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14章 帝国編
192、ドラゴン恐怖症
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帝国が国の誇りと存続を懸けた戦いに邁進する中、レッドたちの船は獣王国上空を漂っていた。
獣王国の上空に現れた戦艦に違和感を感じた獣人たちは急いで主人の元へと走る。
「首領っ! 見慣れない船が空に浮かんでますぜっ!」
作戦会議用の大きなテントを独占して昼寝をしていた首領はのそっと起き上がった。
「あぁ? 船だぁ? そりゃ浮遊要塞のことじゃねぇだろうな?」
「いえ。首領が乗って来たような浮いてる島って感じじゃなくてガッツリ船ですぜ。ありゃ首領の家来か何かですかい?」
「……っだよそれ?」
せっかくうつらうつらして良い気持ちだったというのに、意味の分からない奴の急な訪問に苛立ちながら日の光の下に出た。
日の下に照らされたその姿は2足歩行の竜、魔神ドラグロス=バルブロッソ。
獣人たちを肉体能力でねじ伏せ、獣王国の頂点に君臨していた。
ドラグロスのテントに駆け込んできた獣人は元は獣人族の長の1人であり、他に4つの大きな部族に分かれていたのだが魔神の力の前には歯が立たず、獣王国は歴史上初めて統治されることとなる。
「あ! ドラグロス様だ!」
「おおっ! ありがたやありがたや……」
獣人たちは敬服の念をドラグロスに向ける。その瞳には神を崇めるが如き信仰の光が灯っている。
侵略行為にもかかわらず死人が出なかったで、ドラグロスを英雄視する獣人も多い。圧倒的な力を持つ者は殺さないことも出来るのだと身に染みて理解させられたからだ。
戦争という悲しみを打ち破ったドラグロスは、今や獣王国で誰もが認める王へとなったいた。
自分の世界で統治していた国の部下たちを想起させる目に、ドラグロスは少しだけ寂しくなった。
「あれですぜっ!」
ドラグロスは言われるがまま空を見上げ、眉根を顰める。
確かに船だ。豪華客船並みの大きな船が空に浮いている。
「はっ! 領空侵犯たぁ良い度胸じゃねぇか。誰を相手にしてんのか分からせてやらねぇとなぁ……」
*
「はい? ドラゴン恐怖症?」
戦いを渋るレッドに対し、シルニカたちが早く行けと鼓舞していたのだが、逆に意固地になって駄犬のようにうずくまり、それ以上一歩もレッドは動かなくなってしまった。
どうしてしまったのかと不安に駆られる彼女たちに、オリーから聞かされたのは予期せぬ言葉だった。
「そうだ。レッドは他の魔物に対しては無類の強さを発揮するのだが、ドラゴンに対しては怖がって戦おうとはしない」
「はぁっ!? ちょっ……何でそんなことになんのよ?!」
「それは……分からない。何かトラウマでもあるのではないだろうか?」
「……固定概念だ」
そこにグルガンが割り込む。
「レッドの中にあるドラゴンは最強であるという固定概念が戦闘意欲を削いでいる」
「は? 固定概念?」
「そ、そんなのどうして分かったの?」
「少し前にライトからレッドの精神面について相談を受けてな、それを元にレッド本人に直接色々と質問してみたのだ。分かったのはレッドは子供のころに聞かされた英雄譚のドラゴンの力に慄き、ドラゴンに並々ならぬ思いを馳せてしまっているようだ。家業を継がせるためか、単純に危険だからか、村の外に出さないための措置だったのだろうが、子供の頃に刷り込まれたトラウマはちょっとやそっとで克服は出来ないぞ」
