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第六話 驚愕
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ドリンクバーで飲み物を入れたポイ子が春田の分まで持って帰ってくる。
「え?魔王様、それ何をしているんですか?」
春田は目の前にノートと教科書を出してノートにペンを走らせている。
「宿題」
「!魔王様が宿題!?」
驚愕のあまり開いた口が塞がらない。持っていたドリンクを震えてちょっと零すくらいだ。
「そんなに驚く事か?人になじむには仕方ない事だろ。17年もいたんだ。生きていく知恵だよ、文字通りな」
教科書を持ち上げて、ペラペラ捲ってみる。
「環境が変われば変わるものですね……昔は書類を見ようともせず消し炭にしてたのに……」
昔の情景を思い出し、感慨に浸るポイ子。そして小学時代を思い出し、感慨に浸る春田。
(夏休みの宿題を燃やしたかったが、出来なかったんだよなぁ……道具に頼りたくなくて諦めたっけ……)
コップを春田の前に置いて、ポイ子も向かいに座る。
「しかし魔王様。それはご自宅でもよいのでは?」
「まあな。でも、集中できないし、何よりたった一人で黙々とするのは寂しいからな……」
それだけを言うと後は集中して黙々とやり始める。
静かにその様子を眺めていたポイ子は、春田が言ったセリフを頭の中で反芻していた。そしてその意味の真意に気付くと嬉しくなってニコニコし始めた。
その視線と変化が気になって顔を上げる。
「……なんだよ?」
「今は寂しくないんだなーって思いまして」
「え?おう、そうだな」
言った言葉をそのまま返しているだけのポイ子に違和感を感じつつ、ノートに視線を落とすが、ハッとなってポイ子を見る。
「え!?いやっ違うぞ?俺は一人暮らしだし、どちらかと言えば広い室内の方が集中できるだけで……」
苦しい言い訳みたいになっている。ポイ子が来た事によって寂しくなくなったと言われている事に気付き、恥ずかしくなったが、間違いじゃないので、何が違うのかは明言できない。
それを知りながらニコニコされる。これ以上は無駄だと判断し、放っといて続きを始める。
しばらくして宿題を終了した春田は、体を伸ばし、それを知らせる。
「ふーっ……終わり終わり……終わりぃ」
固まった体がポキポキ鳴ってほぐれる。
「お疲れさまでしたーー」
飽きもせずに向かいで眺めていたポイ子は春田を労う。
「そろそろ帰るか……」
ポイ子のせいで食事も取れてはいないが、長居するのも気が引けたので、席を空ける事にした。
「はい!」
元気よく返答するポイ子。鞄に私物を詰めている現状で、またも疑問が生まれる。
「お前はこっちに住処とかあるのか?」
「いいえ、こっちには無いですね」
元の世界からやってきているので、当然あるわけがない。
「じゃあどこに?」
「それは勿論、元の世界ですよ」
それを聞いて当然という思いと共に、驚愕が心を満たす。
「も、もももももも……元の世界だって……?」
(帰れるのか!?)
幼少期、元の世界に帰る方法を探し、小説という創作物で心砕かれた過去のある春田は動揺を隠せない。
「いや……そうか。ポイ子が来てるもんな……あり得ない事はないんだよな……」
「?」
ポイ子は首をかしげてコップの中の氷を頬張る。
「それじゃあれか?マレフィアに何らかの合図をして向こうに召喚してもらう感じなのか?」
「端的に言えばそうですね」
色々と優秀だった彼の魔導士を思い出す。
「マレフィアなー……」
ぼんやりとつぶやくと、ポイ子はハッとなって春田に詰め寄るように机に乗り出す。
「そうだ!魔王様も一緒に帰りましょうよ!私はそのために来たんですし」
幼少期の春田なら願ってもない事だろう。あの野心と不屈を持った頑固者ならだ。だが、今の春田は既にいろいろと挫けている。
「いいかポイ子、もう一回言うぞ。以前の力を持たず、おまけに人間ときたらポイ子みたく受け入れられる奴がいると思うか?」
「え?2、3人は……」
「その2、3人が味方であるとしても、いつ何時、命を狙われて死ぬかも分からないんだぞ?」
暗殺の危険性があるなら、そもそも帰りたくないし何に転生するか分からない現状、簡単に死にたくない。せめて、転生先が選べるようになってからそれを確立してなら、元の世界に戻るのもやぶさかではない。
「確かな確証はございませんけど、殺されませんって。確かな確証はないけど、大丈夫ですよ」
「その確かな確証が欲しいんだよ!」
あいまいな答え方で一瞬憤慨するも、ポイ子の気持ちになれば分からない事はない。こんな別世界まで探してようやく目的の主に出会ったのだ。わがままも言いたいだろう。だが、分かると言って、そうは問屋が卸さない。
「ふふっ……実は私も何もしてないわけではないですよ。魔界に帰っても何とかなるかもしれない方法を探しました。その答えは、実はこの世界にこそ存在したのです!」
