魔王復活!

大好き丸

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第十四話 抗議

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昼休憩―。

購買のパンでお腹を満たした春田は委員長に捕まった。

購買の横に設置してあるベンチで、柱に上手いこと隠れながら昼ご飯を食べた後、教室に戻らず、ボーッとしている所を探しに来た委員長が見つけた。

隠れてやり過ごすはずが、簡単に見つかったのだ。
それもそのはず、もし本格的に隠れたら、昼休憩が終わるまで見つからない事くらい出来ただろうが、それをすると、万が一見つかった時に申し訳が立たない。

例えるなら、掃除用具入れに隠れていて、いざ見つかった時に「あ、現国の先生のとこ行くんだっけ?忘れてたー(棒)」なんて正直、痛すぎる。

「ちょっと時間が経つと忘れっぽくて」という言い訳が立つのは、分かりやすい所でボーッとしてる状況のみだ。

「それじゃ行こっか。先生の所へ」

(駄目だ……逃げられない……)

春田は観念して、委員長の後ろについていく。しばらく歩くと、優雅に歩く女子に目が行った。中庭で出くわしたあの女子だ。

(おいおい、ポイ子の奴……調子に乗って校内を歩き回るなんて大胆な真似を…)

すれ違う事はないが、目が合ったので軽く手を挙げておく。向こうは軽く会釈をして、歩き去った。

「なんか、こういうの照れくさいな……」

「え?何が?」

(しまった!)心で呟いたつもりが言葉に出てしまった。あまりの事に言葉が出ない。照れくさすぎてそっぽを向いてしまう。委員長はそんなコミュ症全開の春田の言動を深読みしてしまう。

「ち……違うからね?これは単なる抗議であって、そういう何というか……いかがわしい事とかじゃないからね?」

突然何を言い出すのかと驚く。恋人関係とか、逢引きとかの解釈にとられたことに気付くが、ここで真っ向から否定すると、委員長が恥ずかしい人になる。

耳まで真っ赤になっている委員長に申し訳が立たず、結局、コミュ症全開であえて黙る事にする。

職員室に着く頃には二人の距離は少しだけ遠くなっていた。

「し……失礼します」

職員室に入り、先生の前にやって来る。

「あら~?虎田さんに春田くん。どうかした~?」

ここで春田は委員長の名前が虎田だと初めて認識する。コホンと咳払いの後、委員長は現国の時間の自分たちの待遇についてどうにかならないものかと一応抗議という形で話を進める。

「う~ん……確かに私も安易にあなたたちに頼ったところは申し訳なく思うけど、私の授業ってみんな寝ちゃうのよね~。一応、あなたたちの成績のプラスになってるけど……それじゃ不服よね?」

「根本的な解決になりません。もちろん先生の授業で寝るつもりはありませんが、偏るのは私たちにもストレスですし、みんなにも真面目に授業受けてほしいです」

中々ハッキリ言う。それに分かりやすい。話の中で、成績のアップ云々の利益をチラつかせても、パッとここまで言えるのは頭のいい証拠だろう。

自分には言えない事だと第三者の視点からふと思った。その空気を感じ取ったのか、先生は春田に投げる。

「ねぇ春田くん、どうしたらいいかな~」

ここで春田に投げたのは先生の逃げの一手である。春田みたいな事なかれ主義は、休憩時間を使わせまいと、さっさと終わらそうとするだろう。うやむやになる事を期待しての事だった。

「どうって……」

そしてこれは的を射ている。春田にとってこの状況は早く終わらせたい事だ。その上、この場に異議申し立てがあってやって来たわけじゃないから、どもるのも仕方のない事。

委員長は春田に送られている視線を遮り、

「それは先生が考える事です」

とバッサリ切った。ぐぬぬっする先生を見て、気の毒に思っていたら

「なんだ?お前ら何してる?」

と黒髪ロングの教師が割って入った。

春田も見知ったこの先生はクラスの担任、黒峰先生。数学担当で男勝り、生徒指導も行う怖い先生だ。その厳しさから、”鬼の黒峰”との異名も聞こえる。

「聞いて下さいよ黒峰先生~。もう私じゃどうしたらいいか分かんなくてぇ~」

かくかくしかじかという文言が入りそうな程、端的に説明した途端。一瞬、憤怒の形相を見せるがたちまち治まり、目を瞑って一瞬考えた後

「分かりました。この件、私が預かります。虎田もそれでいいな?」

と言って掃けていった。

「怖かったね~……でもこれで一安心ね!」

先生との話し合いも一応の決着?を見せ職員室を出た。「さ……先に行くね!」という捨て台詞を残して、委員長はそそくさと教室に戻っていった。

一息ついた後、(やっと終わったわけだが、俺いる?)と思う春田だった。
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