魔王復活!

大好き丸

文字の大きさ
64 / 151

第六十三話 あいつ

しおりを挟む
「そういえばは元気にやってんのかな……」

風呂に入った後、リビングでくつろいでいた時、春田は3人をボヤっと見てふと思い出した。

「あいつ……と申しますと?」

「ほら、いたろ?俺が四天王とか言って困らせてた。名前はなんつったっけ?」

うーんと悩む春田。マレフィアは冷蔵庫から発泡酒を取り出してくる。カシュッという小気味いい音を出して缶を開けた。

「それって~ナルちゃんの事?」

「そいつそいつ。確か、ナルル=エンプレスだったか?」

やんちゃだった魔王時代。ポイ子とヤシャ、そしてマレフィアを含めた大幹部たちを四天王と名付けたかったヴァルタゼアは、もう一人部下を欲しがった。そんな折、手に入れたダークエルフを仮の四天王と位置づけ侍らせていたのだ。

「彼女なら勇者との激突1ケ月前に魔王様が里に帰しましたよね」

「あの不敬な女か。ダークエルフの人質として預かってたような記憶があるが、お前はお前で悪趣味な事をしていたんだな」

今考えてみれば可哀そうな事をしていたと心底思うが、当時は面白がっていた印象しかない。

「最初の内はずっと暗殺を企んでたんだぜ?毒も刃物も鈍器も…魔獣をけしかけてきた事があったな。当時、勇者に殺されるまで無敵だったから全部相手してやってたけどよ。里の長から仰せつかったのか知らないが、けなげに敵意を向てきたのを思い出すぜ……」

「な……彼女が?今度会ったら死ぬ一歩手前まで追い詰めてやりましょう……」

ポイ子の目が暗い影を落とす。

「まぁ待て、ナルルは都合のいい暇つぶしだったから、それなりに満足している。今あったら確実に殺されるからここにいなくて良かったと安堵しているくらいだ」

「それは知りませんでした……彼女とはよく話していたし、親しい間柄だと思っていたのに……」

思った人ではなかったとガッカリしているが、他人とはそんなものである。

「ちょっと聞いてもい~い?都合のいい女って~すっごくエロい響きなんだけど~、何したの~?」

マレフィアはニヤニヤ聞いてくる。丁度いい酒の肴と取ったようだ。

「当然、気になるな」

ヤシャは眉間にちょっと皺が寄っている。

「期待するようなことは何もしてないよ。ただ敵意を向けてくるもんだから、テキトーにあしらったりして気持ちをくじかない様に、大切に大切に、卵を割らない様に接してやったのさ。あいつも頭が良かったから、すぐに皮肉だと分かって、沸騰してたけど、途中から暗殺を諦めちゃったな…俺の死に様が見たかったのか最後まで城に残りたがってたが、面倒だったから里に帰したんだ」

「覚えてます覚えてます。最後は号泣してまで聖也様に縋ってましたね」

「あの時は自爆でもされるんじゃないかと内心ワクワクしたが、別にそんな事も無かったな」

当時の事を思い出し、しみじみ語る。

「つまんな~い」

マレフィアはブーたれる。

「まぁこんなもんだろ。想定の範囲内だな」

ヤシャは何故だか安堵している。

「私は意外でしたね。ヤシャ様の方が逆に危険だと思ってましたし」

「はぁ?何故だ?」

「種族ですかね。力こそすべてと豪語するオーガ族の女王様がただの人間と相対したら、目に見えてますよ。しかもそれが御自身を負かした魔王様の現在の姿とくれば、それはもう危険でしょう」

それを聞いた時、納得する。ヤシャも昔の自分を思えばポイ子の言いたいことが分かる。”逢魔”に追いやられた当初イラついて物に当たり散らすのが日常だった。万が一、魔王の黄泉がえりが目の前で起こり、ここまで雑魚だったら捻り潰していた可能性すらある。

これだけ長いクールタイムがあったからこそ見直す事ができたのだ。
ヤシャは腕を組んで押し黙る。

「だから私的には聖也様に危害を加えないのは、マレフィア様とナルル様のお二人だと思っていました。しかし、その話を聞く限りではナルル様は厳しいですね……」

「二度と会う事はないだろうけどな」

ハハッと軽く笑ってテレビに顔を向ける。バラエティ番組の司会者含め、ひな壇の面子も同じように笑っているのが見える。

「そいつはどうかな~……」

マレフィアは不穏なセリフを吐きながら、発泡酒を傾ける。
聞いていないわけではなかったが、あえて無視をして、お笑い芸人のネタに笑っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...