辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷

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第4章

第7話 医師は逃げない

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 ラースの治療は無事に成功した。
翌日には、ガイル国王は起き上がれるまでに回復した。

「今までの苦しみが嘘のようだ。ラース殿、感謝する」

 そう言って、ガイル陛下は頭を下げる。

「いえ、頭を上げて下さい。私は、医者として当然のことをしたまでです」
「それでもだ。誰にだって出来ることでは無いのだ。もっと自分を誇っていいのだぞ」
「ありがとうございます。でも、陛下のお体を今まで守っていたのは神獣様ですので」
「何!? そうなのか」

 陛下の年齢を考えても、病状が進行するのがあまりにも遅すぎる。
それには、神獣の加護が大きく関わっていると予想される。

 神獣の加護によって、陛下の病気は抑えられていたのだ。

「そうです。神獣様の加護のおかげて病気の進行が遅くなっていました。なので、お礼は神獣様に」
「わかった。神獣様に祈りを捧げようじゃないか」
「是非、そうして下さい。では、私は失礼します。お大事なさって下さい」

 ガイル陛下の診察を終えると、ラースは部屋を出た。


 ♢

「ラース様、お食事の準備が整っております。どうぞ」

 家令のバラットにそう告げられた。

「ありがとうございます」
「いえ、お礼を言わなければいけないのはこちらです。陛下をお救い頂きありがとうございます」

 そう言って、バラットが深々と頭を下げる。

「そんな、頭を上げて下さい! 私は当然の仕事をしただけなんですから」
「ラース先生にとってはそれが当然かもしれません。しかし、それは外から見たら当然では無いのです。私は、助けらられなかった命をたくさん見て来ました」

 バラットが視線を落とす。

「自分より若い人を看取るのは、なんというか、受け止めきれないものがあります」
「それは、私もですよ……」

 この世界、救えなかった命は数知れない。
どれだけ、医療知識を頭に詰め込もうが、何も出来ない自分の無力さを感じる。

「それでも、私は医者ですから。それを受け止めて前に進まなければならないんです」

 医療の世界は日進月歩。
今日救えなかった命は明日救えるかも知れない。
明日救えなかった命は明後日救えるかも知れない。

 そんな思いで戦っている医療従事者たちがいるのだ。
その思いを無駄には出来ない。

「さすが、伝説の名医のお孫様ですね」

 バラットが目を細めて、懐かしむように言った。

「祖父を知っているんですね」
「もちろんです。この国にあなたのお祖父様を知らない人なんて居ないですよ。ベルベット氏に助けられた者も数多いですから」
「そうだったんですね」
「でも、私は安心しました。こうして、ベルベット氏亡き今、その遺志を引き継いでいる人がいて」

 その声はとても嬉しそうだった。
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感想 13

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みんなの感想(13件)

さばこ
2023.02.14 さばこ

この作品が好きで読んでいる方はわたしも含め、作者様のペースで更新して頂ければそれで大丈夫ですよ 心と体の健康が一番大事です 待ってますから焦らずにご自身のペースでお過ごしください 更新ありがとうございます

2023.02.19 津ヶ谷

ありがとうございます。
引き続き楽しんで頂けたら嬉しいです。

解除
しまえなが
2023.02.09 しまえなが

優しいお話を読むことが出来て、毎回楽しみにしています。
続きを読めるのは嬉しいですが、自分の事を一番大事にして下さいね。
急ぐ必要は有りません、最初から読み返してのんびりお待ちしていますので🤫

2023.02.09 津ヶ谷

温かいお言葉痛み入ります。
最初から読み直してまで頂けるのは、作者としてこんなに嬉しいことはありません。
引き続き楽しんで頂けるように励みますので、よろしくお願い致します。

解除
hikari
2023.02.07 hikari

ゆっくりとご自分のペースで書いてください。いつでも待っています(^^)
楽しんで書いてくださるよう、心から応援しています。楽しんで読んでいま~す。

2023.02.09 津ヶ谷

温かいお言葉痛み入ります。
引き続き楽しんで頂けるお話が書けるように励んでまいります。
今後ともよろしくお願い致します。

解除

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