15 / 151
第十四話 抗議
しおりを挟む
昼休憩―。
購買のパンでお腹を満たした春田は委員長に捕まった。
購買の横に設置してあるベンチで、柱に上手いこと隠れながら昼ご飯を食べた後、教室に戻らず、ボーッとしている所を探しに来た委員長が見つけた。
隠れてやり過ごすはずが、簡単に見つかったのだ。
それもそのはず、もし本格的に隠れたら、昼休憩が終わるまで見つからない事くらい出来ただろうが、それをすると、万が一見つかった時に申し訳が立たない。
例えるなら、掃除用具入れに隠れていて、いざ見つかった時に「あ、現国の先生のとこ行くんだっけ?忘れてたー(棒)」なんて正直、痛すぎる。
「ちょっと時間が経つと忘れっぽくて」という言い訳が立つのは、分かりやすい所でボーッとしてる状況のみだ。
「それじゃ行こっか。先生の所へ」
(駄目だ……逃げられない……)
春田は観念して、委員長の後ろについていく。しばらく歩くと、優雅に歩く女子に目が行った。中庭で出くわしたあの女子だ。
(おいおい、ポイ子の奴……調子に乗って校内を歩き回るなんて大胆な真似を…)
すれ違う事はないが、目が合ったので軽く手を挙げておく。向こうは軽く会釈をして、歩き去った。
「なんか、こういうの照れくさいな……」
「え?何が?」
(しまった!)心で呟いたつもりが言葉に出てしまった。あまりの事に言葉が出ない。照れくさすぎてそっぽを向いてしまう。委員長はそんなコミュ症全開の春田の言動を深読みしてしまう。
「ち……違うからね?これは単なる抗議であって、そういう何というか……いかがわしい事とかじゃないからね?」
突然何を言い出すのかと驚く。恋人関係とか、逢引きとかの解釈にとられたことに気付くが、ここで真っ向から否定すると、委員長が恥ずかしい人になる。
耳まで真っ赤になっている委員長に申し訳が立たず、結局、コミュ症全開であえて黙る事にする。
職員室に着く頃には二人の距離は少しだけ遠くなっていた。
「し……失礼します」
職員室に入り、先生の前にやって来る。
「あら~?虎田さんに春田くん。どうかした~?」
ここで春田は委員長の名前が虎田だと初めて認識する。コホンと咳払いの後、委員長は現国の時間の自分たちの待遇についてどうにかならないものかと一応抗議という形で話を進める。
「う~ん……確かに私も安易にあなたたちに頼ったところは申し訳なく思うけど、私の授業ってみんな寝ちゃうのよね~。一応、あなたたちの成績のプラスになってるけど……それじゃ不服よね?」
「根本的な解決になりません。もちろん先生の授業で寝るつもりはありませんが、偏るのは私たちにもストレスですし、みんなにも真面目に授業受けてほしいです」
中々ハッキリ言う。それに分かりやすい。話の中で、成績のアップ云々の利益をチラつかせても、パッとここまで言えるのは頭のいい証拠だろう。
自分には言えない事だと第三者の視点からふと思った。その空気を感じ取ったのか、先生は春田に投げる。
「ねぇ春田くん、どうしたらいいかな~」
ここで春田に投げたのは先生の逃げの一手である。春田みたいな事なかれ主義は、休憩時間を使わせまいと、さっさと終わらそうとするだろう。うやむやになる事を期待しての事だった。
「どうって……」
そしてこれは的を射ている。春田にとってこの状況は早く終わらせたい事だ。その上、この場に異議申し立てがあってやって来たわけじゃないから、どもるのも仕方のない事。
委員長は春田に送られている視線を遮り、
「それは先生が考える事です」
とバッサリ切った。ぐぬぬっする先生を見て、気の毒に思っていたら
「なんだ?お前ら何してる?」
と黒髪ロングの教師が割って入った。
春田も見知ったこの先生はクラスの担任、黒峰先生。数学担当で男勝り、生徒指導も行う怖い先生だ。その厳しさから、”鬼の黒峰”との異名も聞こえる。
「聞いて下さいよ黒峰先生~。もう私じゃどうしたらいいか分かんなくてぇ~」
かくかくしかじかという文言が入りそうな程、端的に説明した途端。一瞬、憤怒の形相を見せるがたちまち治まり、目を瞑って一瞬考えた後
「分かりました。この件、私が預かります。虎田もそれでいいな?」
と言って掃けていった。
「怖かったね~……でもこれで一安心ね!」
先生との話し合いも一応の決着?を見せ職員室を出た。「さ……先に行くね!」という捨て台詞を残して、委員長はそそくさと教室に戻っていった。
一息ついた後、(やっと終わったわけだが、俺いる?)と思う春田だった。
購買のパンでお腹を満たした春田は委員長に捕まった。
購買の横に設置してあるベンチで、柱に上手いこと隠れながら昼ご飯を食べた後、教室に戻らず、ボーッとしている所を探しに来た委員長が見つけた。
