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第4章
第4話 陰謀のセオリー
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ガイル神獣国の王都に到着すると、ラースたちは王宮へと招かれた。
「遠い所、ようこそおいで下さいました」
そう言って、燕尾服を着た壮年の男が粛々と頭を下げる。
「私、王家家令を務めておりますバラットと申します」
「ラース・ナイゲールです。よろしくお願いします」
「お噂は伺っております。国王陛下をよろしくお願い致します。まずは長旅の疲れを癒やして下さい。こちらで部屋を用意させて頂いております」
ラースとクレインには王宮内に部屋が用意されていた。
今日はもう日も落ちている。
ガイル国王の診察は明日の朝という事になった。
「ラース様はこちらを、クレイン様には隣の部屋をご用意致しました。何か不自由な事がございましたら、何なりとお申し付け下さい」
「ありがとうございます」
用意された客室は、充分な広さと高価そうな調度品が並べられていた。
「さすがにちょっと疲れましたね」
荷物の整理も一通り終えて、ベットに横になって天井を眺める。
意識がぼんやりとして来た時、ラースは嫌な気配を感じ取った。
「この気配……」
《医療魔法・探知》
「一個上の階みたいですね」
気になったラースは部屋を出た。
すると、同時に隣の部屋からクレインも出て来た。
腰には剣を刺しており、いかにも戦闘を警戒しているといった表情を浮かべている。
「まさか、クレインさんも気づきました?」
「ええ、上の階から悪意をもった気配を感じます」
「さすがですね。私の探知では敵は3人です」
「いえ、まさかラースさんも気づいていたとは」
ラースには医療魔法があるので気付けた。
クレインもまた長年の経験から嫌な気が分かるようになったらしい。
「確認しに行きましょう」
「そうですね。見逃す訳には行きません」
「あれ? 今回は止めないんですね」
いつものクレインなら、危険だからラースさんは部屋で大人しくしておいて下さいとか言いそうなものだ。
それを今回は何も言わなかったので、少し驚いた。
「止めても無駄しょう。貴方は一度も自分の信念は曲げなかった」
「よく分かりますね」
「気をつけて下さいね。どんな敵がいるか分かりませんから」
「了解です」
ラースたち二人は階段を登る。
そして、足音を忍ばせ気配を探知した部屋の扉の前へとやって来た。
「ここです」
「まだ気配はありますね」
「開けますよ」
そう言うとクレインは、思いっきり扉を蹴り破った。
そこには、黒装束を身に纏ったいかにもの男たちが驚いた様子でこちらを見ている。
そして、その男達の足元にはロープで縛られている少女の姿があった。
「女性をデートに誘うにしては、少々手荒な気がしますよ。そんなんじゃモテませんね」
ラースが賊へと言い放つ。
「貴様ら、何者だ? 何故、隠密スキルを使って居る我々が分かった?」
「え? 普通に探知出来ましたけど」
「クソ! 高位なスキル持ちか……!」
男たちは懐からナイフを取り出した。
「やっぱりそうなりますよね」
どうやら、大人しく捕まってくれる気は無いらしい。
「ラースさん、下がっていて下さい」
「わかりました」
ラースは、戦闘をクレインに任せる事にした。
「遠い所、ようこそおいで下さいました」
そう言って、燕尾服を着た壮年の男が粛々と頭を下げる。
「私、王家家令を務めておりますバラットと申します」
「ラース・ナイゲールです。よろしくお願いします」
「お噂は伺っております。国王陛下をよろしくお願い致します。まずは長旅の疲れを癒やして下さい。こちらで部屋を用意させて頂いております」
ラースとクレインには王宮内に部屋が用意されていた。
今日はもう日も落ちている。
ガイル国王の診察は明日の朝という事になった。
「ラース様はこちらを、クレイン様には隣の部屋をご用意致しました。何か不自由な事がございましたら、何なりとお申し付け下さい」
「ありがとうございます」
用意された客室は、充分な広さと高価そうな調度品が並べられていた。
「さすがにちょっと疲れましたね」
荷物の整理も一通り終えて、ベットに横になって天井を眺める。
意識がぼんやりとして来た時、ラースは嫌な気配を感じ取った。
「この気配……」
《医療魔法・探知》
「一個上の階みたいですね」
気になったラースは部屋を出た。
すると、同時に隣の部屋からクレインも出て来た。
腰には剣を刺しており、いかにも戦闘を警戒しているといった表情を浮かべている。
「まさか、クレインさんも気づきました?」
「ええ、上の階から悪意をもった気配を感じます」
「さすがですね。私の探知では敵は3人です」
「いえ、まさかラースさんも気づいていたとは」
ラースには医療魔法があるので気付けた。
クレインもまた長年の経験から嫌な気が分かるようになったらしい。
「確認しに行きましょう」
「そうですね。見逃す訳には行きません」
「あれ? 今回は止めないんですね」
いつものクレインなら、危険だからラースさんは部屋で大人しくしておいて下さいとか言いそうなものだ。
それを今回は何も言わなかったので、少し驚いた。
「止めても無駄しょう。貴方は一度も自分の信念は曲げなかった」
「よく分かりますね」
「気をつけて下さいね。どんな敵がいるか分かりませんから」
「了解です」
ラースたち二人は階段を登る。
そして、足音を忍ばせ気配を探知した部屋の扉の前へとやって来た。
「ここです」
「まだ気配はありますね」
「開けますよ」
そう言うとクレインは、思いっきり扉を蹴り破った。
そこには、黒装束を身に纏ったいかにもの男たちが驚いた様子でこちらを見ている。
そして、その男達の足元にはロープで縛られている少女の姿があった。
「女性をデートに誘うにしては、少々手荒な気がしますよ。そんなんじゃモテませんね」
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「貴様ら、何者だ? 何故、隠密スキルを使って居る我々が分かった?」
「え? 普通に探知出来ましたけど」
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ラースは、戦闘をクレインに任せる事にした。
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