魔王復活!

大好き丸

文字の大きさ
53 / 151

第五十二話 わがまま放題

しおりを挟む
6限目は数学ーー。

黒峰の独壇場であり、誰もが手を抜くことの出来ない地獄の時間。しかし、この緊張の只中にあって、だらけることの出来る人物が1人だけ存在する。無論それを黒峰は許していないわけだが……。

「竹内!!ちゃんと聞いているのか!!」

竹内は机に突っ伏して寝ているような姿勢を見せる。

「……聞いてまーす」

その返事は教師を馬鹿にしているとしか思えない。

「それじゃここの問題をお前がやれ!」黒板をバンッと叩いて威圧する。クラスメイトは自分が怒られていないのにそれだけでビビって委縮する。

竹内は顔をあげて、黒板に書かれた公式を見る。目を細めてじっくり見た後、また何もなかったように机に突っ伏した。その際「聞いてましたが分かりませーん」という何ともふざけた返しをしてきた。

「……そうはいかんぞ竹内。サボらないという名目でその席を与えてやったんだ。必ず授業に参加してもらう」

黒峰は頑として譲らぬ姿勢を見せる。

「……パスとかは?」竹内はまた顔をあげて黒峰を直接見る。何かを訴える目をしているが、「ない。例外はなしだ」と冷たい反応。流石の竹内も体を起こして、黒板に歩いていく。
白のチョークを手にし、途中までスラスラ分かったように公式を書いていたが、公式を無視した出鱈目な数式を書いてることに気付くのにクラスメイトは二秒かからなかった。
黒峰に至っては書き始めから気付いた。

「おい、ふざけるなといったはずだが?」

「?……ふざけてません。アタシは分からないなりに何とか形にしようと必死でやってます……間違っているというなら、ここでその間違いを正して下さい」

白いチョークを置いて、手を広げる。「言ったでしょ?分からないって……」竹内は全く動じないといった無表情で黒峰を見ている。黒峰は下瞼をピクピク痙攣させ、額には血管が浮いている。

(殺される……)教室の空気は正にそれだ。いつ手が出て血しぶきが散るのか、固唾を飲んで見守る事になった。

「……もういい、戻れ」

だが、黒峰の判決は寛容だった。冷静に考えれば分かる事だが、教師が生徒を殴るわけにはいかないし、何より大事な授業を、分からないと邪魔をするたった一人のレベルにまで落とすわけにはいかない。補習なりなんなりで、教育を行えばいい。それに……。

「お前、放課後生徒指導室な」

(まぁそうなるわな……)竹内を抜いた教室中、全ての生徒は心を一つにした。「えぇ……」と困惑している竹内。こうならないとでも思っていたのだろうか?
(いやいや、無理があるだろ……)トボトボ席に戻る竹内。「めんどくさ~……」と頬杖を突き、さっきよりはマシな姿勢になる。黒板に書かれた出鱈目な数式は消され、黒板消しを置いた後、ため息をついて一拍置く。

「春田。お前やれ」すぐ後ろの春田が指される。すぐ後ろの席だから順番的には当てられるのも致し方ないと思えるが、この状況は(俺にとばっちりが来たよ……)そうとしか思えなかった。

「はい」

しかし、その判断に逆らわず、すぐさま返答する。とにかく今の空気を変えるためにもさっさと前に出た。
黒板に正しいと思われる数式を書いて、答えを出す。

「……正解だ。戻れ」

内心ホッとして席に戻る。

「春田さぁ……以外に能力高いよね……」

「うっせぇ……前向け」春田は素っ気なく振る舞う。

「おいそこ!私語は慎め!」

………

授業が終わり、そのまま帰りのHRに移った。

「あ~……やだやだ、真面目に放課後早く帰りて~……」

竹内は春田の机に突っ伏す。

「だから前向け。俺まで怒られるだろ……第一、自分のせいじゃん。諦めろ」

「……そうだけどさ~」

ガタガタしながらアピールする。

「ちょっと竹内さん、春田くんが困ってるでしょ。また先生に怒られるよ?」

「ん~……?もうこれ以上はないでしょ……ねぇ、春田が勉強教えてよ。もうそれしかないって」

「なんでそうなるんだよ……」

虎田もうんうん頷いて春田に同調している。

「だって授業や独学じゃついてけないし、分かりやすい解説つきなら出来るよ。そうじゃん?」

「まぁ……竹内には失礼だが、そうだな、その通りだ」

虎田は「え?」と竹内に同調した春田を見る。

「じゃ、教えてよ。いいでしょ~……」

コロコロ春田にじゃれつく。

「……考えとく……」

「えー?」と竹内が仰け反った時に、黒峰がキレた。

「竹内ぃ!春田ぁ!私語は慎めぇ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...