隠れてやり過ごすはずが、簡単に見つかったのだ。
それもそのはず、もし本格的に隠れたら、昼休憩が終わるまで見つからない事くらい出来ただろうが、それをすると、万が一見つかった時に申し訳が立たない。
例えるなら、掃除用具入れに隠れていて、いざ見つかった時に「あ、現国の先生のとこ行くんだっけ?忘れてたー(棒)」なんて正直、痛すぎる。
「ちょっと時間が経つと忘れっぽくて」という言い訳が立つのは、分かりやすい所でボーッとしてる状況のみだ。
「それじゃ行こっか。先生の所へ」
(駄目だ……逃げられない……)
春田は観念して、委員長の後ろについていく。しばらく歩くと、優雅に歩く女子に目が行った。中庭で出くわしたあの女子だ。
(おいおい、ポイ子の奴……調子に乗って校内を歩き回るなんて大胆な真似を…)
すれ違う事はないが、目が合ったので軽く手を挙げておく。向こうは軽く会釈をして、歩き去った。
「なんか、こういうの照れくさいな……」
「え?何が?」
(しまった!)心で呟いたつもりが言葉に出てしまった。あまりの事に言葉が出ない。照れくさすぎてそっぽを向いてしまう。委員長はそんなコミュ症全開の春田の言動を深読みしてしまう。
「ち……違うからね?これは単なる抗議であって、そういう何というか……いかがわしい事とかじゃないからね?」
突然何を言い出すのかと驚く。恋人関係とか、逢引きとかの解釈にとられたことに気付くが、ここで真っ向から否定すると、委員長が恥ずかしい人になる。
耳まで真っ赤になっている委員長に申し訳が立たず、結局、コミュ症全開であえて黙る事にする。
職員室に着く頃には二人の距離は少しだけ遠くなっていた。
「し……失礼します」
職員室に入り、先生の前にやって来る。
「あら~?虎田さんに春田くん。どうかした~?」
ここで春田は委員長の名前が虎田だと初めて認識する。コホンと咳払いの後、委員長は現国の時間の自分たちの待遇についてどうにかならないものかと一応抗議という形で話を進める。
「う~ん……確かに私も安易にあなたたちに頼ったところは申し訳なく思うけど、私の授業ってみんな寝ちゃうのよね~。一応、あなたたちの成績のプラスになってるけど……それじゃ不服よね?」
「根本的な解決になりません。もちろん先生の授業で寝るつもりはありませんが、偏るのは私たちにもストレスですし、みんなにも真面目に授業受けてほしいです」
中々ハッキリ言う。それに分かりやすい。話の中で、成績のアップ云々の利益をチラつかせても、パッとここまで言えるのは頭のいい証拠だろう。
自分には言えない事だと第三者の視点からふと思った。その空気を感じ取ったのか、先生は春田に投げる。
「ねぇ春田くん、どうしたらいいかな~」
ここで春田に投げたのは先生の逃げの一手である。春田みたいな事なかれ主義は、休憩時間を使わせまいと、さっさと終わらそうとするだろう。うやむやになる事を期待しての事だった。
「どうって……」
そしてこれは的を射ている。春田にとってこの状況は早く終わらせたい事だ。その上、この場に異議申し立てがあってやって来たわけじゃないから、どもるのも仕方のない事。
委員長は春田に送られている視線を遮り、
「それは先生が考える事です」
とバッサリ切った。ぐぬぬっする先生を見て、気の毒に思っていたら
「なんだ?お前ら何してる?」
と黒髪ロングの教師が割って入った。
春田も見知ったこの先生はクラスの担任、黒峰先生。数学担当で男勝り、生徒指導も行う怖い先生だ。その厳しさから、”鬼の黒峰”との異名も聞こえる。
「聞いて下さいよ黒峰先生~。もう私じゃどうしたらいいか分かんなくてぇ~」
かくかくしかじかという文言が入りそうな程、端的に説明した途端。一瞬、憤怒の形相を見せるがたちまち治まり、目を瞑って一瞬考えた後
「分かりました。この件、私が預かります。虎田もそれでいいな?」
と言って掃けていった。
「怖かったね~……でもこれで一安心ね!」
先生との話し合いも一応の決着?を見せ職員室を出た。「さ……先に行くね!」という捨て台詞を残して、委員長はそそくさと教室に戻っていった。
一息ついた後、(やっと終わったわけだが、俺いる?)と思う春田だった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ?
――――それ、オレなんだわ……。
昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。
そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。
妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる