魔王復活!

大好き丸

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第三十一話 担任

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教室に戻ると真っ先に虎田に声をかけられた。

「どうしたの?竹内さんと何か話でも……」

何で気にするのか、すごく心配してる目付きだ。

「なんだ?竹内って何かしたのか?」

「え、いや……」

目をそらして言うべきか悩んでいる顔をしている。虎田が心配をしてまで声をかけるとなると、竹内は多分不良だ。中立を保ちたい委員長という立場にあって、クラスメイトを悪く言うのは信条的に腰が引けると見える。

「昨日会ったんだよ、偶然な。その時の話……かな」

「……そう」

それだけ言うと、席に戻る。結局何だったのか分からずじまいだが、それほど疑問視する事もなく自分の席に戻った。

チャイムの鳴る一分前に担任の黒峰が教壇に立つ。この担任も真面目で誠実であり、熱意ある人物ではあるが、体格に恵まれた、どう見ても怖いという印象しかない。刺々しく男らしい物言いのせいで、その感情をさらに増幅させる。

その為か、この教師が入ってくると教室中がピリッとした空気で張り詰める。まだHRの時間でもないのにみんな黙って神妙に席についている。他の教室の笑い声が聞こえるほどに。

チャイムが鳴ると鳴り終わるまでの間、目を瞑って教壇にもたれかかる。そして鳴り終わると、目をカッと開き、廊下を確認する。黒峰のいつもの習慣だ。それが終わると教壇に戻って出席簿を開く。

いつもの様に名前が呼ばれていく。

春田は名前が呼ばれた時、返事をする奴の顔を盗み見る。(なるほど……こいつはこういう名前か……)フムフムと頷きつつ、ノートに書きだしていく。相沢、入江、井上……。キビキビと活舌よく呼んでいくので聞き取りが楽でいい。

「竹内」

問題の生徒が呼ばれる。すぐに返事がない事をギョロリと見る。視線の先にある空席を確認し、特に何か言う事もなく欠席に印をつける。

何事もなかったように次の生徒の名前を呼び出した。

(マジでサボったよ……勇気あるな不良は……いや蛮勇か?)などと思っていると、「春田!返事をしろ!」と怒鳴られた。「はい!」と条件反射で大声を出して答える。

「ボーっとするな」

と吐き捨てられ、周りで聞いていた生徒は非難するような視線で見てくる。飛び火されたりしたら迷惑だという視線だ。春田は苦々しい顔で姿勢を正した。

それ以降は特に何事もなくHRは過ぎ去り、黒峰が出た後は弛緩した空気が流れる。

「マジこえーわ……」「もっとフレンドリーになれねーのかよ」「三國ちゃんに代わってほしい」など黒峰に対する不満を口々に出している。

とは言えいつもの光景だ。黒峰はいつも気を張っていて、隙がない。

昔、不良グループが調子こいて、黒峰に対し日頃の仕返しにと盗撮に走ったが、黒峰はその全てを恥ずかしげもなく、証拠を提出し、不良グループは退学。

その後、逆切れした不良たちが黒峰に襲い掛かるもあっさり返り討ちに遭い、警察に突き出され御用。その伝説は語り継がれ、教師陣の中では英雄扱いだ。

だからなのか、生徒と黒峰の間には絶壁があるかの如く踏み込めない。悪いのは不良だし、賞賛すべき存在だが、一切隙のない態度は時に、悪より近寄りがたい。

(英雄か……)

元魔王時代。勇者によって滅ぼされた。世界を壊し掌握できる魔王を倒した直後は、さぞ称賛されたのだろうが、最強の力を持った勇者はその後どうなったのだろうか……。

(今の黒峰の様に正義を振りかざし、のけものにされたりなんて……)

と考えた所でそれを否定する。黒峰に同情しても、野望を打ち砕いた勇者に同情の余地などあるわけがない。黒峰と勇者が被っても、同一視なんて絶対しない。もっての外だ。

考えを改め、一限目の用意をし始める春田だった。
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