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第八話 精算
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「ポイントカードはお持ちですか?」
レジでのいつものやり取り、春田は財布からポイントカードを取り出し、会計を済ませる。
「おつりです。ありがとうございました」
小銭を受け取ると、カバンを肩に提げて出て行く。
「ごちそうさまーー」
それは誰かに対して言ったわけではない。強いて言うなら店全体を指して言った。外食後の軽い挨拶。単なる気持ちだ。
ポイ子は会計の前に春田と分かれた。かなりガッカリしていたが、スッキリもしていた。
『帰ります』
一言で済んだその言葉の裏には、”帰ってきて欲しい”そう思うのとは裏腹に、春田の気持ちを汲んだポイ子の忠誠と決意があった。
ポイ子は魔王亡き後も忠誠を捧げ続け、誰の配下になる事もなく復活を待ってくれていた、正に下僕の中の下僕。
その複雑な心に答えることの出来ない春田は、ポイ子に対し一言「おぅ」の返事しかできなかった。
不安にさせない様、ニコニコ笑って出て行ったポイ子の顔を思い出すだけで胸が苦しい。春田は力の無い不甲斐なさに、一つため息をついて夜空を見上げる。月は誰にも等しくその光を与える。
「魔王様~♪」
ポイ子の声が聞こえてくる。さっき別れたばかりだというのに既に幻聴が聞こえるのかと思う。未練たらたらである。
「魔王様~♪」
間髪入れずに立て続けに聞こえる。余程、惜しい体験だったのだろう。寂しくなるから、考えないようにしなければ……。
「魔王様ーー!!」
耳元で鼓膜を痛めるほどの声を張り上げられる。鼓膜が音に耐えかねキィーンッという音で春田に痛みを訴える。
「ポイ子?え?帰っ……え?」
一瞬何が起こっているのか分からず混乱している。
「どうした?忘れ物か?」
ポイ子は鼻を鳴らしてフフンッと笑顔で横に立つ。
「私もこの世界に残る事にしました!」
胸を張って「どうだ!」といった感じに主張している。意味が分からず春田の頭には?マークが浮かぶ。
「え?帰らないのか?」
「帰りましたよ。で、戻ってきました」
その言葉から察するに、一旦元の世界に帰ってマレフィアに事の経緯を説明し、また戻ってきたとそういうわけだと捉える。
「残るったって……帰る家がないだろう?」
「無いですね」
そういった後、すぐに身を翻す。まるで演劇のように大仰に優雅に。
「魔王様……私は魔王様の下僕でございます。そう!死すら超越して……!」
そこまで言われれば何が言いたいか流石に分かる。
「つまり泊めろと?」
せっかくの演武に水を差されたポイ子は、胸に左手を当て右手を広げた演劇のいちシーンの様な恰好で停止する。
「流石、今の魔王様は察しが良いですね。持って回った言い方で頭を抱えていた時期が懐かしいです」
春田は呆れたように腕を組み、ため息を出しつつ返答する。
「今の流れなら昔の俺だって……いや、待て。お前ちょくちょく昔の俺を馬鹿にするよな……」
ポイ子は後ろで両手を組み、目を逸らして一言。
「誤解ですよ~」
その行動がいちいち気になるが無視をする。頬を掻きながら春田も視線を外し、
「……別に泊まればいいけどよ……下僕を野宿させられんしな……」
気恥ずかしさが先行し、まともにポイ子の顔が見られない。その恥ずかしがりな行動も春田の素直な気持ちと受け取ったポイ子は嬉しさから顔がほころぶ。
「やったぁ!魔王様だぁい好き!!」
ガバッと抱き着くポイ子。
「おいおい…たく、大げさだなぁ……」
と言いつつ、まんざらでもない春田。
「愛してます~」
と言ってキスまでせがんでくる。この行動には流石の春田も驚きを隠せない。
「うおおっ!!やめろ!殺す気か!!」
身を反って顔から逃げる。ポイ子の毒は人間に有害である。
「過度な接触禁止!」
これを言っておかないと翌日にもコロッと死んでそうだ。
