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第146話 次の日
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朝、ベッドの上で目を覚ます。
明るくなった室内は春田の目覚めを歓迎しているようだ。目覚ましが鳴る前に目が覚めることはしょっちゅうあるが、今日はそんな日と違ってすこぶる調子が良い。
「あー……なんだろ……。久しぶりに体……動かしたからかな……?」
起きたばかりのぼんやりとした口調で、後5分で鳴るはずだった目覚ましのスイッチを押す。今日は学校だし早めに着替えて学校に行こうと決めた。
昨日晩に用意しておいた鞄の中身をチラッとチェックして鞄を玄関に運んだ。
「お?起きたかい。おはよう聖也」
キッチンから顔をひょこっと覗かせて挨拶をするナルル。少し前はヤシャの持ち場みたいだったのに、新しい住人が増えると得意分野に合わせて持ち場が変わるのだなぁとしみじみ思う。
「おう、おはよ。早いなナルル」
洗面所に向かうと景気良くシャカシャカと歯を磨く音が聞こえる。確認するとヤシャが居た。そんなに大きくない洗面所いっぱいにヤシャの筋肉が入っている。
鏡越しに春田を見たヤシャは口に泡を溜めながら口を開く。
「ん、おふぁお(おはよ)。へいあ(聖也)」
「……ヤシャおはよ。ちょっとごめんよー」
春田は合間を縫って歯ブラシと歯みがき粉を取ると歯を磨き始める。ヤシャの横に立つことは出来ないので廊下に立って磨く。
顔も洗ってスッキリした春田はヤシャの座るダイニングテーブルの定位置に着く。特に催促もしてないが、すぐさま目の前に朝食が出された。
美味しそうなハムエッグにシャキシャキのレタスを添えたプレート。焼き目の付いたトーストにお好みでバターを塗れと言いたげな一切れのバターとナイフ。
コーンスープも湯気が立っている。店で出てきそうな朝食プレートだ。反射的に「おいくら?」と言ってしまいそうなほど洗練されている。
「おはよーございまーす!」
陽気な声で現れたポイ子と「おはよ~……」と力なく追従するマレフィア。その後ろからも誰かついてきそうな感じがしたが、そういうことはなくナルルも含めて全員がミチミチとダイニングテーブルの椅子に着席した。
(なんか……狭いな……)
四人掛けのテーブルに五人座る為、椅子が足りないからとマレフィアが魔法で出現させたのだ。狭いと感じて当然だろう。
朝食プレートを胃に放り込み、食器を持って台所に向かう。
「そこに置いとき、後でまとめて洗うからのぅ」
「マジ?頼むわ」
食器をシンクに置いて水に浸けた後、部屋に戻って学校に行く支度を始めた。
制服に着替えて教科書等の用意をしている最中ふと考える。
(昨日の件、大丈夫……だよな……)
勇者と一緒になって暴れてしまった。一応色々気を使ったつもりだが、被害はかなり出ている。
力を失う前に直せるところは魔法で直した。見逃しているところがあればそこは何とか自力でお願いしたい。
(あとあれだ……番号知ってる奴らから無茶苦茶連絡入ってた奴……みんなちゃんと忘れたよな?)
魔王の力は知名度に左右される。となると考えるまでもない、魔王ヴァルタゼアから春田聖也に戻ったということは皆ちゃんと忘れてくれたということ。
マレフィアのパルスジャックと記憶浸透の効果は一定時間だけのものなので、きちんと効果が切れた結果だ。
春田の気にしていることは杞憂だといえる。
「聖也ー、何してる?学校に遅れるぞ?」
「……っと!やべっ!」
深く考え込んでしまった。頭を振って悪い気を散らすと、鞄を提げて玄関にいく。するとポイ子が東高校の制服に着替えて待っていた。
「ちょっ……お前結局ついてくんのかよ」
「え?はい」
まるで当たり前のように肯定する。
「ついてきても困惑されるだけだぞ?もし行き掛けに虎田さんとかにバッタリあったらどう言い訳する気だよ……」
「大丈夫ですよー。正式に編入すれば事は解決ですから」
「はぁ?……えっ!もしかしてマレフィアが?!」
ニコニコと笑うポイ子。皆が見送りの挨拶にやって来たところでマレフィアを問い質す。
「だって~、最近変なのに絡まれて物騒だったもん。学校にはもう話つけてるから~」
「話って……単に魔法でそういうことにしたんだろ?いつの間にそんなことを……」
「昨日聖ちゃんが疲れてうつらうつらしてた時に皆で話し合ってちょちょ~っとね」
魔法とはかくも便利である。
「必要ならわらわもついていくが?」
「これ以上ややこしいのはちょっと……影に入られるとプライベートが無いしな。トイレとか体育の着替えとか……とにかくポイ子が来るなら後は待機しといてくれ」
「うむ、いた仕方なし。ポイ子、何かあればすぐに教えろ。ひとっ飛びで駆け付けるからな」
比喩表現なのだろうが、本当にひとっ飛びで来るから説得力が違う。ポイ子は呑気に「はーい」と返事するが、出来れば遠慮したい。
というよりヤシャを派遣しなければならない状況といえば国と喧嘩する時くらいではないだろうか?
