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プロローグ
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暗雲立ち込める魔王城ヘルキャッスル。
その城の二階部分が凄まじい力ではじけ飛んだ。ドンッという音は城全体に響き渡り、建物が悲鳴を上げる。
「魔王様ーー!!」
大声で叫ぶのは魔王の部下にして、側近でもある中級モンスターのポイズンスライム。
不定形のモンスターであり、足がないので這いずり回っているのだが、思ったより早く、人が全力疾走で走るくらいの速度で動いている。
滅茶苦茶早いナメクジである。
息を切らさず、玉座の間に突貫する。
バァンッというでかい音が鳴りながら扉を開ける。奥まった部屋で、かなり広い。この玉座の間は並みいる部下たちを押し込め、拝謁させてもまだ余る程。
今はそれぞれの前線に出している為、ガラガラだが、唯一玉座には、足を組み、不遜な態度で目を瞑る、魔王の姿があった。
「第一関門、突破されましたーー!!」
ポイズンスライムはその広さを見越して、大声で現状を伝える。
「焦るなポイ子よ」
沈み込むように低い声は、心胆を震え上がらせる。
世界が恐怖する魔王。その名もヴァルタゼア。
その姿は禍々しいの一言だ。
頭には闘牛によく似た大きな角が生え、3mを越す身長は見るものを委縮させる。筋骨隆々で、指には鋭利な爪が生え、蝙蝠のものと思われる翼を6枚生やし、絶大な力をにおわせる。
腕輪や指輪、ピアスやネックレスなどで着飾っているが、どれも魔力を放ち、ただの貴金属ではない、装備であることが分かる。
髪の毛は重力に逆らう形で逆立ち、強そうなケツ顎と頬骨の張ったごつい顔に眉毛が無く、目の下に黒々とした模様を付けた、いかにも強面の魔王。
神をも凌ぐとされる最強の魔王は、モンスターの希望の星であり、魔の者が唯一傅く王の中の王である。
人類が領土を拡大し、モンスターの居場所を破壊する行為に待ったをかけたのが魔王であり、蹂躙されるしかなかったモンスターたちの心に火を灯したのも他ならぬ魔王である。
これにより、多くの生き物たちが死んでいったわけだが、その長きにわたる争いも今宵を持って終わる。
何故なら、勇者が現れたからだ。
人類側の希望であり、魔王を倒せるとされる唯一の人物。神々が生み出した救世主。
その神が生み出したとされる光の剣を携えて、ヘルキャッスル前に存在する最難関。受難峠を越えて、今、城内に侵入している。
「ふふ……まさか四天王が一柱、魔導士マレフィアを破り、我が城に到達するとは……敵ながら天晴な奴よ」
ポイズンスライムのポイ子は魔王の傍にやって来る。
「このままでは勇者一行がやってきてしまいます!どうかお逃げください!」
「なるほど……お前は我が殺されると思っているわけか?」
「それは……」とおろおろしている。勿論、ポイ子だって勝つと思いたいが、だがどうしても不安はぬぐえない。
ヴァルタゼアは神をも凌ぐ最強の魔王。本来、勇者一行が勝つ通りなどないが、神の用意した”光の剣”とやらが気がかりだった。噂によれば、神自身が剣になり、他の神々の力が寄り集まってできた正に、神器そのもの。そんなものを受けては一溜まりもないだろう。
現に受難峠が更地になったことを思えば、これと相対する事も馬鹿げている。
「何も心配は要らん。奴らはここで死ぬのだ。我が力を持ってしてな!それに万が一にも……いや、兆が一にもこの我が……いや、那由他一にもこの我が負けるとして、魂は不滅。何度でも生き返り、何度でも滅ぼす。それが我が存在意義であり、我の宿命なのだ!」
この世界の戦いはどちらかの死で決着を見る。
魔王が死ねば人類の勝利。勇者が死ねばモンスターの勝利だ。そして、魔王が万が一死んでも転生し復活が可能である。ここで死んでも、また再起ができるわけだが、勇者は今回限りの命。
つまり人類が勝とうが負けようが、これ以降対抗できる者は存在せず、死にゆくのみである。
「死なないで下さい魔王様。あなたは我々の……いえ、私の救世主なのですから」
ここであえて個人を優先したのは大恩がある為である。それを知る魔王は、頷き、もはや振り返らずに玉座前の階段を下りる。
「ここは戦場となる。逃げよポイ子。我が生かしたその命……ここで散らすのは我に対する裏切りと知れ!」
「ですが……魔王さ……」
魔王に寄り添おうと近づいた時、
「ここにいたか!!魔王!!」
勇者一行が玉座の間にたどり着いた。
「馬鹿な!早すぎる!!」
焦るポイ子。だが、魔王は余裕の表情で勇者に歩み寄る。
「来たか勇者よ……待っておったぞ?貴様よくも我が部下を散々いたぶり殺してくれたな。この罪は倍返しで貴様の……」
「うおおおお!!魔王よ!くらえぇぇ!!!」
ザシュッ
勇者は喋る魔王に斬りかかる。
「ぐあぁぁぁ!!き……貴様!!まだ話途中……」
「まだ息があったか!!」
ザシュザシュッ
「魔王様ぁぁぁぁ!!!」
ポイ子の悲鳴だけが空しく響き渡った。
こうして魔王は討伐され、世界に光が戻った。人類は世界の平和を噛み締め、これから先も生きていくのだ。