「!?…そんな…私の事嫌いですか?」
「大好きだよ!!」
その言葉は静かな町に木霊した。
レジでのいつものやり取り、春田は財布からポイントカードを取り出し、会計を済ませる。
「おつりです。ありがとうございました」
小銭を受け取ると、カバンを肩に提げて出て行く。
「ごちそうさまーー」
それは誰かに対して言ったわけではない。強いて言うなら店全体を指して言った。外食後の軽い挨拶。単なる気持ちだ。
ポイ子は会計の前に春田と分かれた。かなりガッカリしていたが、スッキリもしていた。
『帰ります』
一言で済んだその言葉の裏には、”帰ってきて欲しい”そう思うのとは裏腹に、春田の気持ちを汲んだポイ子の忠誠と決意があった。
ポイ子は魔王亡き後も忠誠を捧げ続け、誰の配下になる事もなく復活を待ってくれていた、正に下僕の中の下僕。
その複雑な心に答えることの出来ない春田は、ポイ子に対し一言「おぅ」の返事しかできなかった。
不安にさせない様、ニコニコ笑って出て行ったポイ子の顔を思い出すだけで胸が苦しい。春田は力の無い不甲斐なさに、一つため息をついて夜空を見上げる。月は誰にも等しくその光を与える。
「魔王様~♪」
ポイ子の声が聞こえてくる。さっき別れたばかりだというのに既に幻聴が聞こえるのかと思う。未練たらたらである。
「魔王様~♪」
間髪入れずに立て続けに聞こえる。余程、惜しい体験だったのだろう。寂しくなるから、考えないようにしなければ……。
「魔王様ーー!!」
耳元で鼓膜を痛めるほどの声を張り上げられる。鼓膜が音に耐えかねキィーンッという音で春田に痛みを訴える。
「ポイ子?え?帰っ……え?」
一瞬何が起こっているのか分からず混乱している。
「どうした?忘れ物か?」
ポイ子は鼻を鳴らしてフフンッと笑顔で横に立つ。
「私もこの世界に残る事にしました!」
胸を張って「どうだ!」といった感じに主張している。意味が分からず春田の頭には?マークが浮かぶ。
「え?帰らないのか?」
「帰りましたよ。で、戻ってきました」
その言葉から察するに、一旦元の世界に帰ってマレフィアに事の経緯を説明し、また戻ってきたとそういうわけだと捉える。
「残るったって……帰る家がないだろう?」
「無いですね」
そういった後、すぐに身を翻す。まるで演劇のように大仰に優雅に。
「魔王様……私は魔王様の下僕でございます。そう!死すら超越して……!」
そこまで言われれば何が言いたいか流石に分かる。
「つまり泊めろと?」
せっかくの演武に水を差されたポイ子は、胸に左手を当て右手を広げた演劇のいちシーンの様な恰好で停止する。
「流石、今の魔王様は察しが良いですね。持って回った言い方で頭を抱えていた時期が懐かしいです」
春田は呆れたように腕を組み、ため息を出しつつ返答する。
「今の流れなら昔の俺だって……いや、待て。お前ちょくちょく昔の俺を馬鹿にするよな……」
ポイ子は後ろで両手を組み、目を逸らして一言。
「誤解ですよ~」
その行動がいちいち気になるが無視をする。頬を掻きながら春田も視線を外し、
「……別に泊まればいいけどよ……下僕を野宿させられんしな……」
気恥ずかしさが先行し、まともにポイ子の顔が見られない。その恥ずかしがりな行動も春田の素直な気持ちと受け取ったポイ子は嬉しさから顔がほころぶ。
「やったぁ!魔王様だぁい好き!!」
ガバッと抱き着くポイ子。
「おいおい…たく、大げさだなぁ……」
と言いつつ、まんざらでもない春田。
「愛してます~」
と言ってキスまでせがんでくる。この行動には流石の春田も驚きを隠せない。
「うおおっ!!やめろ!殺す気か!!」
身を反って顔から逃げる。ポイ子の毒は人間に有害である。
「過度な接触禁止!」
これを言っておかないと翌日にもコロッと死んでそうだ。
「!?…そんな…私の事嫌いですか?」
「大好きだよ!!」
その言葉は静かな町に木霊した。
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