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第十話 不穏な画策
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「何人やられた?」
無貌の蜥蜴を滅ぼしたアークの部隊、アルファチームは点呼を取っていた。
「二人が怪我!かすり傷です!全員無事です!」
アークの隊員は全員優秀である事に変わりない。暗闇の怪物に比べたらかなり強い無貌の蜥蜴もアークが対処すれば敵ではない。
正直こちらは運が良かったとも言える。蜥蜴は敵味方関係なく暴れる鬱陶しい悪魔だが、誘導が簡単にできるちょろい悪魔でもある為、倒し方が確立されているのだ。もちろん敵はそれを知る由もないだろうが。
『伝令。炎獄の女豹を滅殺しました。やけどによる負傷者多数。チャーリーはこれよりブラボーと交代し、戦線を後退いたします』
アルファチームの隊長が無線を取る。
「了解。アルファも無貌の蜥蜴の殲滅に成功。チャーリー、お疲れ様」
それからすぐに無線が入る。
『伝令!暴虐の巨人の討滅を確認!トゥーマウスが介入し仲間割れが発生!デルタチームはトゥーマウス捜索を開始します!』
「デルタ、深追いは厳禁です。捜索を打ち切り速やかに後退して待機」
『し、しかし……』
「現在エコーを殺害した悪魔が未知数であるため深追いは危険であると判断しました。指示に従って下さい」
『……了解。デルタチーム下がります。通信終了』
ジッと無線を切られた。デルタの隊長はかなり不服そうだ。エコーチームを殺害したのがトゥーマウスだと思ってそうな口ぶりだった。
「その可能性もないわけではない……か」
アルファの隊長はポツリと呟いた。トゥーマウスは実は仲間なのではないかという風潮が一部囁かれている。デルタの隊長はあえて「仲間割れ」という言葉を使ったが、トゥーマウスが現れる先では勝手に率先して悪魔を倒して回っている事が報告に上がっている。アークの幹部エリーナはトゥーマウスの利用を画策しているくらいその力を信用している。
(あの絶滅主義者が自らの信念を曲げても頼ろうとする相手……一度会ってみたいのよねー)
フワッとそんな事を考えながら蜥蜴の消滅を眺めていると、隊員が走ってきた。
「隊長。やはりウロボロスが関与しています。あの蜥蜴を召喚したであろう信者の死体が発見されました」
「想定通り……というよりワンパターンよね。まぁ増えられても困るけど……」
組織が変に枝分かれとかしてうじゃうじゃいても名前を覚えられる自信がない。
「東区画と北区画の避難はほぼほぼ終了しているし、私たちも下がりましょうか」
それには隊員も困惑する。
「よ、よろしいのでしょうか?隊長も言われてましたが、エコーチームの件もあります。我々も動くべきなのでは?」
「焦っちゃダーメ。無駄な努力はしない方がお得なのよ。丁度良く動く餌がいるんだから……知ってる?釣りって我慢が大事なんだよ」
ニコニコしながら踵を返す。その後ろに慌ててついていく。
「……隊長は釣りをした事があるんですか?」
「無いよ?エリーナが……ホワイト次官の受け売りかな」
「ああ」と理解の色が見えた。トゥーマウスが自由に動いて引っ掻き回せば黒幕がひょっこり現れるのでは?という隊長の見解である。要するに見に回ると言う事だ。
「西区画の避難はまだ終わってないからブラボーはそのまま動いてもらうけどね」
今回の作戦は五組のチームに分かれ、それぞれを補い合いながら避難と悪魔討伐を遂行していた。独断先行が目立つデルタのアシュリーを入れても精鋭揃い。暗闇の怪物も新たに出現した3種の悪魔たちも数が揃えば敵ではない。だからこそエコーチームの全滅が違和感であった。
(そう、まったく動きがなかったのに唐突に蜥蜴と女豹と巨人だもんなー……もう次のフェーズに移行している可能性も高いのかな?)
