辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷

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第4章

第6話 猛き祈り

「クレインさんは今回の件、どう思いました?」

 部屋に戻る道中、ラースが尋ねた。

「だいぶ、神獣国内が乱れているようですね。だから、賊の侵入を許したのかと」
「確かにそうですよね」
「それと、内通者が居る可能も否定出来ません。いくら、隠密スキルがあっても王城に侵入するとなると……」

 隠密スキルといえど、完璧ではない。
気配探知に敏感な者が居たら、すぐにバレてしまう。

 それに、隠密スキルを無効化する魔道具なんてものも王城にはあった。

 誰かが、内部から手引きしたと考えるのが無難だろう。

「ここは、早急にガイル国王を復帰させるのが賢明かと」
「ですね。ありがとうございます」


 ♢


 翌朝、ラースはガイル国王陛下の診察を任された。

「こちらです。よろしくお願いします」

 家令のバラットに王の寝室へと案内される。

「では、診察を始めます」

 ラースがガイル国王の体に触れる。

「これは……」

 陛下の体には、神気が帯びているのを感じた。
これが、神獣の加護というものだろう。

《医療魔法・感知》

「なるほど。国王陛下のご病気の正体が分かりました」
「本当ですか? 陛下は一体なんの病気なんですか?」
「希少性のがんに侵されています」

 希少がんとは、人口10万人あたり6人未満のまれな悪性腫瘍の総称である。

 診断や治療の専門性や特殊性が高いものが多く、診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きい。

 専門家で無ければ、病名が分からない事も多いので、今まで治療が進まなかったのも納得できる。

「陛下は大丈夫なのでしょうか?」
「お父様……」

 家令のバラットと娘のミルルが心配そうな表情を浮かべる、

「大丈夫。きっと良くなりますよ。ここまでがんの進行が抑えられていたのも、神獣様の加護のおかげでしょう」

 陛下の癌を発症した時期を考えれば、本来ならもっと進行してしまっているものである。

 それをここまで、進行を遅らせているとなると、神獣の加護のおかげとしか考えられない。

「守ってくれてありがとうね」

 ラースはガイル陛下の肩に手を置き、神獣へ感謝の気持ちを送った。

「では、治療を始めます。少し、離れていて下さい」

《医療魔法・展開》

『永遠の流れに穿つもの、刹那の縛鎖に去りゆくもの、終焉にたゆたい我が唄を聞け』

 ラースの詠唱が終わると、陛下の体は黄色の光に包まれた。
これは、女神が祝福してくれている証拠である。

《医療魔法・感知》

「これでもう、大丈夫です」

 ガイル国王陛下の、悪性腫瘍は完全に消滅していた。

「もうしばらくしたら、目を覚ますはずです。それまでそばに居てあげて下さい」

 ミルル王女にそう告げて、ラースは部屋を出た。
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