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第2章

最終話 未来の獣医へ

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 1ヶ月後、ラースの体調は完全に復活していた。
病院業務にも戻っている。

 唯一、変化した点としたらクレインと結婚した事だろうか。

 結婚式も半年後に挙げる予定である。

「院長、今ので最後の患者さんです」
「ありがとう。では、今日は終わりにしましょうか」

 最後の患者さんの治療を終えると、病院を閉める準備をする。

「こっちもやらなければですね」

 ラースが立ち上げた地域動物医療ネットワークも徐々に機能するようになっていた。

 地域動物医療連携室の職員の働きのおかげで、加盟してくれる開業医さんの数も増加している。

 これで、もっと増えて行けば地域の動物医療は大きく発展する事だろう。

「院長、そろそろ帰りませんか?」
「そうですね。帰りますか」

 夜もだいぶ更けてきた。
書類のチェックは明日にでもやるとしよう。

 病院業務を終えて、ラースたちは帰路に就く。




「クレイン、お前は本当にいい妻を持ったな」

 辺境伯邸。
バーロンは酒を煽りながら口にした。
今日は親子2人で酒を飲んでいる。

「はい、私にはもったいないくらいですよ」
「一時は婚約者も作ろうとせず、どうしたものかと思ったがな」

 クレインはずっと婚約者を作らなかった。
貴族というのは大抵は、16歳までに婚約者を決めるものである。

 辺境伯の後継ぎということもあり、バーロンはずっとそこを危惧していたのだ。

「父上には色々とご心配をおかけしました」
「いや、あんな素晴らしい婚約者が居るならいいじゃないか。立派だよ彼女は」

 ラースはまだ若い。
しかし、その肩には大きな責任が乗っている。

 医者というのは、命を預かっているのだ。
そこでミスをしたら、命を失ってしまう。
そんな、命の最前線で戦っているのである。

「私も、負けてられませんね」
「人間というは今は見えているが、10年後は見えていないものだ。しかし、10年後を見える優れた目の持ち主がいる。それがラースさんであったり今は亡きベルベットであると私は思うな」

 今日救えなかった患者も対策が見つかれば、明日は助けられるかもしれない。
そうしたら、1日分多くの患者さんたちをたすける事が出来るのだ。

 そのために、情報は公表する。
そこから、新たな発見があり医学は進歩していくのである。

 医療の世界は日進月歩なのだ。

「私も、伝説の名医に会ってみたかったですね」

 クレインは常々思っていた。

「それなら、ラースさんを見てればいいんじゃないか?」
「どういう意味ですか?」
「何、今のラースさんは亡きベルベットそのものだよ」


【第2章 完】


《あとがき》
お読み頂きありがとうございます。
第2章はここで最終話とさせて頂きます。

実は、私の専門は獣医学では無く"法医学"になります。
なので、この話を書く上で、獣医学について沢山学びました。
それは私としても楽しかったです。

そして、思いました。
医療界に入る前、どのくらい医療を信頼していたか。
私たちが大丈夫と言っても、患者さんの不安は完成に払拭はされないでしょう。
現実にもラースやベルベットのような医者がいてくれたらなと思い書きました。
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