5 / 18
五話
陽蘭は華の国の自治区に住む少年だった。
彗の住む桜の国の自治区とは川を挟んで向かい側にある街で、長い歴史と広大な領土を誇る華の国は、名前の通り華やかで多様な文化が花開いていることが自治区からも見てとれた。
陽蘭はその自治区を治める家の息子で、いうならば領主の跡取りのようなものだった。
けれど、彼は跡取り息子だというのに毎日屋敷を抜け出しては彗と落ち合い遊び倒してくれる普通の男の子だった。
彗はすぐに陽蘭が大好きになった。
彗の世界は陽蘭で満たされ、陽蘭以外の何物もない。
陽蘭という存在が太陽の光のように彗を照し、温め、包み込んだ。
そしてそれは陽蘭も同じだった。
陽蘭は由緒正しい名家の息子だったが、彗と同じく愛のない家で育った。
父親は陽蘭と陽蘭の母親に興味を示さず、母親はそんな夫に愛想を尽かし愛人と遊び歩きながらも、自らの地位と名誉のために陽蘭に対して厳しく接し品行方正に、そして母の誇りとなるように教育した。
陽蘭はそんな家が大嫌いでしょっちゅう屋敷を抜け出しては都を遊び歩いていた。
そんな時に出会ったのが彗だった。
当時の彗は、あまり物を知らない子だったから陽蘭の育ちを聞いても態度を変えることなく真っ直ぐ、彗のまま接した。
陽蘭の立場を知っても態度を変えずにいてくれた人間は彗が初めてだったから、陽蘭は彗と一緒にいると自治区の長の息子ではなく、ただの陽蘭として息をすることができた。
彗という孤独の箒星が、陽蘭の真っ暗だった世界を光で明るくした。
彗と陽蘭はお互いの仄かな光でお互いを照らし見つめ合った。
お互いにしか心を開かない二人が恋仲になるのは雲が空を流れ、水が澱みなく進み、生物が片割れを求めるように自然のことだった。
彗の体に精通と初潮が訪れる前から、彗と陽蘭は生物の本能とでもいうように体を重ねていた。
だから孕み腹の彗が陽蘭の子供を宿すことは何の疑問もなかったし、お互いそうなるものだと当たり前だとでもいうように受け入れていた。
けれど、二人の関係は二人以外の誰にも認められていなかった。
陽蘭の母親は、ことあるごとに陽蘭と彗を離れさせようと彗に危害を加えていたし、彗の義母は彗が妊娠したと知ると怒りで震え、陽蘭と二度と会わないように告げて彗を家から追い出した。
彗は陽蘭以上に孤独な人間だった。
けれど、陽蘭の与えてくれた腹の子供が彗の支えとなり彗と子供を危険に合わせる者の元から離れさせることを決心させた。
彗が陽蘭との永遠の決別を覚悟したのは彗が十七、陽蘭が十八の冬だった。
彗の住む桜の国の自治区とは川を挟んで向かい側にある街で、長い歴史と広大な領土を誇る華の国は、名前の通り華やかで多様な文化が花開いていることが自治区からも見てとれた。
陽蘭はその自治区を治める家の息子で、いうならば領主の跡取りのようなものだった。
けれど、彼は跡取り息子だというのに毎日屋敷を抜け出しては彗と落ち合い遊び倒してくれる普通の男の子だった。
彗はすぐに陽蘭が大好きになった。
彗の世界は陽蘭で満たされ、陽蘭以外の何物もない。
陽蘭という存在が太陽の光のように彗を照し、温め、包み込んだ。
そしてそれは陽蘭も同じだった。
陽蘭は由緒正しい名家の息子だったが、彗と同じく愛のない家で育った。
父親は陽蘭と陽蘭の母親に興味を示さず、母親はそんな夫に愛想を尽かし愛人と遊び歩きながらも、自らの地位と名誉のために陽蘭に対して厳しく接し品行方正に、そして母の誇りとなるように教育した。
陽蘭はそんな家が大嫌いでしょっちゅう屋敷を抜け出しては都を遊び歩いていた。
そんな時に出会ったのが彗だった。
当時の彗は、あまり物を知らない子だったから陽蘭の育ちを聞いても態度を変えることなく真っ直ぐ、彗のまま接した。
陽蘭の立場を知っても態度を変えずにいてくれた人間は彗が初めてだったから、陽蘭は彗と一緒にいると自治区の長の息子ではなく、ただの陽蘭として息をすることができた。
彗という孤独の箒星が、陽蘭の真っ暗だった世界を光で明るくした。
彗と陽蘭はお互いの仄かな光でお互いを照らし見つめ合った。
お互いにしか心を開かない二人が恋仲になるのは雲が空を流れ、水が澱みなく進み、生物が片割れを求めるように自然のことだった。
彗の体に精通と初潮が訪れる前から、彗と陽蘭は生物の本能とでもいうように体を重ねていた。
だから孕み腹の彗が陽蘭の子供を宿すことは何の疑問もなかったし、お互いそうなるものだと当たり前だとでもいうように受け入れていた。
けれど、二人の関係は二人以外の誰にも認められていなかった。
陽蘭の母親は、ことあるごとに陽蘭と彗を離れさせようと彗に危害を加えていたし、彗の義母は彗が妊娠したと知ると怒りで震え、陽蘭と二度と会わないように告げて彗を家から追い出した。
彗は陽蘭以上に孤独な人間だった。
けれど、陽蘭の与えてくれた腹の子供が彗の支えとなり彗と子供を危険に合わせる者の元から離れさせることを決心させた。
彗が陽蘭との永遠の決別を覚悟したのは彗が十七、陽蘭が十八の冬だった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
愛人少年は王に寵愛される
時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。
僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。
初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。
そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。
僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。
そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。
兄と、僕と、もうひとり
猫に恋するワサビ菜
BL
とある日、兄が友達を連れてきた。
当たり前のように触れ、笑い、囲い込む兄。
それを当然として受け入れる弟。
そして、その“普通”を静かに見つめる第三者。
そんな中事件がおこり、関係性がゆらぐ。
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。