魔王復活！

第七話 方法

春田は動揺しつつ、ポイ子の発言を促す。

「き……聞かせてくれ……その方法とは一体……」

ポイ子は自分の成果を春田に話せるとあって、喜び勇んで、説明に入る。

「この世界に文献が多数存在しています。その一部を鑑賞しましたが、実は転生は身近にあり、魔王様の例は、全く珍しくないのです」

その発言はつまり、異世界転生に関する詳細という事なのか？その答えを聞くべく、黙って先を促す。

「この世界から別世界への転移はいくつか例があり、そして、何とも不思議な偶然ですが、今の魔王様のお年頃に多いと推察しました」

「そうなのか……てっきりこの世界はそういう事柄には縁遠いものと思っていたが、真実は違うのだな？」

ポイ子は胸を張って頷く。

「ここからが本題ですが、転移した迷子たちはいずれも人の身に合わない強大な能力を覚醒させ、その者が持つ圧倒的な力とカリスマで英雄となり、その世界の脅威を仲間と共に立ち向かう……」

そこで春田は「ん？」と思う。
どこかで聞いたような設定や内容である。

「その者は時に激しく、時に優しく、その世界の住人たちと関わり、色恋沙汰を混ぜつつ様々な事柄に挑んでいくのです！」

力の入った言葉で、心を持って行こうとするが、春田は冷めた目でポイ子を見ていた。

「お前……それってまさか……小説ラノベじゃねぇか？」

自分が幼少時代に読み漁り、絶望を喫したあの…。

「ところでアニメ化って何ですかね？」

多分、小説の帯にでも書いてあった文言だろう。書店に平積みされた有名な小説でも見たのだろうか？

「絵を一枚一枚描いて、まるで動いているように見せる技法ってところだ。枚数が多い程、動きがすごい……ってつーか、やっぱそれ小説ラノベだろ……」

「らのべ……？」

春田は肩を竦めて、説明する。

「創作物だよ……こうなったらいいとか、ああなったら最高とか、あり得ざる事だな……」

無論、今ポイ子がいる現状を指して尋常とは到底言えない事だが、そこには目を瞑る。

「なるほど！やけに細かく一人一人の心理描写を記述していると思ったら、作り物だったんですねーー」

納得した様子で、その時の情景を思い出している。そして、その時の情景を思い出すと、ポイ子の目から一粒の涙が零れ落ちた。

「なるほどーー……」

ポロポロ止めどなく流れる涙を見て驚く。

「！？な……なんで泣いたの？」

「え！！あっごめんなさい……とっておきの方法が意味ないと知り、魔王様のお役に立てなかったと思うと悔しいやら悲しいやら……自然と涙が……」

ぐしぐし泣いて、見ている春田は気の毒に感じた。

「まぁ落ち着けポイ子。確かに小説はあくまで創作だがこの世界には”事実は小説より奇なり”ということわざが存在するんだ。全部を否定できるほど俺も世界を知ってないさ」

「え……？それでは一緒に……一緒に元の世界に……戻っていただけるんですね？」

言葉に詰まりながらも確認は怠らない。

「いや、それとこれとは話は別だ」

春田はポイ子を気の毒に思いながらも、そこだけは譲らない。

「なんでですか～。それじゃさっきの下りが意味なくなっちゃいますよ？いいんですか？魔王様がそんな曖昧で～」

さっきまでの泣き顔が嘘のようにケロッと変わる。姿形をどれだけ変えようともこいつが不定形の魔族である事を嫌でも認識させられる。

「お前の忠誠と苦労は買うが、お前も俺の苦労を察しろ」

だが春田もやはり常人とは一線を画す。違和感という言葉をどこかに置いてきて、何事もないように会話をする。

「とにかく、だ。俺は自分の身の安全が保障されるまでは帰るつもりはないからな」