箒星

zkbk

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五話

 陽蘭は華の国の自治区に住む少年だった。
 彗の住む桜の国の自治区とは川を挟んで向かい側にある街で、長い歴史と広大な領土を誇る華の国は、名前の通り華やかで多様な文化が花開いていることが自治区からも見てとれた。

 陽蘭はその自治区を治める家の息子で、いうならば領主の跡取りのようなものだった。
 けれど、彼は跡取り息子だというのに毎日屋敷を抜け出しては彗と落ち合い遊び倒してくれる普通の男の子だった。

 彗はすぐに陽蘭が大好きになった。
 彗の世界は陽蘭で満たされ、陽蘭以外の何物もない。
 陽蘭という存在が太陽の光のように彗を照し、温め、包み込んだ。

 そしてそれは陽蘭も同じだった。
 陽蘭は由緒正しい名家の息子だったが、彗と同じく愛のない家で育った。
 父親は陽蘭と陽蘭の母親に興味を示さず、母親はそんな夫に愛想を尽かし愛人と遊び歩きながらも、自らの地位と名誉のために陽蘭に対して厳しく接し品行方正に、そして母の誇りとなるように教育した。
 陽蘭はそんな家が大嫌いでしょっちゅう屋敷を抜け出しては都を遊び歩いていた。
 そんな時に出会ったのが彗だった。

 当時の彗は、あまり物を知らない子だったから陽蘭の育ちを聞いても態度を変えることなく真っ直ぐ、彗のまま接した。
 陽蘭の立場を知っても態度を変えずにいてくれた人間は彗が初めてだったから、陽蘭は彗と一緒にいると自治区の長の息子ではなく、ただの陽蘭として息をすることができた。
 彗という孤独の箒星が、陽蘭の真っ暗だった世界を光で明るくした。

 彗と陽蘭はお互いの仄かな光でお互いを照らし見つめ合った。

 お互いにしか心を開かない二人が恋仲になるのは雲が空を流れ、水が澱みなく進み、生物が片割れを求めるように自然のことだった。
 彗の体に精通と初潮が訪れる前から、彗と陽蘭は生物の本能とでもいうように体を重ねていた。
 だから孕み腹の彗が陽蘭の子供を宿すことは何の疑問もなかったし、お互いそうなるものだと当たり前だとでもいうように受け入れていた。
 けれど、二人の関係は二人以外の誰にも認められていなかった。

 陽蘭の母親は、ことあるごとに陽蘭と彗を離れさせようと彗に危害を加えていたし、彗の義母は彗が妊娠したと知ると怒りで震え、陽蘭と二度と会わないように告げて彗を家から追い出した。

 彗は陽蘭以上に孤独な人間だった。
 けれど、陽蘭の与えてくれた腹の子供が彗の支えとなり彗と子供を危険に合わせる者の元から離れさせることを決心させた。

 彗が陽蘭との永遠の決別を覚悟したのは彗が十七、陽蘭が十八の冬だった。
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