「抜け駆けは許さぬ。わらわも必ず馳せ参じよう」
出来ればヤシャと張り合うくせを治してほしいが、殴り合いに発展しないなら微笑ましいと笑って見過ごそう。
「ほ~ら、皆が主張するからもうこんな時間だよ~。聖ちゃんが学校に遅れたら大変だから静かに見送りましょうね~」
いつまでも話してしまいそうだったから助かる発言だ。
「それじゃ、いってきます」
明るくなった室内は春田の目覚めを歓迎しているようだ。目覚ましが鳴る前に目が覚めることはしょっちゅうあるが、今日はそんな日と違ってすこぶる調子が良い。
「あー……なんだろ……。久しぶりに体……動かしたからかな……?」
起きたばかりのぼんやりとした口調で、後5分で鳴るはずだった目覚ましのスイッチを押す。今日は学校だし早めに着替えて学校に行こうと決めた。
昨日晩に用意しておいた鞄の中身をチラッとチェックして鞄を玄関に運んだ。
「お?起きたかい。おはよう聖也」
キッチンから顔をひょこっと覗かせて挨拶をするナルル。少し前はヤシャの持ち場みたいだったのに、新しい住人が増えると得意分野に合わせて持ち場が変わるのだなぁとしみじみ思う。
「おう、おはよ。早いなナルル」
洗面所に向かうと景気良くシャカシャカと歯を磨く音が聞こえる。確認するとヤシャが居た。そんなに大きくない洗面所いっぱいにヤシャの筋肉が入っている。
鏡越しに春田を見たヤシャは口に泡を溜めながら口を開く。
「ん、おふぁお(おはよ)。へいあ(聖也)」
「……ヤシャおはよ。ちょっとごめんよー」
春田は合間を縫って歯ブラシと歯みがき粉を取ると歯を磨き始める。ヤシャの横に立つことは出来ないので廊下に立って磨く。
顔も洗ってスッキリした春田はヤシャの座るダイニングテーブルの定位置に着く。特に催促もしてないが、すぐさま目の前に朝食が出された。
美味しそうなハムエッグにシャキシャキのレタスを添えたプレート。焼き目の付いたトーストにお好みでバターを塗れと言いたげな一切れのバターとナイフ。
コーンスープも湯気が立っている。店で出てきそうな朝食プレートだ。反射的に「おいくら?」と言ってしまいそうなほど洗練されている。
「おはよーございまーす!」
陽気な声で現れたポイ子と「おはよ~……」と力なく追従するマレフィア。その後ろからも誰かついてきそうな感じがしたが、そういうことはなくナルルも含めて全員がミチミチとダイニングテーブルの椅子に着席した。
(なんか……狭いな……)
四人掛けのテーブルに五人座る為、椅子が足りないからとマレフィアが魔法で出現させたのだ。狭いと感じて当然だろう。
朝食プレートを胃に放り込み、食器を持って台所に向かう。
「そこに置いとき、後でまとめて洗うからのぅ」
「マジ?頼むわ」
食器をシンクに置いて水に浸けた後、部屋に戻って学校に行く支度を始めた。
制服に着替えて教科書等の用意をしている最中ふと考える。
(昨日の件、大丈夫……だよな……)
勇者と一緒になって暴れてしまった。一応色々気を使ったつもりだが、被害はかなり出ている。
力を失う前に直せるところは魔法で直した。見逃しているところがあればそこは何とか自力でお願いしたい。
(あとあれだ……番号知ってる奴らから無茶苦茶連絡入ってた奴……みんなちゃんと忘れたよな?)
魔王の力は知名度に左右される。となると考えるまでもない、魔王ヴァルタゼアから春田聖也に戻ったということは皆ちゃんと忘れてくれたということ。
マレフィアのパルスジャックと記憶浸透の効果は一定時間だけのものなので、きちんと効果が切れた結果だ。
春田の気にしていることは杞憂だといえる。
「聖也ー、何してる?学校に遅れるぞ?」
「……っと!やべっ!」
深く考え込んでしまった。頭を振って悪い気を散らすと、鞄を提げて玄関にいく。するとポイ子が東高校の制服に着替えて待っていた。
「ちょっ……お前結局ついてくんのかよ」
「え?はい」
まるで当たり前のように肯定する。
「ついてきても困惑されるだけだぞ?もし行き掛けに虎田さんとかにバッタリあったらどう言い訳する気だよ……」
「大丈夫ですよー。正式に編入すれば事は解決ですから」
「はぁ?……えっ!もしかしてマレフィアが?!」
ニコニコと笑うポイ子。皆が見送りの挨拶にやって来たところでマレフィアを問い質す。
「だって~、最近変なのに絡まれて物騒だったもん。学校にはもう話つけてるから~」
「話って……単に魔法でそういうことにしたんだろ?いつの間にそんなことを……」
「昨日聖ちゃんが疲れてうつらうつらしてた時に皆で話し合ってちょちょ~っとね」
魔法とはかくも便利である。
「必要ならわらわもついていくが?」
「これ以上ややこしいのはちょっと……影に入られるとプライベートが無いしな。トイレとか体育の着替えとか……とにかくポイ子が来るなら後は待機しといてくれ」
「うむ、いた仕方なし。ポイ子、何かあればすぐに教えろ。ひとっ飛びで駆け付けるからな」
比喩表現なのだろうが、本当にひとっ飛びで来るから説得力が違う。ポイ子は呑気に「はーい」と返事するが、出来れば遠慮したい。
というよりヤシャを派遣しなければならない状況といえば国と喧嘩する時くらいではないだろうか?
「抜け駆けは許さぬ。わらわも必ず馳せ参じよう」
出来ればヤシャと張り合うくせを治してほしいが、殴り合いに発展しないなら微笑ましいと笑って見過ごそう。
「ほ~ら、皆が主張するからもうこんな時間だよ~。聖ちゃんが学校に遅れたら大変だから静かに見送りましょうね~」
いつまでも話してしまいそうだったから助かる発言だ。
「それじゃ、いってきます」
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