

 会場は獣医師会本部の大会議室である。
会長のラースを始め、副会長やその他役員、主要動物病院の院長などが集まっている。

「議長のガインです。まずは新たに就任されました、ラース・ナイゲール会長にご挨拶を頂きます」

 議長の言葉で、会議が開始される。

「この度、会長に就任しましたラース・ナイゲールです。みなさんもご存知とは思いますが、祖父はベルベット・ナイゲールです。祖父の名に恥じぬよう、精一杯努めますので何卒みなさんのお力添えをよろしくお願いいたします」

 ラースの挨拶が終わると、一斉に拍手が起こった。
そこから、今後の獣医師会の方針や活動予算についての話し合いが行われた。

「では、最後にみなさんから何かご提案やご意見がある方はいらっしゃいますか?」

 議長が言った。

「私から、一つよろしいでしょうか?」

 ラースが手を挙げて発言した。

「ラース会長、どうぞ」
「ありがとうございます」

 そう言って、ラースは立ち上がった。

「最近、多くの動物病院をたらい回しにされ、適切な治療を受けられないまま、時間が経過してしまう患者さんが多い気がします」

 実際、ラースの病院にも多くいた。

「それは、病院同士の連携が上手く取れて居ないからだと思うのです。なので、私は地域に根付いた町医者の開業医さんと、大きな動物病院を繋ぐシステムを構築したいと思っています」

 患者さんが一番最初に行くのは、地域のかかりつけ医だろう。
その町医者が手に負えない時はどうすればいいのか、その仕組がまだ出来上がっていないのが現状である。

「名付けて“地域動物医療ネットワーク“、これを実現したいと思います」

 その時のラースの発言に、その場にいる誰もが思った。

 あの“伝説の名医“が数年の時を経て帰って来たと。
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