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第五十二話 わがまま放題
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6限目は数学ーー。
黒峰の独壇場であり、誰もが手を抜くことの出来ない地獄の時間。しかし、この緊張の只中にあって、だらけることの出来る人物が1人だけ存在する。無論それを黒峰は許していないわけだが……。
「竹内!!ちゃんと聞いているのか!!」
竹内は机に突っ伏して寝ているような姿勢を見せる。
「……聞いてまーす」
その返事は教師を馬鹿にしているとしか思えない。
「それじゃここの問題をお前がやれ!」黒板をバンッと叩いて威圧する。クラスメイトは自分が怒られていないのにそれだけでビビって委縮する。
竹内は顔をあげて、黒板に書かれた公式を見る。目を細めてじっくり見た後、また何もなかったように机に突っ伏した。その際「聞いてましたが分かりませーん」という何ともふざけた返しをしてきた。
「……そうはいかんぞ竹内。サボらないという名目でその席を与えてやったんだ。必ず授業に参加してもらう」
黒峰は頑として譲らぬ姿勢を見せる。
「……パスとかは?」竹内はまた顔をあげて黒峰を直接見る。何かを訴える目をしているが、「ない。例外はなしだ」と冷たい反応。流石の竹内も体を起こして、黒板に歩いていく。
白のチョークを手にし、途中までスラスラ分かったように公式を書いていたが、公式を無視した出鱈目な数式を書いてることに気付くのにクラスメイトは二秒かからなかった。
黒峰に至っては書き始めから気付いた。
「おい、ふざけるなといったはずだが?」
「?……ふざけてません。アタシは分からないなりに何とか形にしようと必死でやってます……間違っているというなら、ここでその間違いを正して下さい」
白いチョークを置いて、手を広げる。「言ったでしょ?分からないって……」竹内は全く動じないといった無表情で黒峰を見ている。黒峰は下瞼をピクピク痙攣させ、額には血管が浮いている。
(殺される……)教室の空気は正にそれだ。いつ手が出て血しぶきが散るのか、固唾を飲んで見守る事になった。
「……もういい、戻れ」
だが、黒峰の判決は寛容だった。冷静に考えれば分かる事だが、教師が生徒を殴るわけにはいかないし、何より大事な授業を、分からないと邪魔をするたった一人のレベルにまで落とすわけにはいかない。補習なりなんなりで、教育を行えばいい。それに……。
「お前、放課後生徒指導室な」
(まぁそうなるわな……)竹内を抜いた教室中、全ての生徒は心を一つにした。「えぇ……」と困惑している竹内。こうならないとでも思っていたのだろうか?
(いやいや、無理があるだろ……)トボトボ席に戻る竹内。「めんどくさ~……」と頬杖を突き、さっきよりはマシな姿勢になる。黒板に書かれた出鱈目な数式は消され、黒板消しを置いた後、ため息をついて一拍置く。
「春田。お前やれ」すぐ後ろの春田が指される。すぐ後ろの席だから順番的には当てられるのも致し方ないと思えるが、この状況は(俺にとばっちりが来たよ……)そうとしか思えなかった。
「はい」
しかし、その判断に逆らわず、すぐさま返答する。とにかく今の空気を変えるためにもさっさと前に出た。
黒板に正しいと思われる数式を書いて、答えを出す。
「……正解だ。戻れ」
内心ホッとして席に戻る。
「春田さぁ……以外に能力高いよね……」
「うっせぇ……前向け」春田は素っ気なく振る舞う。
「おいそこ!私語は慎め!」
………
授業が終わり、そのまま帰りのHRに移った。
「あ~……やだやだ、真面目に放課後早く帰りて~……」
竹内は春田の机に突っ伏す。
「だから前向け。俺まで怒られるだろ……第一、自分のせいじゃん。諦めろ」
「……そうだけどさ~」
ガタガタしながらアピールする。
「ちょっと竹内さん、春田くんが困ってるでしょ。また先生に怒られるよ?」
「ん~……?もうこれ以上はないでしょ……ねぇ、春田が勉強教えてよ。もうそれしかないって」
「なんでそうなるんだよ……」
虎田もうんうん頷いて春田に同調している。
「だって授業や独学じゃついてけないし、分かりやすい解説つきなら出来るよ。そうじゃん?」
「まぁ……竹内には失礼だが、そうだな、その通りだ」
虎田は「え?」と竹内に同調した春田を見る。
「じゃ、教えてよ。いいでしょ~……」
コロコロ春田にじゃれつく。
「……考えとく……」
「えー?」と竹内が仰け反った時に、黒峰がキレた。
