魔王復活!

大好き丸

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第三十八話 そのころ

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一方その頃、マンションでは激闘が繰り広げられていた。

「うわわ!?そこで回り込むなんて卑怯ですよ!」

「これも技だ!ほらほらどうした?それで終わりか!」

カチカチという音が鳴り響き、ヤシャとポイ子はまるで子供のようにはしゃいでいた。

「良いでしょう……ならこれでどうです!」

その時、テレビから「ドラゴンブロー!」という声が聞こえた。その一撃は天を衝き、デカ物をぶっ飛ばした。

「なっ!バカな……あれだけリードしてたのに…たった一発で……!」

ヤシャはコントローラーを落とし、呆然とテレビを見つめる。暇潰しに始めたテレビゲームはヤシャとポイ子の心を射止め、様々な対戦ゲームで花を咲かせていた。

「やりー!まだ、やりますか?」

ふふんっと鼻を鳴らし、得意気に気取るポイ子。ヤシャも負けていられない。

「ふっ……このゲームではまだ私の方が勝ち越してる。調子にのった所でこの勝利はまぐれにすぎんわ!」

カチカチッと再戦を選択する。ポイ子も負けじと再戦を選択し、今一度戦いが始まった。朝からパズルゲーム、レースゲーム、リズムゲームに格闘ゲームと多岐にわたり、飽きることなくゲームに興じた。

ヤシャが扱う投げキャラが、掴み技からの叩きつけで勝利をもぎ取った頃、急にお腹が音をたてた。グキュルルッと品のない音だが、生理現象には抗えない。

「ぬっ!腹の虫が……久々に鳴ったな……」

勇者によって追いやられた次元の狭間「逢魔」では、欲を満たせぬ代わりに、身体機能が一時的にストップするという効果がある。なので、永らく生理現象に関する全ての事柄が無かったヤシャは、困惑と共に恥ずかしい気持ちで一杯になった。春田の傍で起こらなかったことだけが救いだ。

「あー、確かにもうこんな時間ですもんねー。何か買ってきますよ」

ポイ子はコントローラーを置いて、お金をもって外に出る。「頼む」というヤシャの言葉を背にマンションから出た。

ようやく自由になったポイ子は寂れた寺に向かって歩き出す。途中のコンビニを通りすぎ、ヤシャが踏み抜いたアスファルトの道路を確認する。立ち入り禁止になっていて、作業員が総出で直しているのを尻目に、ポイ子は階段を歩いて登る。

廃れた寺につくと、社の裏に回り込んで、通信用の札を取り出す。額に掲げ、念じると呼び出しを行っている感覚を感じる。

しばらくそのまま念じていると、通信をとられる。

「んー。どしたの?帰る?」

「帰りません。マレフィア様……ヤシャ様を本日引き取っていただけませんか?」

マレフィアは一瞬、間を空けてまた話し始める。

「なんで?」

「魔王様からのお願いです。現在の魔王様はヤシャ様を養えるほど財力は存在しません。魔王様を思うなら、この世界にいない方が良いんです」

「なるほど。ヴァルちゃんがそう言ってるんだね?ヤシャっちには伝えた?」

ポイ子は「まだです……」と申し訳なさそうに答えた。

「そう……もし強行したら、うちは殺されちゃうんよ?うちにそんな度胸はないなぁ……いくらヴァルちゃんの願いでも、こればかりはヤシャっちの気持ちを優先するよ」

マレフィアはお茶を啜り、一服している。

「……魔王様がお戻りいただいた時に、お話させていただくことになってます。……ヤシャ様のお返事次第ですが、とりあえずお伝えします……」

マレフィアはポイ子の言葉に覇気がない事を悟る。既にヤシャの説得を諦めている風でもある。

「もー……そんな落ち込まないでポイ子ン……。うちだって考えたげ……る……あっ!」

マレフィアは何かに気付いたように立ち上がる。

「ど、どうされました?マレフィア様?」

ふっふっふ、と不敵な笑い声が聞こえてくる。

「いい事思いついちゃった!まぁ、これじゃ帰らないかもだけど……」

「え!なんですか?教えてください!」

ポイ子は必死になって食いつく。

「まぁまぁ、落ち着いて。ちゃんと言うから……」

ポイ子は目の前に誰もいないのに、ふんふん興奮しながら頷きつつ聞く。そして、マレフィアから飛んできた言葉に驚き戸惑った。

「えぇ……」
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