遭ったことも襲われたこともない物語の中だけの怪異に怖がる人が居るように、自分ではどうしようもないものであると幼少期から植え付けられたドラゴンへの恐怖心が、大人になっても払しょくされることなく肥大化してレッドの心に根を張ってしまっている。
「え? じゃ実際に戦ったことは……」
「ない。戦っていればドラゴンをここまで恐れはしないだろう」
全員がその言葉に固唾を飲んだ。
「く、食わず嫌いってヤツ?」
「おやおや。これは思ってもみない弱点だねぇ。まだ降り立っていないし、このまま尻尾を巻いて逃げるってのも1つの手だと僕は思ってるけど?」
ルイベリアは一旦体勢を立て直す提案をする。しかしグルガンは首を横に振った。
「ドラゴンがネックとなるなら最初に倒しておくのが良い。面倒なのから倒しておけば後が楽になる」
「でも情報はどうするの? 君のやり方に口出しするつもりはないけど、情報をそろえて戦いに挑もうと言ったのは君だったように思うけど?」
「その通りだ。無茶をすれば体の一部が欠損したり命に係わることにもなりかねん。だからこそ優位に進めるための手立てを常に模索している。しかしながら獣王国の様子を見るに既に戦いは終結し、あの魔神の占領下にある。情報を抜こうにも、隠れることが出来ない平坦な風景も相まって、気付かれずに近付くことなど不可能だ。邂逅は則ち戦争の域に達していると我は見ている」
「……どこかに居るであろう反乱軍に協力を要請するってのは?」
「探すことを思えば一度小競り合い程度にこちらの力を発揮し、名声を高めることで釣られた反乱軍が出てくるのを待つのが手っ取り早い」
「あ~……こちらの損害が無いに等しく、魔神とやりあえる力を持った者を認知させるんだねぇ。そんなの見せられたら国の奪還に希望が生まれないわけがないわ。んで、それが出来るのがレッドだけってことね」
「うむ。本来であればレッドのドラゴン克服に時間をかけ、どんな敵にも同じ能力で挑めるようにしていきたいところだったが……」
3魔将の登場から間を開けずにやって来たデザイアに対し、策を討とうにもグルガンがなけなしの時間で出来たことと言えばヴォジャノーイを軟禁状態にした情報収集のみ。
ここでもしレッドが戦わないとなると、他の戦力はグルガンとヴォジャノーイだけだが、ヴォジャノーイはドラグロスの顔を見るなり部屋へと逃げてしまった、。
このままではグルガンが1人、死力を尽くして戦うことになりそうだ。
「う~ん……。相手がドラゴンの皮を被った魔獣だっていうなら話は別なのになぁ……」
「……それだ」
グルガンはルイベリアの言葉に良い案を思いつく。早速レッドに話しかけた。
「レッド。ちょっと良いか? あの魔神についてなのだが……」
「ドド、ドラゴンは門外漢ですよっ!ディロンさんを呼んできましょうよっ!『ドラゴンバスター』のディロンさんならあんな奴イチコロですよっ!」
「そうかもしれんが、まぁちょっと聞くのだ。レッド、貴君は少々……いや、大分勘違いをしている」
「……え? 勘……違いって、何がです?」
「あれはリザードマンだ。見よ、あの絵に描いたようなトカゲの2足歩行を。あれをドラゴンだと言えるか?……ん? ツノ? なるほど、あの角がドラゴン特有のものだと言いたいのだな? 分かった分かった。その謎を解こうではないか」
グルガンはレッドにドラグロスが如何にリザードマンであるかを説く。そしてレッドはある言葉によってもしかしたらドラゴンではないのかもしれないと思うようになり始めた。
「竜の頭……ですか?」
「そうだ。リザードマンの中でも特に希少な存在でな。突然変異と言って過言ではない」
