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第十章 虚空
第十四話 新たな目的地
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獣王から話を聞いたアロンツォとナタリアは、腕を組んで考え始めた。
「行くか……行かざるべきか……」
「アンジェラ様を置いて行くわけにはいかないわ。行くとしてもどちらか一方でないと……」
空王がラルフたちに人質にされている様な状況を放置していくことは出来ない。それには空王も賛成と言いたげに頷いている。
ルールー宛の書状の中身が「戦うからイルレアンに集合」程度の文章だっただけに、何を想定しているのか、戦力の規模など読み取れない部分が多い。果たして白の騎士団全員で掛かることだろうか?
「ふむ……ガノンが個人的に召集を掛けたのは怨恨の可能性がある。今回は無視するのも選択肢の一つよ」
居住区”ジュード”とオークルド間の交渉ごとやカサブリア強襲時と同じく全員ではなくても、ある程度揃ったから作戦決行というのはよくある話だ。アロンツォの見立て通りであるなら、最悪でもイルレアンにいるゼアルと二人で戦いに出ることは大いにあり得る。
「え?あ、そんな風に断わるのアリなのか?つーことは今までの作戦も適材適所じゃなかったってことかよ」
ラルフは素直に驚く。召集があればどこでも赴くのが人類の救世主たる所以の一つであると勝手に考えていたので、思ってもみなかった答えに勝手に失望していた。
「何を言う、もちろん適材適所も兼ねての召集よ。ただ、自国が危険な状態だったり、単純に上層部の許可が下りないことがままある。政治関連であえて送らない場合など理由は様々である」
「ちょっとロン。曝け出しすぎよ。ラルフも、これは白の騎士団の話よ?あなたに関係がないのだから、これ以上は口出ししないで」
ナタリアは話に入ってきたラルフを突き放す。
「まぁそう言うなよ。イルレアンまで飛んでいくのか?」
「当然。それ以外に移動方法なんて無いでしょ。……まだ行くとも決めてないけど……」
フンッと鼻を鳴らす。
「面白そうだからついていきたいところだが……要塞は移動遅いし、陸からは論外。とてもじゃないがみんなが集まって作戦を決行するまでには間に合いそうに無いよな」
「とうぜ……いや、なんでついて行けると思ったの?もしついて来られる能力があってもお断りだけど……」
ナタリアは信じられないといった顔でラルフに懐疑的な目を向ける。心底嫌そうな顔に少し傷つきながら言い訳がましく口を開いた。
「だ、だって、もしかしたら見たことない面子に会えるかもしれないだろ?男の子の憧れって奴だ」
「じゃあいってみる?イルレアンに」
いつからそこにいたのか、ミーシャが横入りしてきた。
ホルス島で吊って飛んでもらった様に、またはアルルの魔障壁を用いて飛ばしてもらった時の様に、ミーシャなら可能だ。この兄妹に置いて行かれることなく、むしろ二人を置いていけるほど速い。彼女が一緒に来てくれるなら何も心配ない。
「待った。ミーシャは連れて行けない。と言うかベルフィアもエレノアもティアマトもデュラハンも駄目だ。行こうとしてるのはヒューマンの国だぞ?魔族が入り込めば面倒なことになる」
「えーっ……一緒に行きたい!一緒に行きたい!」
ミーシャが駄々をこね始めた。こうなると手が付けられない。ラルフが諦める方向で思考を持っていくと、ポケットに入れていたアクセサリー型の通信機が『ラルフさーん』と起動した。取り出すと、内側から光り輝いて主張している。
その様子に目の前で見ていた空王は渋い顔をした。あの時の苦い思い出がまるで昨日のことの様に記憶から引っ張り出されたのだろう。
『話は聞かせてもらった。イルレアンは儂の領分。移動から侵入経路まで何でもござれじゃ』
「そういえばアスロンさんはイルレアン出身だったか。……こりゃ大船に乗ったつもりでいるかな?」
ラルフはニヤリと笑う。クリムゾンテールでの交渉ごとが終わった後なので、後はウィー次第である。その間の暇つぶしに丁度良い。まさしく渡りに船だった。
「俺も参加したいです」
ブレイドが挙手する。アスロンと同じく、父親であるブレイブの出身国であるイルレアンにはいずれ行きたいと思っていた。「あ、じゃあ私も」とアルルとアンノウンが同時くらいに挙手した。
見た目ヒューマンのこの三人ならイルレアンに侵入しても目立つことはない。ミーシャも手を挙げていた。
「だからミーシャはダメだって。まず目でバレるんだから……」
魔族見分け方は大きく分けて二つ。人間とは決定的に違う外見、外見で分からなければ目を確認すること。
外見が人間ぽくっても縦長の瞳孔を見ればそれが魔族の証明である。
「サングラスとかないの?」
アンノウンは頑なに否定するラルフを見ながら提案する。その言葉にミーシャが活気付く。
「そうっ!目さえ隠してしまえば何とでもなるでしょ?初めて会った時のことを思い出してラルフ。ラルフは私をダークエルフと間違えたんだよ?」
「え?あ、えっと……それはだな……」
「はいっラルフの負け。サングラスの一つや二つ私が何とかするね」
アンノウンは嬉しそうに笑いながらくつろぎ始めた。
「……まぁいいや。結局重要なのは移動方法だよな」
ちらっとネックレスに目を向けると、アスロンがふふっと笑った。
「転移魔法じゃ。アロンツォさんにナタリアさん、良かったら共用せんか?労力いらずで、あっと言う間じゃぞ?」
「だってよ」
アロンツォとナタリアは目をパチクリさせながら、互いに顔を見合った。二人の内、どちらが行くかは未だ決めかねているものの……
「一先ず、よろしく頼む」
「行くか……行かざるべきか……」
「アンジェラ様を置いて行くわけにはいかないわ。行くとしてもどちらか一方でないと……」
空王がラルフたちに人質にされている様な状況を放置していくことは出来ない。それには空王も賛成と言いたげに頷いている。
ルールー宛の書状の中身が「戦うからイルレアンに集合」程度の文章だっただけに、何を想定しているのか、戦力の規模など読み取れない部分が多い。果たして白の騎士団全員で掛かることだろうか?
