一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第三章 勇者

第四話 わがまま

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「ノぅラルフ…ちょいとヨいか?」

丘の端で瓦礫を眺めながら、ゴブリンたちと黄昏ていた。そんな光景を見かねたベルフィアはラルフに耳打ちする。

「何故、わらわ達がこやつらを送ル必要があル?命を助けタだけで良いと思うノはわらわだけか?」

確かにその通りである。

現在、チーム;ルーザーズの身の安全の為、ぺルタルク丘陵を目指して旅をしているのに対し、何故、他の連中の事まで考える必要があるのか?

単なる休憩場所として、中立国に寄っただけなのにその場所の問題を勝手に抱えるのは、チーム全体に大きなストレスが溜まる事くらい推して知るべしである。

「おいおい、ベルフィア…考えてもみろよ。ここで起こった出来事が、俺たちに関係してないと断言できるか?俺たちは元々、追われる身だ。もし俺らを狙ったって事なら相手を知る必要がある。こいつは単なる人助けじゃないんだ」

「何の話?」

ミーシャはコソコソ話す二人に近寄る。

「ざっくり言うと、ゴブリンを襲った敵が、俺たちと関係しているか、調査の為にキングに会いに行こうって。そういう事」

しくしく泣いているゴブリンたちをチラリと見て、ラルフに視線を戻す。

「言葉喋れないもんね…」

ラルフの言いたい事は、何となく理解した。
が、横道逸れてまで聞きに行くほどの事かとベルフィアは思った。追いつかれない様に目的地に直行すればいいだけである。

「こんな所で足止めをくらうなど、時間ノ無駄じゃ。ミーシャ様、わらわは進むべきとここで進言いタします」

ベルフィアの考えはあくまで先に進み、他は捨ておくべきと判断する。

賢い判断だ。単に放浪しているだけなら首を突っ込んでも、暇つぶし程度に感じるが命の危機が間近にあるなら、他人より自分を優先させるのが普通だ。

まして、ゴブリンの護衛を買って出るなど言語道断。万が一は自分たちも危ない。
「自分も守れないのに、他人を守れるわけない」という通説は偏った意見ではなく、常識なのだ。

「そりゃ、お前の意見はもっともだけどさ…」

そしてラルフの意見もまた無視できない問題だ。
この所業が魔族だろうがヒューマンだろうがもし、今回の件がラルフたちを狙ったのなら先回りされている事にもなりかねない。目的地がバレているなら、目的地を変える必要も出てくるというものだ。

ベルフィアとラルフの話は平行線となった。
まっすぐ目的地に行くか、寄り道をするか。

こうなってしまえばミーシャがどっちにするかで全てが決まる。

「ラルフ、今回はベルフィアの方が正しいよ。私たちはぺルタルク丘陵を目指して旅してるんだよ?ゴブリンたちの命を助けたし、これ以上は過剰なんじゃないかな?」

これに関してはベルフィアに軍配が上がる。
目的を見失うわけにはいかないし、何より時間が惜しい。それにラルフの意見は単なる空論であり、あくまでも”もし”の範疇から抜け出る事はない。

ここでラルフのとる行動は二つに一つ。
説得し、是が非でもゴブリンの護衛をお願いするか諦めて先を急ぐか。しかし、前者は既に結論が出ている。もう諦めるしかないのか…。

その時、ゴブリンの視線に気づく。
その目は助けてほしいと懇願する弱者の目だった。

ラルフは違和感を感じた。ゴブリンはある時を境に強靭に進化を遂げた戦士である。庇護を求める弱いゴブリンは戦士階級ではないと言う事だろう。見た目から判別しづらいが、女性の可能性がある。

「…こいつら非戦闘員だ」

ラルフはボソリと、だがハッキリと言う。
ベルフィアとミーシャはその言葉に二人でチラリと視線を交わす。

「「だから?」」

声がハモる。

「こいつらを置き去りにすれば二日と持たないぜ?果たしてそれは命を救ったと言えるのか?」

ベルフィアは腕を組んでラルフを見やる。

「それは屁理屈ではないか。わらわが救ワなければ瓦礫に埋もれて死んでもうタ可能性があル、だとすルなら既に救っておルじゃろ?」

「…まぁ…な」

その通りだ。ベルフィアが、一々正論を言う。
ラルフは出来れば助けたい。ふらりと立ち寄ったこの丘のホブゴブリンに良くしてもらったから、何らかの恩返しがしたいのだ。

しかし、ラルフ単体では体格の大きさや、敏捷性で魔獣に負ける可能性の方が大きい。

一人なら逃げに徹するが、他人を守りながらとなれば話は全く別。ラルフは真っ向から戦う戦士タイプではなく、戦う仲間を補佐する支援タイプなのだ。

出来れば強い二人にはついてきて欲しいが、無理強いは出来ないのも分かる上、逆らって機嫌を悪くさせるのも本望ではない。

ラルフをじっと見ていたミーシャはふっと笑って優しく語り掛ける。

「ラルフ。あなたはどうしたいの?」

その声はラルフの気持ちをほだした。

「俺は…出来るなら、送りたい…」

ベルフィアはラルフのわがままを呆れながら眺める。

「じゃから…」

「いいよ。いきましょう」

ビックリしてミーシャを見やる。

「ミーシャ様!?し、しかし…」

「いいの。私だってわがままでついていってるし今回はラルフの気持ちを汲んで上げましょ」

「いや…それは…」

本人がそういうなら、ベルフィアも文句は言えない。せっかくミーシャから選んでもらったのに…と言う気持ちがベルフィアの機嫌を悪くさせる。

ブーたれるベルフィアには悪いが、これには感謝しかない。

「ありがとう。ミーシャ」
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