「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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9章

110、レッドのダンジョン

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 マルドゥクのわがままで先にダンジョンを見ることになった一行。ライトの予想通り割と近くにそれはあった。
 案内されたダンジョンは洞窟のような入口で深さが12階層程度の比較的浅いダンジョンだった。あまり深いダンジョンだとレッドが見て回るには面倒ではないかという判断からここに決定したらしい。
 このダンジョンは女神討伐の折、女神の能力”アルカナ”から召喚された”悪魔ザ・デビル”に殺された皇魔貴族のものらしいが、名前を聞いても分からなかったのでレッドは適当に返事だけしておいた。

「ダンジョンは契約によって所有者を決定、変更出来る。契約書は最高責任者であるフィニアスが管理することになっているので、契約後は我が責任を持って送り届けるから安心してくれ。何かあれば我がすぐに手を貸そう」
「あ、はい。ありがとうございます」
「しかしよぉ。なぁんでダンジョンをレッドに渡すんだ?皇魔貴族って奴の権威主義からか?」
「それもある。だがダンジョンを放置してしまうのは単純にもったいないのが大半を占めているな。魔法的に管理、維持することによって強い魔獣や、素晴らしい効能を持った薬草など、ありとあらゆる面で優れた生物を生み出すことが出来、その中で起こる命のサイクルは特大級の戦力や役立つものへと昇華する。皇魔貴族がダンジョンを所有する理由はダンジョンから生まれ出る命にこそ価値があるとの考えからだ」

 グルガンは指を一本立てて教師のように語る。

「あ?ってことはウルラドリスも契約とかしてるってことか?」
「うん、してるよ。最下層にある宝石みたいな何かで儀式やって、前の地竜王からダンジョンもらった」
「へぇ、そうなのか」
「儀式か。他の所有者もいろいろ考えているのだな。皇魔貴族はその点書類だけだから簡単だがな」
「ミルレースとの戦いでか……とするなら、かなり空きダンジョンが出来たのではないか?先にも言っていたダンジョンの維持、管理だけが理由ならば取り急ぎ部下に任せるのも手では?」
「ダンジョンを管理する上で必要となるのが強さだ。契約者の所有物となった時、契約者の力量でダンジョンの強弱も決まるのだ。この強弱の中に生物の進化があり、皇魔貴族となれる強き者が管理しなければたちまちダンジョンが寂れてしまう。皇魔貴族が管理してこそ冒険者は仕事になる。薬草や果物、魔獣の肉や牙、爪、皮膚、毛、骨などの戦利品を市場に流して生活が潤うのだ。つまり人間と魔族の共存こそが世界を成り立たせる唯一の道。今日がその第一歩となろう」

 グルガンは早速レッドに魔法の羽ペンを持たせてサラサラとサインを書かせた。全体的に小さな文字がレッドの自身のなさを感じさせる。その様子をただ眺めていたライトはハッと目を丸くした。

「強いことが重要というのは分かったが、レッドが契約するとどうなるのだ?それは1階層すら満足に攻略出来ない凄まじいダンジョンになるのでは?」
「そう思うのも無理はない。だが安心してくれ、ダンジョンの求める強さには頭打ちがある。レッドが空を割り大地を消滅させる力を持っていても、ダンジョンが出せる魔獣はそれなりとなる。契約は成立した。今からレッドはダンジョンマスターとなる」
「ダ、ダンジョンマスター……!?俺が?」
「うむ。言ってなかったが、契約を結んだばかりは所有者の心象風景を強く反映する。後々自分好みに模様替えしていくのだ。中を見て回るか?」
「そ、そんな早く変わるものなんですか?中身って……?だ、だって前の所有者から代わったばかりですよ?」
「レッド。魔法だぞ」
「ま、魔法って凄ぇ……」

 ゴクリと生唾を飲みながらレッドは自分のダンジョンへと足を踏み入れる。通路を少しか進んだその先に広がっていたのはおよそ洞窟内とは思えない青空が広がっていた。

「おわぁっ……これが俺の……ダンジョン……」

 レッドが自分のダンジョンに感動していると、グルガンが目をまん丸にしてダンジョン内を見渡した。広い。とにかく広く見える。ぽつぽつと木が邪魔にならない程度に生え、長く黄色い草がずっと先まで生い茂るサバンナを彷彿とさせるダンジョン。

「何と広大な……そして何と心地よい」

 見た目は熱帯地域の様相を呈しているが、暑すぎず寒すぎない適温に保たれていて過ごしやすい。宝箱の類や遺跡の後などの余計なものを削ぎ落としたようなここは、もはやダンジョンとは呼べまい。ただの過ごしやすいサバンナである。

