トゥーマウス

大好き丸

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第九話 質問攻め

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 アシュリーとリョウは向かい合って睨み合っていた。

「……貴方は何なの?」

「聞いてる意味が分からないわ?何が聞きたいの?」

 頭の口は刺激を与えられた虫のように反射的に問いただす。それにしても質問が漠然としすぎているのもあって答えに困る。トゥーマウスの情報はすでに知っているはずだし、実際出逢った時に知ってそうな感じで二つ名を口にしていた。事前情報以外の何が知りたいと言うのか?

「率直に貴方は私たちの敵なの?それとも味方?」

 暴虐の巨人の体が完全に灰になり、風にのって消えていく。サラサラと粒になって飛んでいくのを確認した後、リョウは口を開いた。

「……その時次第だろうな……お前も知っての通り俺には悪魔が取り憑いている。アークや教会側の正義を盾にする連中が俺を攻撃するから抗うだけだ……」

 その答えに眉を片方吊り上げる。

「……どうして悪魔と戦うの?」

 悪魔が取り憑いているならアークや教会が狙うのは当然だ。なら何故悪魔と戦うのか?その質問にはリョウの口許が機嫌悪そうに下がった。

「……愚問だな……お前たちが悪魔と戦う理由はなんだ?」

「それはその……平和の為よ」

「フッ」と鼻で笑う。その反応にアシュリーの眉間に皺が寄る。

「……なにか言いたげね?」

 リョウが息を吸って答えようとするが、

「当然でしょ?そんな馬鹿みたいな正義感をかざして悦に入ってる……」

 ペラペラと舌の回る口が邪魔をした。ニット帽の口をリョウは勢いよく閉じた。というのもニット帽の前方に垂れ下がった目を隠すほど大きなファスナーの取っ手を後ろに引くと口が閉じていったのだ。
 それこそ鞄の口を閉じていくように綺麗に互い違いに金属同士が噛んで閉じていった。「むぅ~むぅ~……!!」口が物理的に閉じられ、声が出せずに唸る。それに驚いてアシュリーはポカンとした。

「……ゴホンッ失礼……俺はその意見に大いに賛成する……平和こそ重要なものだ。俺はそのために戦っていないがお前の正義を俺は尊重し尊敬する……」

 リョウは頭を下げた。その態度に嫌味が感じられずそこにもポカンとした。

「……アークにもお前みたいな奴がいるんだと安心したよ……」

 頭を上げると険の取れた顔が一瞬だけ見えた。その顔に見惚れてしまったがすぐに怖い顔に戻ったのを見て頭を振った。

「そ、それで?貴方が悪魔と戦う理由は何なのよ」

「……俺は……お前みたいに崇高な思いで戦っちゃいない。そうだな……あえて形容するなら八つ当たりだな……」

「八つ当た……ん?八つ当たり?」

 思ってもみなかった答えに何度か頭の中でも繰り返しその言葉の事を考えるが、どう考えても「八つ当たり」とは他人に怒りや不満をぶつける理不尽な行為であると頭の辞書にもある。

「……俺をこんな体にしやがった奴に仕返しをするために俺は悪魔を殺す……ここにいる悪魔崇拝のクズどもにも分からせてやらなきゃなぁ……」

 ニット帽のせいなのか目元が影になって隠れ、口許だけがひび割れたような笑顔になった。

「……人間を媒介に悪魔を呼び出すのは過去に何度もあったみたいだけど、どうして貴方は意識を保っていられるの?」

「……質問攻めか……どうでもいいだろそんな事……お前が一番気になっていた事を俺は答えた。これ以上は無駄な会話だ。俺はここらで失礼する……」

 踵を返して土煙の中に入っていく。

「待って!私はアシュリー!……貴方は?」

 ピタリと足を止め、振り返ってアシュリーの顔を見る。フッと笑ってそのまま土煙に入っていった。その後ろ姿を目で見送って肩を竦めた。

「……なんで名前なんて……」

 俯き加減で自戒する。

「アシュリー?」

「はっ」として呼ばれた方を見る。そこにはアークの隊員ジューンとジューンと手をつなぐ少女がいた。

「貴女ここで何してるの?」

「ここにいた暴虐の巨人を討滅した所よ。その子は逃げるのに遅れたの?」

 アシュリーは何でもない顔でさっきあったことを思い返す。

「一人で倒したの!?暴虐の巨人を!?」

「まさか、一人じゃ倒しきれないよ。でもここにいた巨人はもういないから安心して……」

「アシュリー!!」

 さらに声をかけられた。今度は大声で怒った口調だ。

「貴女は何故一人で突っ走るの!危険でしょ!早く後方に下がって……!!巨人はどこに行ったの?」

 そこからはジューンと同じようなリアクションで色々質問されたが、落ち着きを取り戻した東区画担当の隊長が後方に下がるように指示。とりあえず報告書をかかされることになった。後、一人で行動した事と命令無視に寄る危険行為について始末書も書かされることになった。
 そんな面倒な沙汰が目の前で下るのをボンヤり眺めながら少女リナは思いを馳せていた。

(ああ、お兄ちゃんが助けたのかぁ……もぅ、何で邪魔すんのかなぁ……)

 フゥ……と小さくため息を吐くとライオンのぬいぐるみの目が密かに光った。

(プルソン?……大丈夫、ちゃんと計画は成功するよ。まぁでもお兄ちゃんは何とかしなきゃダメかも?)

 ふふっと小さく笑う。ジューンはリナがアシュリーの滑稽を見て笑ったのだと思って肩を竦めた。

「……こういう時、何て言うのかな?……この子の将来が楽しみって奴……かな?」

 頬をポリポリ掻きながら皮肉っぽく呟いた。多少の言い合いの後、避難場所を目指してアシュリーを含めた三人で移動する。他は一応検証と追加の悪魔の出現を恐れて留まる事になった。
 東区画出入り口付近まで到着すると、アシュリーとジューンの合流でアークの隊員は四人となった。ここの2人にも突き上げを食らうアシュリー。彼女はここを守るように振り分けられていたのに持ち場を離れたのだとジューンは大体察する。

 アシュリーが見る間にテンションが下がっていくのを尻目にアークの設置したテントに入る。

「ここを出たらもっと美味しいのが食べられると思うんだけど、良かったらこれ食べて」

 机に置かれたバスケットからサンドイッチを取り出した。

「わぁー!」

 丁度サンドイッチが食べたかったリナは喜びから感激の声が出る。ジューンはリナがこれほど喜んでくれるとは思わず自然と笑みが零れた。ジューンからサンドイッチを受け取り、ハモハモとリスのように食べる。

「まだあるから食べていいよ」

 気を良くしたジューンは本当は他の皆の軽食だがリナに勧める。リナもそれには大喜びで受け取った。結局サンドイッチを3つ食べてお腹を膨らませたリナは上機嫌でジューンを見る。

「お姉ちゃん優しいね。気に入っちゃった」

 キャッキャしながらジューンに懐く。

「ありがとう。それじゃ避難しましょうか?」

「えー?私疲れちゃった。ここでしばらく休んでも良い?」

 終いにはわがまままで言い始める始末。ジューンは困り顔だが、疲れたというなら仕方ない。折りたたみ椅子に座らせる。

「ちょっと待っててね。これからのこと聞いてくるから……」

 ジューンはテントを出て行った。

「ね、どう思うプルソン」

 ライオンの目が光る。

「……やっぱり?ふふふっ……じゃああの人は最後に殺してあげましょ?決まり!」

 ニコニコと笑い、二人で会話を弾ませた。
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