「竹内ぃ!春田ぁ!私語は慎めぇ!!」
黒峰の独壇場であり、誰もが手を抜くことの出来ない地獄の時間。しかし、この緊張の只中にあって、だらけることの出来る人物が1人だけ存在する。無論それを黒峰は許していないわけだが……。
「竹内!!ちゃんと聞いているのか!!」
竹内は机に突っ伏して寝ているような姿勢を見せる。
「……聞いてまーす」
その返事は教師を馬鹿にしているとしか思えない。
「それじゃここの問題をお前がやれ!」黒板をバンッと叩いて威圧する。クラスメイトは自分が怒られていないのにそれだけでビビって委縮する。
竹内は顔をあげて、黒板に書かれた公式を見る。目を細めてじっくり見た後、また何もなかったように机に突っ伏した。その際「聞いてましたが分かりませーん」という何ともふざけた返しをしてきた。
「……そうはいかんぞ竹内。サボらないという名目でその席を与えてやったんだ。必ず授業に参加してもらう」
黒峰は頑として譲らぬ姿勢を見せる。
「……パスとかは?」竹内はまた顔をあげて黒峰を直接見る。何かを訴える目をしているが、「ない。例外はなしだ」と冷たい反応。流石の竹内も体を起こして、黒板に歩いていく。
白のチョークを手にし、途中までスラスラ分かったように公式を書いていたが、公式を無視した出鱈目な数式を書いてることに気付くのにクラスメイトは二秒かからなかった。
黒峰に至っては書き始めから気付いた。
「おい、ふざけるなといったはずだが?」
「?……ふざけてません。アタシは分からないなりに何とか形にしようと必死でやってます……間違っているというなら、ここでその間違いを正して下さい」
白いチョークを置いて、手を広げる。「言ったでしょ?分からないって……」竹内は全く動じないといった無表情で黒峰を見ている。黒峰は下瞼をピクピク痙攣させ、額には血管が浮いている。
(殺される……)教室の空気は正にそれだ。いつ手が出て血しぶきが散るのか、固唾を飲んで見守る事になった。
「……もういい、戻れ」
だが、黒峰の判決は寛容だった。冷静に考えれば分かる事だが、教師が生徒を殴るわけにはいかないし、何より大事な授業を、分からないと邪魔をするたった一人のレベルにまで落とすわけにはいかない。補習なりなんなりで、教育を行えばいい。それに……。
「お前、放課後生徒指導室な」
(まぁそうなるわな……)竹内を抜いた教室中、全ての生徒は心を一つにした。「えぇ……」と困惑している竹内。こうならないとでも思っていたのだろうか?
(いやいや、無理があるだろ……)トボトボ席に戻る竹内。「めんどくさ~……」と頬杖を突き、さっきよりはマシな姿勢になる。黒板に書かれた出鱈目な数式は消され、黒板消しを置いた後、ため息をついて一拍置く。
「春田。お前やれ」すぐ後ろの春田が指される。すぐ後ろの席だから順番的には当てられるのも致し方ないと思えるが、この状況は(俺にとばっちりが来たよ……)そうとしか思えなかった。
「はい」
しかし、その判断に逆らわず、すぐさま返答する。とにかく今の空気を変えるためにもさっさと前に出た。
黒板に正しいと思われる数式を書いて、答えを出す。
「……正解だ。戻れ」
内心ホッとして席に戻る。
「春田さぁ……以外に能力高いよね……」
「うっせぇ……前向け」春田は素っ気なく振る舞う。
「おいそこ!私語は慎め!」
………
授業が終わり、そのまま帰りのHRに移った。
「あ~……やだやだ、真面目に放課後早く帰りて~……」
竹内は春田の机に突っ伏す。
「だから前向け。俺まで怒られるだろ……第一、自分のせいじゃん。諦めろ」
「……そうだけどさ~」
ガタガタしながらアピールする。
「ちょっと竹内さん、春田くんが困ってるでしょ。また先生に怒られるよ?」
「ん~……?もうこれ以上はないでしょ……ねぇ、春田が勉強教えてよ。もうそれしかないって」
「なんでそうなるんだよ……」
虎田もうんうん頷いて春田に同調している。
「だって授業や独学じゃついてけないし、分かりやすい解説つきなら出来るよ。そうじゃん?」
「まぁ……竹内には失礼だが、そうだな、その通りだ」
虎田は「え?」と竹内に同調した春田を見る。
「じゃ、教えてよ。いいでしょ~……」
コロコロ春田にじゃれつく。
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「えー?」と竹内が仰け反った時に、黒峰がキレた。
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