グルガンの言葉をまるっと信じるなら見た目が近いだけのリザードマンとなる。でもレッドもそれなりに冒険者をやっているがリザードマンに色違い以外の亜種が居るとは聞いたこともないし、思ってもみないことだった。
もちろん出まかせである。グルガンはもしかしたら居る可能性はあるかもしれないというギリギリを突いた嘘で誤魔化したのだ。
ちなみにこの世界中を探したら本当にどこかに居るのかもしれないが、噂でも聞いたことがないのでグルガンは思いついたままを語っている。
しかしレッドはこの無理やりな意見に納得しかけていた。デザイアが外の世界から希少なリザードマンをコレクション感覚で連れて来たのではないかと閃きが走ったためだ。
エデンズガーデン以外の世界で竜の頭は割と有名である説が、レッドの頭の中だけで勝手に妄想が膨らんでいった。
「……本当にそうなら大丈夫かも……」
「ふむ……それではこれから奴自身に聞きに行こうではないか。もしレッドが奴のことをどうしても怖いというならすぐに撤退する」
「あ……え、えっとその……多分行けます」
今まで頑なに動こうとしなかったレッドから発せられたその言葉に艦内から『おおっ!』と驚嘆の声が上がった。
レッドとグルガンは早速デッキに向かい、青い空にその身を投げ出した。グルガンの浮遊魔法を用いて安全に地面に降り立つと、レッドは剣を抜きはらった。自信こそ無さげだったが、弱音を吐いて動けなかった先ほどとは全然違う。
魔導戦艦を地面に下ろすでもなく飛び降りて来た敵をただ眺めていたドラグロスは、降りて来た男の情けない顔に一瞬驚いた顔を見せ、すぐにニヤリと牙を剥いて笑った。
「……お前かぁ」
ドラグロスは獣人たちを下がらせるとバキゴキと指の骨を鳴らして戦闘態勢に入った。
「この俺を最初に選びやがったか……こいつは良いっ! 他の奴がつまみ食いした後だと十全に戦えなくなっちまうだろうしなぁっ! この世界は当たりだぜっ!!」
全身に力を入れるとゴゴゴッと大地が揺れ、空気も振動する。気迫だけで常人なら心が折れる。
『ギュシャアアアアァァッ……!!!』
その殺気を感じ取ったのか、ドラグロスの要塞に乗っかった巨大なタコのような怪獣が騒ぎ始める。グルガンはすぐさま身を翻し「不味いっ! レッド! ここを頼んだぞっ!!」と言って魔導戦艦に急いだ。
レッドは困惑した顔を見せたものの、ドラグロスを前に視線を逸らさない。
「あっ……悪い悪い。あいつ俺の殺気がトラウマでよぉ。気を感じちまうと時よりああやって暴れちまうんだ。今のは上手く噛み合っちまったようだなぁ」
ドラグロスは全く反省の色なく呆れたように語る。レッドは上の怪物には全く気にしていない素振りを見せて口を開いた。
「……1つ質問がある」
「あ? なんだよ?」
「あ、いやごめん。何個か質問があるんだけどいいかな?」
「……何だお前? ダメだ。1つにしろ」
「ダメ? そうか……じゃあ、1つだけ。……お、お前はドラゴンヘッドなのか?」
ドラグロスは『ドラゴンヘッド』というのを頭の中で反芻させる。ハッとしてニヤリと笑った。
「ほぅ? この俺を『竜神帝』だと知っているのか? 如何にも俺は『竜の首領』だ」
「グ、グルガンさんの言った通りだ……!」
「くくく……。まさかこの辺境の世界に俺を知る奴が居るとは驚きだな。それを知って俺の眼前に立つとは余程の自信があると見える」
「いや、今やっと追いついた。俺の勘違いだったってことがな」
「勘違いだと? まさかこの俺をもっと高く見積もっていたとでも言うつもりかこの野郎」
「っ!……察しが良いな。竜の頭」
「竜の首領か……。ふっ、その呼び名も悪くねぇが、俺の名はドラグロス。ドラグロス=バルブロッソ様だ。『竜神帝』であるこの俺を前によくぞそこまで吠えやがったな?! タダじゃ済まさねぇぞレッド=カーマイン!!」
