「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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9章

115、授与式

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 会場の前、緊張の面持ちで立つレッド。
 こういった式に一度も参加したことがなかったために、脂汗をかきながら心臓の音を高鳴らせる。緊張するなという方が無理なので、オリーはグルガンが用意してくれたハンドタオルを使ってレッドの顔を拭う。

「レッド、深呼吸だ。息を少しでも整えれば緊張も少し和らぐと思うぞ」
「さすがオリーさんだ。よく知っている。深呼吸は絶対すべきだ。もし俺からアドバイスがあるとすれば、式典だからと硬くならずに普段通りに歩いて行けば良いんだ。練習も挟んでないから出来ないことは当たり前。縮こまらずに堂々と胸を張って行こう」
「わ……分かりました」

 レッドは深々と深呼吸して少しでも気持ちを落ち着ける。扉を開けるタイミングでレッドにグルガンはニコリと微笑み「行こうか」と声を掛けた。一言声を掛けることでいよいよ覚悟を決めたレッドを確認し勢い良く扉を開けた。

 バンッ

 両扉を押し開け、グルガンを先頭にレッドたちはぞろぞろと会場入りする。会場入りしたグルガンとレッド以外の仲間たちは会場の隅の方で待機し、レッドの晴れ舞台を見守る。玉座の前には7段程度の階段があり、そのすぐ前までグルガンとレッドは歩み寄った。
 最初に一通り段取りを聞いていたので、レッドはグルガンの背後に付いて一緒に玉座の側まで上がる。そこは広い壇上のようで、本当に舞台に立っているように錯覚した。

「さぁレッド。前に」

 グルガンはサッと横に避けてレッドの背中をそっと押す。レッドはアルルート=女王クイーン=フィニアスの前に歩み寄り、その目を見つめる。フィニアスもじっとレッドを見つめながらフッと優しい笑顔を向けた。

「ドタバタして礼の1つも口にしていなかった。この場を借りて感謝申し上げる。ありがとうレッド」
「あ、いやその……はい」
「……フィニアス。式典で私語は……」
「分かっている。だがロータス、この式典も含め異例なこと尽くめだ。会う機会もなかったのだしここで礼を言わねばどこで言うのだ?」
「……分かったそれで良い……執事バトラー、剣をここへっ」
「はっ」

 バトラーは儀礼用と思われる華美な剣を手に持ち、音も立てずに素早くロータスの元へと歩み寄る。ロータスが両手でそっと手に取り、フィニアスに恭しく手渡した。そこでグルガンがレッドにそっと声を掛ける。

「……左膝を立てて右膝を床につけるんだ。跪いたら目線を切って頭を下げてくれ、それを合図に剣を左の肩に置くのでそのままで待機だ」

 レッドは言われた通り跪いて頭を下げる。が、フィニアスはすぐに剣を肩には置かず、レッドに右手をかざして目を閉じた。

「我ら魔族と人族に繫栄と祝福を……レッド=カーマインに栄光を……」

 囁くようにぽつぽつと天に祈りを捧げ、その後レッドの肩に剣を置いた。

「アルルート=女王クイーン=フィニアスの名において、汝に……”男爵バロン”の称号を授ける」
「……は?」

 思わず顔を上げるレッド。ロータスはイラっとした顔で頭を下げるように左手をちょこちょこ動かすが、レッドはそれを無視してグルガンを見た。そんな話は聞いてないぞと目に書いてある。グルガンはニヤリと笑いながら呟いた。

「……どうだ?驚いたろう?」

 レッドたちが眠りについた頃、グルガンはフィニアスに会いに行った。オリーとライトに言われていた騎士ナイトの位では不十分の声。この発言にグルガンも思うところがあり、急遽爵位を変更する事となった。フィニアスとしても問題ないとのお達しで、皇魔貴族全体に周知されていた。
 反発もあるかと思っていたが、フィニアスが許したことと授与される相手がレッド=カーマインであることもあり、ロータスが小言を呟いた程度で特に反発はなかった。早々に諦めたという方が正しい。
 これには騎士ナイトで不服だったライトたちもニッコリ。レッドだけが慌てふためく結果となった。

