魔王復活!

大好き丸

文字の大きさ
9 / 151

第八話 精算

しおりを挟む
「ポイントカードはお持ちですか?」

レジでのいつものやり取り、春田は財布からポイントカードを取り出し、会計を済ませる。

「おつりです。ありがとうございました」

小銭を受け取ると、カバンを肩に提げて出て行く。

「ごちそうさまーー」

それは誰かに対して言ったわけではない。強いて言うなら店全体を指して言った。外食後の軽い挨拶。単なる気持ちだ。

ポイ子は会計の前に春田と分かれた。かなりガッカリしていたが、スッキリもしていた。

『帰ります』

一言で済んだその言葉の裏には、”帰ってきて欲しい”そう思うのとは裏腹に、春田の気持ちを汲んだポイ子の忠誠と決意があった。

ポイ子は魔王亡き後も忠誠を捧げ続け、誰の配下になる事もなく復活を待ってくれていた、正に下僕の中の下僕。

その複雑な心に答えることの出来ない春田は、ポイ子に対し一言「おぅ」の返事しかできなかった。

不安にさせない様、ニコニコ笑って出て行ったポイ子の顔を思い出すだけで胸が苦しい。春田は力の無い不甲斐なさに、一つため息をついて夜空を見上げる。月は誰にも等しくその光を与える。

「魔王様~♪」

ポイ子の声が聞こえてくる。さっき別れたばかりだというのに既に幻聴が聞こえるのかと思う。未練たらたらである。

「魔王様~♪」

間髪入れずに立て続けに聞こえる。余程、惜しい体験だったのだろう。寂しくなるから、考えないようにしなければ……。

「魔王様ーー!!」

耳元で鼓膜を痛めるほどの声を張り上げられる。鼓膜が音に耐えかねキィーンッという音で春田に痛みを訴える。

「ポイ子?え?帰っ……え?」

一瞬何が起こっているのか分からず混乱している。

「どうした?忘れ物か?」

ポイ子は鼻を鳴らしてフフンッと笑顔で横に立つ。

「私もこの世界に残る事にしました!」

胸を張って「どうだ!」といった感じに主張している。意味が分からず春田の頭には?マークが浮かぶ。

「え?帰らないのか?」

「帰りましたよ。で、戻ってきました」

その言葉から察するに、一旦元の世界に帰ってマレフィアに事の経緯を説明し、また戻ってきたとそういうわけだと捉える。

「残るったって……帰る家がないだろう?」

「無いですね」

そういった後、すぐに身を翻す。まるで演劇のように大仰に優雅に。

「魔王様……私は魔王様の下僕でございます。そう!死すら超越して……!」

そこまで言われれば何が言いたいか流石に分かる。

「つまり泊めろと?」

せっかくの演武に水を差されたポイ子は、胸に左手を当て右手を広げた演劇のいちシーンの様な恰好で停止する。

「流石、今の魔王様は察しが良いですね。持って回った言い方で頭を抱えていた時期が懐かしいです」

春田は呆れたように腕を組み、ため息を出しつつ返答する。

「今の流れなら昔の俺だって……いや、待て。お前ちょくちょく昔の俺を馬鹿にするよな……」

ポイ子は後ろで両手を組み、目を逸らして一言。

「誤解ですよ~」

その行動がいちいち気になるが無視をする。頬を掻きながら春田も視線を外し、

「……別に泊まればいいけどよ……下僕を野宿させられんしな……」

気恥ずかしさが先行し、まともにポイ子の顔が見られない。その恥ずかしがりな行動も春田の素直な気持ちと受け取ったポイ子は嬉しさから顔がほころぶ。

「やったぁ!魔王様だぁい好き!!」

ガバッと抱き着くポイ子。

「おいおい…たく、大げさだなぁ……」

と言いつつ、まんざらでもない春田。

「愛してます~」

と言ってキスまでせがんでくる。この行動には流石の春田も驚きを隠せない。

「うおおっ!!やめろ!殺す気か!!」

身を反って顔から逃げる。ポイ子の毒は人間に有害である。

「過度な接触禁止!」

これを言っておかないと翌日にもコロッと死んでそうだ。

「!?…そんな…私の事嫌いですか?」

「大好きだよ!!」

その言葉は静かな町に木霊した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

処理中です...