獣王国について早々にレッド対ドラグロスの戦いが始まる。
獣王国の上空に現れた戦艦に違和感を感じた獣人たちは急いで主人の元へと走る。
「首領っ! 見慣れない船が空に浮かんでますぜっ!」
作戦会議用の大きなテントを独占して昼寝をしていた首領はのそっと起き上がった。
「あぁ? 船だぁ? そりゃ浮遊要塞のことじゃねぇだろうな?」
「いえ。首領が乗って来たような浮いてる島って感じじゃなくてガッツリ船ですぜ。ありゃ首領の家来か何かですかい?」
「……っだよそれ?」
せっかくうつらうつらして良い気持ちだったというのに、意味の分からない奴の急な訪問に苛立ちながら日の光の下に出た。
日の下に照らされたその姿は2足歩行の竜、魔神ドラグロス=バルブロッソ。
獣人たちを肉体能力でねじ伏せ、獣王国の頂点に君臨していた。
ドラグロスのテントに駆け込んできた獣人は元は獣人族の長の1人であり、他に4つの大きな部族に分かれていたのだが魔神の力の前には歯が立たず、獣王国は歴史上初めて統治されることとなる。
「あ! ドラグロス様だ!」
「おおっ! ありがたやありがたや……」
獣人たちは敬服の念をドラグロスに向ける。その瞳には神を崇めるが如き信仰の光が灯っている。
侵略行為にもかかわらず死人が出なかったで、ドラグロスを英雄視する獣人も多い。圧倒的な力を持つ者は殺さないことも出来るのだと身に染みて理解させられたからだ。
戦争という悲しみを打ち破ったドラグロスは、今や獣王国で誰もが認める王へとなったいた。
自分の世界で統治していた国の部下たちを想起させる目に、ドラグロスは少しだけ寂しくなった。
「あれですぜっ!」
ドラグロスは言われるがまま空を見上げ、眉根を顰める。
確かに船だ。豪華客船並みの大きな船が空に浮いている。
「はっ! 領空侵犯たぁ良い度胸じゃねぇか。誰を相手にしてんのか分からせてやらねぇとなぁ……」
*
「はい? ドラゴン恐怖症?」
戦いを渋るレッドに対し、シルニカたちが早く行けと鼓舞していたのだが、逆に意固地になって駄犬のようにうずくまり、それ以上一歩もレッドは動かなくなってしまった。
どうしてしまったのかと不安に駆られる彼女たちに、オリーから聞かされたのは予期せぬ言葉だった。
「そうだ。レッドは他の魔物に対しては無類の強さを発揮するのだが、ドラゴンに対しては怖がって戦おうとはしない」
「はぁっ!? ちょっ……何でそんなことになんのよ?!」
「それは……分からない。何かトラウマでもあるのではないだろうか?」
「……固定概念だ」
そこにグルガンが割り込む。
「レッドの中にあるドラゴンは最強であるという固定概念が戦闘意欲を削いでいる」
「は? 固定概念?」
「そ、そんなのどうして分かったの?」
「少し前にライトからレッドの精神面について相談を受けてな、それを元にレッド本人に直接色々と質問してみたのだ。分かったのはレッドは子供のころに聞かされた英雄譚のドラゴンの力に慄き、ドラゴンに並々ならぬ思いを馳せてしまっているようだ。家業を継がせるためか、単純に危険だからか、村の外に出さないための措置だったのだろうが、子供の頃に刷り込まれたトラウマはちょっとやそっとで克服は出来ないぞ」
遭ったことも襲われたこともない物語の中だけの怪異に怖がる人が居るように、自分ではどうしようもないものであると幼少期から植え付けられたドラゴンへの恐怖心が、大人になっても払しょくされることなく肥大化してレッドの心に根を張ってしまっている。
「え? じゃ実際に戦ったことは……」
「ない。戦っていればドラゴンをここまで恐れはしないだろう」