アルファチームは定位置まで下がった。
………
「もうやられたのか!?くそ!!アークの雌豚どもめ!!」
アンティークの机をガツンと殴ってせっかくの年代物に傷がついた。
「やはり扱いやすい悪魔を何体か召喚するのが無難なのでは?」
「もう遅い……蓄えた贄の魂は予備の分も既に使い切った。暗闇の怪物をこちらに戻して防御に回すんだ。この召喚を成功させれば我らの勝利は確実……すぐ準備しろ」
「はっ!」
ウロボロスのメンバーは言われた事を遂行する為、持ち場に走る。その様子を苦々しい顔で見送りながらポツリと呟く。
「リナ様はわがままが過ぎる……チッ!!」
舌打ちをしながらもう一度机を殴った。
………
「んん?」
ニット帽の口はスンスン鼻を鳴らしながら唸る。
「んんん!んんんんん!!」
ファスナーが閉まったままで喋ろうとするので全く喋られない。リョウはほっといてしばらく歩いていたが、そろそろ鬱陶しくなってファスナーを開けた。
「ぶはぁっ!!もう!!いい加減にしなさいよ!!喋ってる最中に閉じるなんて信じられない!!」
キレ散らかして叫び散らす。
「……うるせー……悪かったな。で?何の用だよ?」
「きぃぃぃぃ!!」としばらく怒っていたが、怒り疲れたのか「はぁ……」とため息を吐いた後話始めた。
「なんか悪魔が集合してるみたいなのよ……待ってた奴、来たんじゃない?」
それを聞いたリョウは右の拳を左の掌で包み、ゴキリゴキリと骨を鳴らした。
「……やっとか……」
ダンッ
地面を蹴って飛び上がる。建物の屋上まで三角飛びで飛び上がると、その勢いのまま建物から建物に飛び移り、疾風のように進む。コートを翻しながら空を駆る姿は猛禽類の飛翔だった。
ガンッ
中心に近い場所に反応がある。すぐ傍の高い建物にヒビが入る勢いで着地する。ぬぅっと立ち上がると、目だけでその場所を見下ろした。
「……ああ、待ってたぜ……」
無貌の蜥蜴を滅ぼしたアークの部隊、アルファチームは点呼を取っていた。
「二人が怪我!かすり傷です!全員無事です!」
アークの隊員は全員優秀である事に変わりない。暗闇の怪物に比べたらかなり強い無貌の蜥蜴もアークが対処すれば敵ではない。
正直こちらは運が良かったとも言える。蜥蜴は敵味方関係なく暴れる鬱陶しい悪魔だが、誘導が簡単にできるちょろい悪魔でもある為、倒し方が確立されているのだ。もちろん敵はそれを知る由もないだろうが。
『伝令。炎獄の女豹を滅殺しました。やけどによる負傷者多数。チャーリーはこれよりブラボーと交代し、戦線を後退いたします』
アルファチームの隊長が無線を取る。
「了解。アルファも無貌の蜥蜴の殲滅に成功。チャーリー、お疲れ様」
それからすぐに無線が入る。
『伝令!暴虐の巨人の討滅を確認!トゥーマウスが介入し仲間割れが発生!デルタチームはトゥーマウス捜索を開始します!』
「デルタ、深追いは厳禁です。捜索を打ち切り速やかに後退して待機」
『し、しかし……』
「現在エコーを殺害した悪魔が未知数であるため深追いは危険であると判断しました。指示に従って下さい」
『……了解。デルタチーム下がります。通信終了』
ジッと無線を切られた。デルタの隊長はかなり不服そうだ。エコーチームを殺害したのがトゥーマウスだと思ってそうな口ぶりだった。
「その可能性もないわけではない……か」
アルファの隊長はポツリと呟いた。トゥーマウスは実は仲間なのではないかという風潮が一部囁かれている。デルタの隊長はあえて「仲間割れ」という言葉を使ったが、トゥーマウスが現れる先では勝手に率先して悪魔を倒して回っている事が報告に上がっている。アークの幹部エリーナはトゥーマウスの利用を画策しているくらいその力を信用している。
(あの絶滅主義者が自らの信念を曲げても頼ろうとする相手……一度会ってみたいのよねー)