だが、魔王は魂となりて復活の時を待つ。
いつの日か世界征服を成し遂げるために……。
その城の二階部分が凄まじい力ではじけ飛んだ。ドンッという音は城全体に響き渡り、建物が悲鳴を上げる。
「魔王様ーー!!」
大声で叫ぶのは魔王の部下にして、側近でもある中級モンスターのポイズンスライム。
不定形のモンスターであり、足がないので這いずり回っているのだが、思ったより早く、人が全力疾走で走るくらいの速度で動いている。
滅茶苦茶早いナメクジである。
息を切らさず、玉座の間に突貫する。
バァンッというでかい音が鳴りながら扉を開ける。奥まった部屋で、かなり広い。この玉座の間は並みいる部下たちを押し込め、拝謁させてもまだ余る程。
今はそれぞれの前線に出している為、ガラガラだが、唯一玉座には、足を組み、不遜な態度で目を瞑る、魔王の姿があった。
「第一関門、突破されましたーー!!」
ポイズンスライムはその広さを見越して、大声で現状を伝える。
「焦るなポイ子よ」
沈み込むように低い声は、心胆を震え上がらせる。
世界が恐怖する魔王。その名もヴァルタゼア。
その姿は禍々しいの一言だ。
頭には闘牛によく似た大きな角が生え、3mを越す身長は見るものを委縮させる。筋骨隆々で、指には鋭利な爪が生え、蝙蝠のものと思われる翼を6枚生やし、絶大な力をにおわせる。
腕輪や指輪、ピアスやネックレスなどで着飾っているが、どれも魔力を放ち、ただの貴金属ではない、装備であることが分かる。
髪の毛は重力に逆らう形で逆立ち、強そうなケツ顎と頬骨の張ったごつい顔に眉毛が無く、目の下に黒々とした模様を付けた、いかにも強面の魔王。
神をも凌ぐとされる最強の魔王は、モンスターの希望の星であり、魔の者が唯一傅く王の中の王である。
人類が領土を拡大し、モンスターの居場所を破壊する行為に待ったをかけたのが魔王であり、蹂躙されるしかなかったモンスターたちの心に火を灯したのも他ならぬ魔王である。
これにより、多くの生き物たちが死んでいったわけだが、その長きにわたる争いも今宵を持って終わる。
何故なら、勇者が現れたからだ。
人類側の希望であり、魔王を倒せるとされる唯一の人物。神々が生み出した救世主。
その神が生み出したとされる光の剣を携えて、ヘルキャッスル前に存在する最難関。受難峠を越えて、今、城内に侵入している。
「ふふ……まさか四天王が一柱、魔導士マレフィアを破り、我が城に到達するとは……敵ながら天晴な奴よ」
ポイズンスライムのポイ子は魔王の傍にやって来る。
「このままでは勇者一行がやってきてしまいます!どうかお逃げください!」
「なるほど……お前は我が殺されると思っているわけか?」
「それは……」とおろおろしている。勿論、ポイ子だって勝つと思いたいが、だがどうしても不安はぬぐえない。
ヴァルタゼアは神をも凌ぐ最強の魔王。本来、勇者一行が勝つ通りなどないが、神の用意した”光の剣”とやらが気がかりだった。噂によれば、神自身が剣になり、他の神々の力が寄り集まってできた正に、神器そのもの。そんなものを受けては一溜まりもないだろう。
現に受難峠が更地になったことを思えば、これと相対する事も馬鹿げている。
「何も心配は要らん。奴らはここで死ぬのだ。我が力を持ってしてな!それに万が一にも……いや、兆が一にもこの我が……いや、那由他一にもこの我が負けるとして、魂は不滅。何度でも生き返り、何度でも滅ぼす。それが我が存在意義であり、我の宿命なのだ!」
この世界の戦いはどちらかの死で決着を見る。
魔王が死ねば人類の勝利。勇者が死ねばモンスターの勝利だ。そして、魔王が万が一死んでも転生し復活が可能である。ここで死んでも、また再起ができるわけだが、勇者は今回限りの命。
つまり人類が勝とうが負けようが、これ以降対抗できる者は存在せず、死にゆくのみである。
「死なないで下さい魔王様。あなたは我々の……いえ、私の救世主なのですから」
ここであえて個人を優先したのは大恩がある為である。それを知る魔王は、頷き、もはや振り返らずに玉座前の階段を下りる。
「ここは戦場となる。逃げよポイ子。我が生かしたその命……ここで散らすのは我に対する裏切りと知れ!」
「ですが……魔王さ……」
魔王に寄り添おうと近づいた時、
「ここにいたか!!魔王!!」
勇者一行が玉座の間にたどり着いた。
「馬鹿な!早すぎる!!」
焦るポイ子。だが、魔王は余裕の表情で勇者に歩み寄る。
「来たか勇者よ……待っておったぞ?貴様よくも我が部下を散々いたぶり殺してくれたな。この罪は倍返しで貴様の……」
「うおおおお!!魔王よ!くらえぇぇ!!!」
ザシュッ
勇者は喋る魔王に斬りかかる。
「ぐあぁぁぁ!!き……貴様!!まだ話途中……」
「まだ息があったか!!」
ザシュザシュッ
「魔王様ぁぁぁぁ!!!」
ポイ子の悲鳴だけが空しく響き渡った。
こうして魔王は討伐され、世界に光が戻った。人類は世界の平和を噛み締め、これから先も生きていくのだ。
だが、魔王は魂となりて復活の時を待つ。
いつの日か世界征服を成し遂げるために……。
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