魔王復活!

大好き丸

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第十九話 喧嘩

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ポイ子はヤシャを発見した。

警官を相手取り危害を加えようとしている。ああなったヤシャは言葉では止められない。何より間に合わない。

ポイ子は即座に酸を飛ばす。

警官からポイ子に狙いが変わり、これで対立の完成だ。

「何の真似だ!!」

アスファルトが悲鳴を上げて抉れる。

「それはこちらのセリフです!マレフィア様に何も聞いてないのですか!?常識なさすぎでしょ!!なんでこう無茶苦茶なんですか!!」

ポイ子は反論の余地を与えない程に捲し立てる。ヤシャはそうでなくとも頭が回らない性格をしている。こうまで連続して声をかけられると混乱して何から答えるか考えてしまう。一瞬、考えた後、真面目に考えるのは馬鹿らしいことに気付く。

「う……うるさいうるさい!何も言うな!お前にとやかく言われる筋合いはない!!」

「あなたが私以外で耳を貸す者がここにいるっていうんですか!!」

ポイ子が指摘するまでもない、ここに対等の存在がいない以上、ポイ子以上の適任者は存在しない。ヤシャは「言われてみれば確かに……」と顎に手を当てて、納得の姿勢を見せる。しかし、その納得はポイ子により引き出されたことを思い出し、赤い顔をさらに高揚させる。

全ての人間がこの二人に注目する。警官すらここでは動く事が出来ない。

ドンッという音が町を揺るがす。アスファルトが空に舞い、天を衝く巨人と突然乱入した帽子の女性は、一瞬にして消える。誰もが捉えることの出来ない速度は人の反射速度を大きく超えていた。ヤシャがポイ子を俊足の突進でこの場から連れ去ったのだ。

「ヤシャ様!!あなたはお帰り下さい!!」

ヤシャに抱えられ、空中に飛びながら、訴え続けるポイ子。

「お前だってここにいる資格なんてないだろ!お前こそ帰れ!!」

「私はあなたと違って変身能力を有しています!つまり私は居ていい!大体その角を隠せずに来るなんて馬鹿なんですかあなたは!!」

自慢の角を馬鹿にされたと感じたヤシャは血管を浮かせながら怒りを滲ませる。

「お前に用はない!」

長い滞空時間。ポイ子を片手で振りかぶる。

「!!……ヤシャ様!?」

「どこかへ飛んでいけぇ!!」

ブォンッという風切り音はポイ子の肉体を遠く、遠く、豆粒ほどの大きさに見えるほど遠くに放り投げられた。

ヤシャは高い建物の上に着地する。
ポイ子はどこに行ったか分からないが、魔王の位置は今の一踏みで大分近づいた。

「全くいつまでもうるさい奴だ……。だが、おかげでかなり近づいた。ポイ子に聞こうと思っていたが、話にならん。自分で探すさ、馬鹿め……」

ヤシャの大腿四頭筋が盛り上がる。少し腰を静め、屈伸の要領でバネの様に一気に飛ぶ。建物の屋上が少しへこみ、ヒビが入るほどの衝撃。ヤシャにこの世界は不釣り合いで、弱すぎて、そして小さすぎる。

感じるのだ。魔王はこの先にいる。

何度か同じように建物を飛び回った時、そこに行きついた。広いグラウンド、それに比例して大きい建物、建物の屋上に着地したかったが、少し距離が足りず、仕方なくグラウンドに降り立つ。

ドォンッという音と共に土ぼこりが立ち、視界を遮る。アスファルトとコンクリートの建物と違って、土の上に降り立ったので、ちょっとした懐かしさを覚えた。山の上からここまで土とは無縁だったのでそう感じただけだが……。

しばらく土の感触を楽しんでいると、魔王の気配がこちらに来ていることに気付く。

「待ちわびたぞ……この時を……」
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