その言葉は春田を激震させた。
「な……!なんだと!?」
「え?魔王様、それ何をしているんですか?」
春田は目の前にノートと教科書を出してノートにペンを走らせている。
「宿題」
「!魔王様が宿題!?」
驚愕のあまり開いた口が塞がらない。持っていたドリンクを震えてちょっと零すくらいだ。
「そんなに驚く事か?人になじむには仕方ない事だろ。17年もいたんだ。生きていく知恵だよ、文字通りな」
教科書を持ち上げて、ペラペラ捲ってみる。
「環境が変われば変わるものですね……昔は書類を見ようともせず消し炭にしてたのに……」
昔の情景を思い出し、感慨に浸るポイ子。そして小学時代を思い出し、感慨に浸る春田。
(夏休みの宿題を燃やしたかったが、出来なかったんだよなぁ……道具に頼りたくなくて諦めたっけ……)
コップを春田の前に置いて、ポイ子も向かいに座る。
「しかし魔王様。それはご自宅でもよいのでは?」
「まあな。でも、集中できないし、何よりたった一人で黙々とするのは寂しいからな……」
それだけを言うと後は集中して黙々とやり始める。
静かにその様子を眺めていたポイ子は、春田が言ったセリフを頭の中で反芻していた。そしてその意味の真意に気付くと嬉しくなってニコニコし始めた。
その視線と変化が気になって顔を上げる。
「……なんだよ?」
「今は寂しくないんだなーって思いまして」
「え?おう、そうだな」
言った言葉をそのまま返しているだけのポイ子に違和感を感じつつ、ノートに視線を落とすが、ハッとなってポイ子を見る。
「え!?いやっ違うぞ?俺は一人暮らしだし、どちらかと言えば広い室内の方が集中できるだけで……」
苦しい言い訳みたいになっている。ポイ子が来た事によって寂しくなくなったと言われている事に気付き、恥ずかしくなったが、間違いじゃないので、何が違うのかは明言できない。
それを知りながらニコニコされる。これ以上は無駄だと判断し、放っといて続きを始める。
しばらくして宿題を終了した春田は、体を伸ばし、それを知らせる。
「ふーっ……終わり終わり……終わりぃ」
固まった体がポキポキ鳴ってほぐれる。
「お疲れさまでしたーー」
飽きもせずに向かいで眺めていたポイ子は春田を労う。
「そろそろ帰るか……」
ポイ子のせいで食事も取れてはいないが、長居するのも気が引けたので、席を空ける事にした。
「はい!」
元気よく返答するポイ子。鞄に私物を詰めている現状で、またも疑問が生まれる。
「お前はこっちに住処とかあるのか?」
「いいえ、こっちには無いですね」
元の世界からやってきているので、当然あるわけがない。
「じゃあどこに?」
「それは勿論、元の世界ですよ」
それを聞いて当然という思いと共に、驚愕が心を満たす。
「も、もももももも……元の世界だって……?」
(帰れるのか!?)
幼少期、元の世界に帰る方法を探し、小説という創作物で心砕かれた過去のある春田は動揺を隠せない。
「いや……そうか。ポイ子が来てるもんな……あり得ない事はないんだよな……」
「?」
ポイ子は首をかしげてコップの中の氷を頬張る。
「それじゃあれか?マレフィアに何らかの合図をして向こうに召喚してもらう感じなのか?」
「端的に言えばそうですね」
色々と優秀だった彼の魔導士を思い出す。
「マレフィアなー……」
ぼんやりとつぶやくと、ポイ子はハッとなって春田に詰め寄るように机に乗り出す。
「そうだ!魔王様も一緒に帰りましょうよ!私はそのために来たんですし」
幼少期の春田なら願ってもない事だろう。あの野心と不屈を持った頑固者ならだ。だが、今の春田は既にいろいろと挫けている。
「いいかポイ子、もう一回言うぞ。以前の力を持たず、おまけに人間ときたらポイ子みたく受け入れられる奴がいると思うか?」
「え?2、3人は……」
「その2、3人が味方であるとしても、いつ何時、命を狙われて死ぬかも分からないんだぞ?」
暗殺の危険性があるなら、そもそも帰りたくないし何に転生するか分からない現状、簡単に死にたくない。せめて、転生先が選べるようになってからそれを確立してなら、元の世界に戻るのもやぶさかではない。
「確かな確証はございませんけど、殺されませんって。確かな確証はないけど、大丈夫ですよ」
「その確かな確証が欲しいんだよ!」
あいまいな答え方で一瞬憤慨するも、ポイ子の気持ちになれば分からない事はない。こんな別世界まで探してようやく目的の主に出会ったのだ。わがままも言いたいだろう。だが、分かると言って、そうは問屋が卸さない。
「ふふっ……実は私も何もしてないわけではないですよ。魔界に帰っても何とかなるかもしれない方法を探しました。その答えは、実はこの世界にこそ存在したのです!」
その言葉は春田を激震させた。
「な……!なんだと!?」
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