全員がその言葉に固唾を飲んだ。
「く、食わず嫌いってヤツ?」
「おやおや。これは思ってもみない弱点だねぇ。まだ降り立っていないし、このまま尻尾を巻いて逃げるってのも1つの手だと僕は思ってるけど?」
ルイベリアは一旦体勢を立て直す提案をする。しかしグルガンは首を横に振った。
「ドラゴンがネックとなるなら最初に倒しておくのが良い。面倒なのから倒しておけば後が楽になる」
「でも情報はどうするの? 君のやり方に口出しするつもりはないけど、情報をそろえて戦いに挑もうと言ったのは君だったように思うけど?」
「その通りだ。無茶をすれば体の一部が欠損したり命に係わることにもなりかねん。だからこそ優位に進めるための手立てを常に模索している。しかしながら獣王国の様子を見るに既に戦いは終結し、あの魔神の占領下にある。情報を抜こうにも、隠れることが出来ない平坦な風景も相まって、気付かれずに近付くことなど不可能だ。邂逅は則ち戦争の域に達していると我は見ている」
「……どこかに居るであろう反乱軍に協力を要請するってのは?」
「探すことを思えば一度小競り合い程度にこちらの力を発揮し、名声を高めることで釣られた反乱軍が出てくるのを待つのが手っ取り早い」
「あ~……こちらの損害が無いに等しく、魔神とやりあえる力を持った者を認知させるんだねぇ。そんなの見せられたら国の奪還に希望が生まれないわけがないわ。んで、それが出来るのがレッドだけってことね」
「うむ。本来であればレッドのドラゴン克服に時間をかけ、どんな敵にも同じ能力で挑めるようにしていきたいところだったが……」
3魔将の登場から間を開けずにやって来たデザイアに対し、策を討とうにもグルガンがなけなしの時間で出来たことと言えばヴォジャノーイを軟禁状態にした情報収集のみ。
ここでもしレッドが戦わないとなると、他の戦力はグルガンとヴォジャノーイだけだが、ヴォジャノーイはドラグロスの顔を見るなり部屋へと逃げてしまった、。
このままではグルガンが1人、死力を尽くして戦うことになりそうだ。
「う~ん……。相手がドラゴンの皮を被った魔獣だっていうなら話は別なのになぁ……」
「……それだ」
グルガンはルイベリアの言葉に良い案を思いつく。早速レッドに話しかけた。
「レッド。ちょっと良いか? あの魔神についてなのだが……」
「ドド、ドラゴンは門外漢ですよっ!ディロンさんを呼んできましょうよっ!『ドラゴンバスター』のディロンさんならあんな奴イチコロですよっ!」
「そうかもしれんが、まぁちょっと聞くのだ。レッド、貴君は少々……いや、大分勘違いをしている」
「……え? 勘……違いって、何がです?」
「あれはリザードマンだ。見よ、あの絵に描いたようなトカゲの2足歩行を。あれをドラゴンだと言えるか?……ん? ツノ? なるほど、あの角がドラゴン特有のものだと言いたいのだな? 分かった分かった。その謎を解こうではないか」
グルガンはレッドにドラグロスが如何にリザードマンであるかを説く。そしてレッドはある言葉によってもしかしたらドラゴンではないのかもしれないと思うようになり始めた。
「竜の頭……ですか?」
「そうだ。リザードマンの中でも特に希少な存在でな。突然変異と言って過言ではない」
グルガンの言葉をまるっと信じるなら見た目が近いだけのリザードマンとなる。でもレッドもそれなりに冒険者をやっているがリザードマンに色違い以外の亜種が居るとは聞いたこともないし、思ってもみないことだった。
もちろん出まかせである。グルガンはもしかしたら居る可能性はあるかもしれないというギリギリを突いた嘘で誤魔化したのだ。
ちなみにこの世界中を探したら本当にどこかに居るのかもしれないが、噂でも聞いたことがないのでグルガンは思いついたままを語っている。
しかしレッドはこの無理やりな意見に納得しかけていた。デザイアが外の世界から希少なリザードマンをコレクション感覚で連れて来たのではないかと閃きが走ったためだ。
エデンズガーデン以外の世界で竜の頭は割と有名である説が、レッドの頭の中だけで勝手に妄想が膨らんでいった。
「……本当にそうなら大丈夫かも……」
「ふむ……それではこれから奴自身に聞きに行こうではないか。もしレッドが奴のことをどうしても怖いというならすぐに撤退する」
「あ……え、えっとその……多分行けます」
今まで頑なに動こうとしなかったレッドから発せられたその言葉に艦内から『おおっ!』と驚嘆の声が上がった。
レッドとグルガンは早速デッキに向かい、青い空にその身を投げ出した。グルガンの浮遊魔法を用いて安全に地面に降り立つと、レッドは剣を抜きはらった。自信こそ無さげだったが、弱音を吐いて動けなかった先ほどとは全然違う。
魔導戦艦を地面に下ろすでもなく飛び降りて来た敵をただ眺めていたドラグロスは、降りて来た男の情けない顔に一瞬驚いた顔を見せ、すぐにニヤリと牙を剥いて笑った。
「……お前かぁ」
ドラグロスは獣人たちを下がらせるとバキゴキと指の骨を鳴らして戦闘態勢に入った。
「この俺を最初に選びやがったか……こいつは良いっ! 他の奴がつまみ食いした後だと十全に戦えなくなっちまうだろうしなぁっ! この世界は当たりだぜっ!!」
全身に力を入れるとゴゴゴッと大地が揺れ、空気も振動する。気迫だけで常人なら心が折れる。
『ギュシャアアアアァァッ……!!!』
その殺気を感じ取ったのか、ドラグロスの要塞に乗っかった巨大なタコのような怪獣が騒ぎ始める。グルガンはすぐさま身を翻し「不味いっ! レッド! ここを頼んだぞっ!!」と言って魔導戦艦に急いだ。
レッドは困惑した顔を見せたものの、ドラグロスを前に視線を逸らさない。
「あっ……悪い悪い。あいつ俺の殺気がトラウマでよぉ。気を感じちまうと時よりああやって暴れちまうんだ。今のは上手く噛み合っちまったようだなぁ」
ドラグロスは全く反省の色なく呆れたように語る。レッドは上の怪物には全く気にしていない素振りを見せて口を開いた。
「……1つ質問がある」
「あ? なんだよ?」
「あ、いやごめん。何個か質問があるんだけどいいかな?」
「……何だお前? ダメだ。1つにしろ」
「ダメ? そうか……じゃあ、1つだけ。……お、お前はドラゴンヘッドなのか?」
ドラグロスは『ドラゴンヘッド』というのを頭の中で反芻させる。ハッとしてニヤリと笑った。
「ほぅ? この俺を『竜神帝』だと知っているのか? 如何にも俺は『竜の首領』だ」
「グ、グルガンさんの言った通りだ……!」
「くくく……。まさかこの辺境の世界に俺を知る奴が居るとは驚きだな。それを知って俺の眼前に立つとは余程の自信があると見える」
「いや、今やっと追いついた。俺の勘違いだったってことがな」
「勘違いだと? まさかこの俺をもっと高く見積もっていたとでも言うつもりかこの野郎」
「っ!……察しが良いな。竜の頭」
「竜の首領か……。ふっ、その呼び名も悪くねぇが、俺の名はドラグロス。ドラグロス=バルブロッソ様だ。『竜神帝』であるこの俺を前によくぞそこまで吠えやがったな?! タダじゃ済まさねぇぞレッド=カーマイン!!」
獣王国について早々にレッド対ドラグロスの戦いが始まる。
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