魔王復活!

大好き丸

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第十六話 不測

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最初に言っておきたいのが、これは俺のせいではない。

「聞いたぞ?お前たち……。現国の時間に寝ているそうだな?」

担任の先生であり、生活指導の先生でもある黒峰が五限目の数学の時間を使って今回の一件を正そうとしている。

誰がリークしたのかと教室内に困惑と緊張が走る。黒峰はビクビクする生徒を鋭い目でギョロギョロと見渡していた。
元から身長が高い黒峰はヒールを履いてさらに大きく見える。その上、剣道の顧問を請け負う彼女は幼少期から剣道を習っているのもあって剣四段を取得している。武道の心得を持ちめっぽう強い。

その凄まじい気迫は眼前に立たれると、喧嘩で鳴らしたヤンキーでもチビる程だ。皆、目を合わせない様に俯いて嵐が過ぎ去るのを待つ。バァン!と教卓をたたく。ビクッとなって皆縮こまる。

「現国の三國先生もお前らの惰弱っぷりに困っている!もし同じことが起こるなら一人ずつ指導する必要がある。今回はこの辺で止めておくが、次は覚悟しろ。分かったな?」

もう一度、教室中を見渡し、無言の肯定が見えた所で教科書を開く。

「うむ。それじゃ教科書を開け、前回の続きからだ」

本来であれば、いい気味だと笑い物にもできただろうが、不本意に起こった事象に関して、恐怖と驚きはしても愉悦を感じることなど無い。人に生まれ変わってしまったことで、心まで人に染まっていると実感する。

最初の苛烈さは何だったのかと思うほどに淡々と授業が進む。しかし、緊張の糸は張り詰めたままである。

春田はあまり関係ないのに対し、一緒に怒られているような気になり、その上、委員長と共にチクった事が後ろめたさを助長する。委員長をチラリと見ると、怒鳴られて当然といった涼しい顔でいる。凄まじい胆力だ。

その調子で授業が半分ほど進んだ頃、突然、緊張の糸が切れる事態が起こる。

ドォンッ!!

「!?」

その音はでかく、地震の様に校内を揺らす。校庭に鳴り響く爆発音。この音に驚かない人間はいない。

黒峰はいの一番に廊下に出て、校庭を覗く。

「な……なんだあれは……」

その状況に、気になった生徒たちは黒峰の手前、恐る恐る廊下に出る。勇気を出して見に行った生徒を皮切りに続々と廊下に出て行く。

「あれって……コスプレか?」「ガタイがすごいな……」「恰好エロくない?」

様々な感想が飛び出している。他のクラスからも野次馬が出る。春田には正直、どうでもよかったが「あれって角か?」という言葉ではじかれるように席から立ち上がる。野次馬をかき分けて、窓に頭をぶつけるほどの勢いで到達する。

「……オーガ?」

この体になって幾らか時間は経過したが、あの見た目だけは忘れない。

190を超すタッパ、赤い肌、立派な二本角、黒の長い髪。
肩幅が広く、筋骨隆々の体、ビキニアーマー。

「ヤシャ……」

なんでここに?など言わない。ポイ子が来たのだ。次が来ない保証など存在しない。春田の隣にいる黒峰はその呟きを聞き、驚きを隠せない。

「お前の関係者か!?」

だが、その声は春田に届いてはいない。野次馬をかき分けて廊下を走り去る。

「ああっ!おいっ春田ぁ!!」

階段に向かって角を曲がった時、その姿を見失った。
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