「我が勲章と共に、ここにある財宝はすべて汝のものとなる」
「え?こ、ここの飾ってある財宝ですか?!いや、それは……持って帰れませんって……」
「安心しろ。我が何とかする」
「あ、はい」
「今後はレッド=男爵バロン=カーマインとして人族と魔族とを繋ぐ架け橋となり、共に手を携えて生きていくことを願う」

 スッと剣をレッドの肩から離し、ロータスに渡す。同時に右側にやって来たバトラーが指輪を乗せたクッションをフィニアスに差し出す。フィニアスは指輪を手に取るとレッドを見つめたまま待機する。

「……よし、立ってくれレッド」

 グルガンの言葉にレッドはゆっくり立ち上がりフィニアスを窺うように見た。

「勲章として指輪を授けている。皇魔貴族の男爵バロンを表す紋章が彫られているのだ。どんな指にも嵌るように伸縮自在の魔法が込められている。魔法効果はそれ以外存在しないただの指輪だ。飾るも良し、身に着けるも良し。そなたの好きなようにしてくれ」

 優しく説明されたレッドはおずおずと指輪を受け取った。指輪の紋章を見つめながら感心していると、グルガンが指示を飛ばす。

「よし。それじゃフィニアスから2歩下がって礼をし、壇上から降りるとしよう」
「……待てグルガン。まだ終わっていない。レッド、礼をした後すぐ脇に退けろ。グルガンはフィニアスの前へ……」

 ロータスは不機嫌に口を開いて指示を撤回する。これにはグルガンも目を丸くしたが、逆らうことなくフィニアスの前に出た。

「フィニアス。我は……」

 何かを言いかけるグルガンを無視し、フィニアスはロータスから剣を受け取るとグルガンに跪くように目を動かして無言で指示を飛ばす。グルガンは肩を竦めて跪いた。頭を下げると同時に剣を左肩に置く。

「ゴライアス=公爵デューク=グルガン。アルルート=女王クイーン=フィニアスの名において、汝に……”大公グランデューク”の称号を授ける」
「……っ!?」
「今後はゴライアス=大公グランデューク=グルガンとして我に使えよ」

 それは昔、たった2人だけに許された称号。剣を離してロータスに渡すとバトラーが持ってきた指輪を受け取った。グルガンは立ち上がり何か言いたげにモゴモゴと口を動かすが、諦めて口をつぐんだ。
 大公グランデューク印の指輪を手渡されたと同時に「驚いたか?」と悪戯っ子の表情をフィニアスはグルガンに向ける。流石のグルガンも呆れ気味に笑い、指輪を見る。昔、アルルートの父であるメフィストが着けていたであろう指輪。それがまさか自分のものになるとは思いも寄らない。

「わぁ……凄いなぁ。良かったら今一緒に着けましょうよ」
「良かろう」

 レッドはグルガンと一緒に指輪を右手の人差し指に嵌めた。
 ここにゴライアス=大公グランデューク=グルガンとレッド=男爵バロン=カーマインが誕生した。
 わぁっと祝福の拍手が巻き起こり、会場内を埋め尽くす。人生の絶頂とも思えるこの時間を堪能していると、目の端でロータスに耳打ちするバトラーの姿を視認した。

「……なに?……間違いないか?」

 ロータスの問にバトラーは即座に頷く。その反応にグルガンも声を掛ける。

「どうした?なにがあった?」
「……お前の領地に不穏な影が迫っているとの情報だ。後は私が……」
「頼むっ」

 グルガンは言うが早いか転移を使用し、会場から姿を消した。

「えっ!?グルガンさん?!」
「……フィニアス、後で説明する。レッド、一先ず会場を出るぞ」

 ロータスに連れられてレッドたちは会場を後にした。
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