「お?何だありゃ?珍しいタイプの魔獣が居やがるぜ。ちょっと一匹ぶっ倒してくるわ」
「よせディロン!……あいつは人の話を聞かないな……」

 ライトが止めるより先に走り出し、あっという間に魔獣の元まで駆けて行った。その驚異的な速度にヴォルケンとグルガンが驚いた

『何だあの速度……あの男はあんなに早く動けたのか?』
「いや、前に見た時はあれほどの身体能力はなかったはずだ。驚異的な進歩を遂げているようだな」
「あ、分かっちゃう?そうなんだよ~。ディロンってば戦えば戦うほど強くなって、食べれば食べるほどに筋力が上がるんだよ。あたいらもなかなかの生態をしてると思ってたけど、ディロンほど成長率めちゃくちゃな奴は初めて見たかも?」

 ウルラドリスは自慢げに胸を張る。まるで自分のことのように嬉しそうだ。オリーは前までのウルラドリスとディロンの関係性を思い出しながら「変われば変わるものだ」と呟いた。

(ライトの成長率も著しいが、ディロン=ディザスターもかなり強くなっている。ニール=ロンブルスの成長に期待していたが、実績ばかりに気を取られていたようだ。我の審美眼もまだまだということか……)

 グルガンは自嘲気味に笑う。魔法が使えて剣の腕もピカイチ、冒険者を引っ張っていけるカリスマ性を持つ上、目覚ましい活躍。まるで誰もが憧れる勇者のようなニールを持ち上げるのは当然と言えるが、その威光がレッドを含む3人を隠していたのかと思うと苛立ちを通り越してやるせない気持ちになる。そんな中レッドはディロンに憧れの目を向けた。

「まぁでも当然ではありますよ。だってあの人は『完璧な戦士パーフェクトウォリアー』なんですから」
「ふっ……そうだったな」

 肩を落とすグルガンをレッドの笑顔が慰める。レッドが結局全てを解決してくれたのだ。結果オーライとはこの時に使う言葉だ。
 ディロンは喜び勇んで魔獣に突っ掛けて行ったが、途中で違和感を感じて立ち止まる。全長7mはある二足歩行の魔獣。頭以外は長い毛に覆われていてツルツルの頭以外はナマケモノのようだ。2本のぶっとい腕でゴリラのように地面に手をついて移動し、足は短いが象のように太い。頭部はバクのような温厚な顔をしていて、強靭な体に対して間抜けに見える。のっそのっそと動く姿から敵意は感じない。

「何だこの野郎……俺がこんなにも殺意を撒いてんのに気付きもしねぇのか?それとも俺じゃ不服だってか?」

 ディロンは新たな魔獣に無骨な斧を振りかぶって攻撃を仕掛ける。

 ゴォッ……ギィンッ

 長い毛に覆われた腕に攻撃を仕掛けたが、鉄のように硬い毛に阻まれて斧が通らない。魔獣は攻撃されたことに驚いて巨体に見合わない動きでディロンから距離を開けた。切り傷の一つでも付ければ抗戦的になるかとも思ったが、切り傷を付けられない上に魔獣はディロンの凄みに逃げ出した。

「あっ!おいっ!待ちやがれっ!!」

 ディロンは追いかけようとするが、とうの魔獣はガン逃げで捕まりそうもない。よく見れば他にも同じ魔獣がウヨウヨしているが、ディロンを見た途端に逃げ出す。チラッとハイエナのような魔獣も見えたが、デカい魔獣同様に逃走した。ディロンはもう追いかけるのを諦めた。
 レッドがダンジョンマスターとなって出来たダンジョンの魔獣。期待して飛びかかっても無反応どころか怯えて逃げ出すとは完全に拍子抜けだが、ディロンが追いつけないほど速くディロンの斧が通らない魔獣。戦わなくても分かる。ここの魔獣は絶対に強い。

「気が済んだか?」
「バカ言ってんなよ器用貧乏。戦えてねぇのに気が済むもねぇだろうが」
「……そんなに戦いたいなら俺が相手になってやろうか?」
「あぁ?……へぇ……オメーも少しは出来るようになったかよ。だがな、地竜王と取っ組み合ってる俺とオメーじゃ力の差は歴然だぜ?」
「あ、ちょっ……!やめてくださいよ2人とも!せっかくの記念日にそんなこと……」
「そうだやめろ。レッドのことを考えろ。私が殴るぞ?」

 レッドとオリーに諌められ、ライトとディロンはバツが悪そうに距離を取った。

『何じゃ。まだ時間があるのじゃから戦わせとけば良かろう?』
『おいっふざけるな。こんなことで疲れさせてどうする。獣の首輪のために余力は残しておけよ』
「そ、そういえばそうでしたね。なんかすっかり忘れてました」
『しっかりしてくれよレッド。お前が頼りなんだからな』
「えぇ?!お、俺ですか?まぁその……頑張りますけど……」
「ならもう少しダンジョンを見ていくか。日が暮れればマルドゥクも動けるのだからな」

 グルガンの提案でダンジョンを見て回ったが、思った以上に何もないダンジョンはすぐに飽きが来る。レッドはダンジョンの模様替えをしようと心に誓った。
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