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第十七話 鬼
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「何なのだ?この世界は……」
この世界に転移した際、既に廃れた寺が目の前に現れた。それが何を意味しているのかヤシャは知らない。小高い山の上にあるここは、別世界との境界線があいまいであり、転移の場所に丁度いい。廃れた寺と言う事もあり、人眼からも遠ざけられる。
小高い山の上から見た町は、自分の想像をはるかに超えた世界であり、この近代的な世界に困惑せざる負えない。一瞬めまいがする。転移により三半規管に少々ダメージが入ったようだ。次元を超えるほどに遠い転移は経験が無かった為、そのせいであると推測する。
よろよろと木に寄りかかる。
「……ここに魔王が?」
バギィッという音と共に寄りかかった木を握りつぶす。
「魔王……ヴァルタゼアァ!」
太股の筋肉が盛り上がり、血管が浮く。力が入っているのが見て取れる。ドォンという音が立っていた地面を掘り返し、その勢いと共にヤシャの巨躯は宙を舞う。山の入り口付近に着地し、着地の衝撃はアスファルトを砕き、ガードレールを曲げる。
ガードレールを足で退けて、道路に出る。走ってくる車を見て、「ん?」という顔で不思議に眺める。
キキィッと急ブレーキで迫ってきた車が止まる。
「何やってんだ!どけろ!!」
乗っているのが人間だと見て、イラっとする。
「誰に物を言っている?ヒューマンごときが……!」
「はぁ?あんたにだよ!何でもいいからどいてくれ!」
ミシィという音が聞こえる。その音はヤシャが歯を食いしばった音だ。手を振り上げてボンネットをたたく。メシィッというかメシャというか、とにかく金属がひしゃげる様な無茶苦茶な音がその車を破壊する。騒いでいた運転手の顔にエアバックが膨らみ視界を遮る。
「ぶわっ!!な……なんだぁ!!」
エアバックから顔を出すと、運転席側にヤシャが立っている。空いた窓におもむろに手を突っ込み、胸ぐらをつかんで運転手の男を引き摺り出す。ヤシャの顔は憤怒に彩られ、決して許しはしないと物語っている。
「誰に、物を言っている?」
「ひっ……す……すいません!すいませーん!!」
相手は160前後の小柄な男故、首が閉まり、足が浮くほど持ち上がっている。
「お前の乗っていたこれはなんだ?」
「え?く……車ぁ……」
「なるほど、これが車か…。マレフィアから聞いたが、速い乗り物らしいな…」
胸ぐらから手を放し、壊した車の後ろに並ぶ列を見る。様々な色と形が目に入る。クラクションが鳴り響き、耳にうるさい。
「なぜ大きな音を出す?耳障りだ」
「ゴホゴホ!な……何故ってあんたが俺の車を壊して進めないから……」
「?……横から通り過ぎるとか、そういう事は出来ないのだな?仕方ない……」
ヤシャは壊したセダンタイプの車を下から凄まじい力で持ち上げる。まるで重機のように簡単に持ち上げるその力は正に化け物。小柄な運転手はその様子にビビッて小便を漏らす。
人のいない山の麓に投げ捨てる。ガシャァアンという無茶苦茶な音が鳴り響き、既に廃車となっていた車がさらに破壊される。
それを見ていた運転手たちはこの世のものとは思えない光景に唖然として見ているしかなかった。
「これでよし。ヒューマン、すぐに降参するくらいなら喧嘩を売る相手は考えろ。自分の力をきちんと知る事から始めるのだな……とはいえ私も非常識だったようだ。とっとと退けるとしよう」
山の向かい側の歩道に悠々と歩いていく鬼。
へたり込んだ小男はしばらく動けなかった。
この世界に転移した際、既に廃れた寺が目の前に現れた。それが何を意味しているのかヤシャは知らない。小高い山の上にあるここは、別世界との境界線があいまいであり、転移の場所に丁度いい。廃れた寺と言う事もあり、人眼からも遠ざけられる。
小高い山の上から見た町は、自分の想像をはるかに超えた世界であり、この近代的な世界に困惑せざる負えない。一瞬めまいがする。転移により三半規管に少々ダメージが入ったようだ。次元を超えるほどに遠い転移は経験が無かった為、そのせいであると推測する。
よろよろと木に寄りかかる。
「……ここに魔王が?」
バギィッという音と共に寄りかかった木を握りつぶす。
「魔王……ヴァルタゼアァ!」
太股の筋肉が盛り上がり、血管が浮く。力が入っているのが見て取れる。ドォンという音が立っていた地面を掘り返し、その勢いと共にヤシャの巨躯は宙を舞う。山の入り口付近に着地し、着地の衝撃はアスファルトを砕き、ガードレールを曲げる。
ガードレールを足で退けて、道路に出る。走ってくる車を見て、「ん?」という顔で不思議に眺める。
キキィッと急ブレーキで迫ってきた車が止まる。
「何やってんだ!どけろ!!」
乗っているのが人間だと見て、イラっとする。
「誰に物を言っている?ヒューマンごときが……!」
「はぁ?あんたにだよ!何でもいいからどいてくれ!」
ミシィという音が聞こえる。その音はヤシャが歯を食いしばった音だ。手を振り上げてボンネットをたたく。メシィッというかメシャというか、とにかく金属がひしゃげる様な無茶苦茶な音がその車を破壊する。騒いでいた運転手の顔にエアバックが膨らみ視界を遮る。
「ぶわっ!!な……なんだぁ!!」
エアバックから顔を出すと、運転席側にヤシャが立っている。空いた窓におもむろに手を突っ込み、胸ぐらをつかんで運転手の男を引き摺り出す。ヤシャの顔は憤怒に彩られ、決して許しはしないと物語っている。
「誰に、物を言っている?」
「ひっ……す……すいません!すいませーん!!」
相手は160前後の小柄な男故、首が閉まり、足が浮くほど持ち上がっている。
「お前の乗っていたこれはなんだ?」
「え?く……車ぁ……」
「なるほど、これが車か…。マレフィアから聞いたが、速い乗り物らしいな…」
胸ぐらから手を放し、壊した車の後ろに並ぶ列を見る。様々な色と形が目に入る。クラクションが鳴り響き、耳にうるさい。
「なぜ大きな音を出す?耳障りだ」
「ゴホゴホ!な……何故ってあんたが俺の車を壊して進めないから……」
「?……横から通り過ぎるとか、そういう事は出来ないのだな?仕方ない……」
ヤシャは壊したセダンタイプの車を下から凄まじい力で持ち上げる。まるで重機のように簡単に持ち上げるその力は正に化け物。小柄な運転手はその様子にビビッて小便を漏らす。
人のいない山の麓に投げ捨てる。ガシャァアンという無茶苦茶な音が鳴り響き、既に廃車となっていた車がさらに破壊される。
それを見ていた運転手たちはこの世のものとは思えない光景に唖然として見ているしかなかった。
「これでよし。ヒューマン、すぐに降参するくらいなら喧嘩を売る相手は考えろ。自分の力をきちんと知る事から始めるのだな……とはいえ私も非常識だったようだ。とっとと退けるとしよう」
山の向かい側の歩道に悠々と歩いていく鬼。
へたり込んだ小男はしばらく動けなかった。
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
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