フワッとそんな事を考えながら蜥蜴の消滅を眺めていると、隊員が走ってきた。
「隊長。やはりウロボロスが関与しています。あの蜥蜴を召喚したであろう信者の死体が発見されました」
「想定通り……というよりワンパターンよね。まぁ増えられても困るけど……」
組織が変に枝分かれとかしてうじゃうじゃいても名前を覚えられる自信がない。
「東区画と北区画の避難はほぼほぼ終了しているし、私たちも下がりましょうか」
それには隊員も困惑する。
「よ、よろしいのでしょうか?隊長も言われてましたが、エコーチームの件もあります。我々も動くべきなのでは?」
「焦っちゃダーメ。無駄な努力はしない方がお得なのよ。丁度良く動く餌がいるんだから……知ってる?釣りって我慢が大事なんだよ」
ニコニコしながら踵を返す。その後ろに慌ててついていく。
「……隊長は釣りをした事があるんですか?」
「無いよ?エリーナが……ホワイト次官の受け売りかな」
「ああ」と理解の色が見えた。トゥーマウスが自由に動いて引っ掻き回せば黒幕がひょっこり現れるのでは?という隊長の見解である。要するに見に回ると言う事だ。
「西区画の避難はまだ終わってないからブラボーはそのまま動いてもらうけどね」
今回の作戦は五組のチームに分かれ、それぞれを補い合いながら避難と悪魔討伐を遂行していた。独断先行が目立つデルタのアシュリーを入れても精鋭揃い。暗闇の怪物も新たに出現した3種の悪魔たちも数が揃えば敵ではない。だからこそエコーチームの全滅が違和感であった。
(そう、まったく動きがなかったのに唐突に蜥蜴と女豹と巨人だもんなー……もう次のフェーズに移行している可能性も高いのかな?)
アルファチームは定位置まで下がった。
………
「もうやられたのか!?くそ!!アークの雌豚どもめ!!」
アンティークの机をガツンと殴ってせっかくの年代物に傷がついた。
「やはり扱いやすい悪魔を何体か召喚するのが無難なのでは?」
「もう遅い……蓄えた贄の魂は予備の分も既に使い切った。暗闇の怪物をこちらに戻して防御に回すんだ。この召喚を成功させれば我らの勝利は確実……すぐ準備しろ」
「はっ!」
ウロボロスのメンバーは言われた事を遂行する為、持ち場に走る。その様子を苦々しい顔で見送りながらポツリと呟く。
「リナ様はわがままが過ぎる……チッ!!」
舌打ちをしながらもう一度机を殴った。
………
「んん?」
ニット帽の口はスンスン鼻を鳴らしながら唸る。
「んんん!んんんんん!!」
ファスナーが閉まったままで喋ろうとするので全く喋られない。リョウはほっといてしばらく歩いていたが、そろそろ鬱陶しくなってファスナーを開けた。
「ぶはぁっ!!もう!!いい加減にしなさいよ!!喋ってる最中に閉じるなんて信じられない!!」
キレ散らかして叫び散らす。
「……うるせー……悪かったな。で?何の用だよ?」
「きぃぃぃぃ!!」としばらく怒っていたが、怒り疲れたのか「はぁ……」とため息を吐いた後話始めた。
「なんか悪魔が集合してるみたいなのよ……待ってた奴、来たんじゃない?」
それを聞いたリョウは右の拳を左の掌で包み、ゴキリゴキリと骨を鳴らした。
「……やっとか……」
ダンッ
地面を蹴って飛び上がる。建物の屋上まで三角飛びで飛び上がると、その勢いのまま建物から建物に飛び移り、疾風のように進む。コートを翻しながら空を駆る姿は猛禽類の飛翔だった。
ガンッ
中心に近い場所に反応がある。すぐ傍の高い建物にヒビが入る勢いで着地する。ぬぅっと立ち上がると、目だけでその場所を見下ろした。
「……ああ、待ってたぜ……」
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