「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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1章

4、追放の理由

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 ニールの言葉はリックにとって信じられないものだった。ニールは信頼出来るリーダーではあるが、こればかりはビフレストのメンバー全員に聞いて回る。そうでなければ気が済まない。

「しつこいわね。やめてって言ってるでしょ?ニールから教えてもらったので全部よ」
「アイツのことはもう忘れたいんだが……そうだよ。ニールの言う通りさ」
「しつけーなオメーも。ニールに聞いたんだろ?受け止めろよ」
「それで全部ネ。リーダー嘘付かない」

 ブリシラ、アルマ、ジン、ワンの順に聞き、最後にローランドの元に来たリックは固唾を呑んで返答を待つ。

「どれだけ聞いても答えは変わりませんよ?騙す気などさらさら無いですからね」

 ローランドもため息混じりに答えた。

「じゃあ本当に……?」
「ええ、彼は私達の中で一番強かった。いや、彼より強い冒険者を私は知りません」
「何でそんな強い奴を追放なんて……」
「私の口から話して良いものか……彼は私達の助けなど必要がないのです。1人で全てをこなし、1人で全てを解決する。私たちはただ側で見ているだけ。実に張り合いのない冒険でした……」

 項垂れるように肩を落としたローランドの姿に哀愁を感じる。

「そんなにか?俺が知る中で最強だと思えるあんたらが、1人の男をそこまで持ち上げるなんて……俺にはどうも信じられねぇんだ」
「……まぁ信じられないのは仕方ないでしょう。世界中見渡しても私たちのチームがダントツで強いと自負しています。彼という一個体を除けばの話ですがね」
「はっ?!束になっても勝てないってのか?」
「ええ、彼は異次元の強さを持ち合わせています」

 ローランドの言葉に絶句するリック。一瞬、沈黙の刻が流れ、ローランドは口角を静かに上げた。

「よく言いますよね?チームは同じレベルの者同士が組むものだと……。こう言っては何ですが、私たちは天にも届く高い建造物の上で踏ん反り返りながら下々を見下ろしていました。生まれ持った才能、最高峰の実力。この高みに登れる者はごくわずか。どうだ?羨ましいだろう?ってね。いわゆるマウントを取っていたと言う奴です。実際はそんなみみっちい私たちを……地上で図に乗っている私たちを雲の上から見下ろしていたんですよね。もちろん、雲の上に居たのはレッドその人です」

 ローランドがつらつらと語り始めたポエムにリックの顔が歪む。

「?……ん?えっと、よく分かんないんだけど……っというのはその、つまり?」

 リックの質問に鼻を鳴らしてローランドは自嘲気味に笑った。

「フッ……平たく言えば、惨めに思えたんですよ。生きていることが、ね……」



 ブサイクな顔のオバケ魔樹トレント。あれから何度切られたか分からないボロボロの全身を見せ、切り落とされた枝がアルラウネを轢き潰す。
 元々拓けていた場所は更に広範囲になり、戦いの凄まじさを物語っている。

「はぁ……はぁ……終わりだ。トレント」

 レッドは真横に剣を振るう。トレントの口を狙って放った斬撃は樹皮一枚を残して綺麗に切れる。自重に堪えきれなくなった口半分から上が後ろへと倒れ、メキメキと音を立てながらその命を散らした。

 ──ズズゥンッ

 トレントはレッドに敗れた。無惨な切り株だけとなったトレントを見た魔獣たちは、レッドを見失わないよう後退あとずさりしながら暗く生い茂る草木の中に姿を隠した。

 レッドは肩で息をしながら魔獣たちを目で追い、敵意殺意を感じなくなったところで天を仰ぐ。

(やっぱり1人じゃダメだよな……取り急ぎどこかに入れてもらうのが良いかな?受付嬢さんには……明日聞こう)

 敵に囲まれ絶体絶命の危機的状況を脱したレッド。これ以上の滞在を危険と感じて20階層を後にした。

 現在最深部の階層の洗礼を受け、1人に限界を感じ始める。今回のことはまぐれであると自分に言い聞かせると共に、チームに恵まれることを祈りつつ歩いてダンジョンから出るのだった。



 静かになった20階層に足を踏み入れる複数の影があった。

 赤黒い肌に水牛のような角が2本生え、コウモリのような翼の生えた二足歩行の生き物。足は太くしなやかなももと黒い光沢を放つ蹄で構成され、傍から見れば足だけ馬のように見える。その正体はデーモンである。

 複数のデーモンはトレントだった残骸を確認し、切り株に手を伸ばす。

「……何があった?」
「ハイ・トレントが撃破されたらしいなぁ」
「んなもん見りゃ分かる。人間の仕業か?」
「どう見ても魔獣同士の生存競争に負けたって感じではないな。見てみろ。この切れ味は相当なもんだぞ」

 まるで水圧カッターで切られたかの如く綺麗な断面に感嘆の息を漏らす。撫で上げているのに木屑や棘が刺さったりしない。

「打撃、斬撃をある程度無効化する常時発動型パッシブスキルを持っていたと記憶しているが……?」
「ならこれは幻術か?……おいせよ冗談だよ冗談。喧嘩してる場合じゃないことくらいはお前も分かるだろ?」
「その通りだ。すぐにダンベルク様にご報告をせねばなるまい。まずは魔法の痕跡を見つけ、犯人を探さねばな……」

 2体のデーモンは手をかざして魔力の痕跡なるものを探し始める。それをすぐ後ろで見ていたデーモンたちは手持ち無沙汰だからかボソボソと話し始めた。

「こんなことができるのは誰だと思うよ?」
「やはりニール=ロンブルスが一番怪しいだろうな……魔法剣士マジックセイバーの称号は侮れん」
「いやいやライト=クローラーの可能性もある。奴はニール=ロンブルスに並ぶ実力者だ」

 冒険者の名前を出し合い、誰が犯人かを予想する。ハイ・トレントに致命の一撃を与えた者は名のある冒険者に違いないと実力者たちを挙げ連ねる。

 魔法の痕跡を探していたデーモンの1体は白熱する激論に呆れた顔で振り向いた。

「どいつもこいつもこの近辺に居ない連中じゃないか……そんな奴らが国を跨いだらたちまち知れ渡るだろう?そんな情報がないということはつまりそいつらではないということじゃないか?」

 スクッと立ち上がってもう1体と目配せをする。

「確認したが魔法の痕跡はない。どうやったのかは知らんが斬撃無効の相手に対して斬撃で対抗したバカがいて、しかも勝ったようだぞ?」

 デーモンたちが驚愕で表情を彩る。

「ダンベルク様に御報告をしろ。どうやらこの近辺には化け物が住んでいるようだとな……」
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