「ふむ……ガノンが個人的に召集を掛けたのは怨恨の可能性がある。今回は無視するのも選択肢の一つよ」
居住区”ジュード”とオークルド間の交渉ごとやカサブリア強襲時と同じく全員ではなくても、ある程度揃ったから作戦決行というのはよくある話だ。アロンツォの見立て通りであるなら、最悪でもイルレアンにいるゼアルと二人で戦いに出ることは大いにあり得る。
「え?あ、そんな風に断わるのアリなのか?つーことは今までの作戦も適材適所じゃなかったってことかよ」
ラルフは素直に驚く。召集があればどこでも赴くのが人類の救世主たる所以の一つであると勝手に考えていたので、思ってもみなかった答えに勝手に失望していた。
「何を言う、もちろん適材適所も兼ねての召集よ。ただ、自国が危険な状態だったり、単純に上層部の許可が下りないことがままある。政治関連であえて送らない場合など理由は様々である」
「ちょっとロン。曝け出しすぎよ。ラルフも、これは白の騎士団の話よ?あなたに関係がないのだから、これ以上は口出ししないで」
ナタリアは話に入ってきたラルフを突き放す。
「まぁそう言うなよ。イルレアンまで飛んでいくのか?」
「当然。それ以外に移動方法なんて無いでしょ。……まだ行くとも決めてないけど……」
フンッと鼻を鳴らす。
「面白そうだからついていきたいところだが……要塞は移動遅いし、陸からは論外。とてもじゃないがみんなが集まって作戦を決行するまでには間に合いそうに無いよな」
「とうぜ……いや、なんでついて行けると思ったの?もしついて来られる能力があってもお断りだけど……」
ナタリアは信じられないといった顔でラルフに懐疑的な目を向ける。心底嫌そうな顔に少し傷つきながら言い訳がましく口を開いた。
「だ、だって、もしかしたら見たことない面子に会えるかもしれないだろ?男の子の憧れって奴だ」
「じゃあいってみる?イルレアンに」
いつからそこにいたのか、ミーシャが横入りしてきた。
ホルス島で吊って飛んでもらった様に、またはアルルの魔障壁を用いて飛ばしてもらった時の様に、ミーシャなら可能だ。この兄妹に置いて行かれることなく、むしろ二人を置いていけるほど速い。彼女が一緒に来てくれるなら何も心配ない。
「待った。ミーシャは連れて行けない。と言うかベルフィアもエレノアもティアマトもデュラハンも駄目だ。行こうとしてるのはヒューマンの国だぞ?魔族が入り込めば面倒なことになる」
「えーっ……一緒に行きたい!一緒に行きたい!」
ミーシャが駄々をこね始めた。こうなると手が付けられない。ラルフが諦める方向で思考を持っていくと、ポケットに入れていたアクセサリー型の通信機が『ラルフさーん』と起動した。取り出すと、内側から光り輝いて主張している。
その様子に目の前で見ていた空王は渋い顔をした。あの時の苦い思い出がまるで昨日のことの様に記憶から引っ張り出されたのだろう。
『話は聞かせてもらった。イルレアンは儂の領分。移動から侵入経路まで何でもござれじゃ』
「そういえばアスロンさんはイルレアン出身だったか。……こりゃ大船に乗ったつもりでいるかな?」
ラルフはニヤリと笑う。クリムゾンテールでの交渉ごとが終わった後なので、後はウィー次第である。その間の暇つぶしに丁度良い。まさしく渡りに船だった。
「俺も参加したいです」
ブレイドが挙手する。アスロンと同じく、父親であるブレイブの出身国であるイルレアンにはいずれ行きたいと思っていた。「あ、じゃあ私も」とアルルとアンノウンが同時くらいに挙手した。
見た目ヒューマンのこの三人ならイルレアンに侵入しても目立つことはない。ミーシャも手を挙げていた。
「だからミーシャはダメだって。まず目でバレるんだから……」
魔族見分け方は大きく分けて二つ。人間とは決定的に違う外見、外見で分からなければ目を確認すること。
外見が人間ぽくっても縦長の瞳孔を見ればそれが魔族の証明である。
「サングラスとかないの?」
アンノウンは頑なに否定するラルフを見ながら提案する。その言葉にミーシャが活気付く。
「そうっ!目さえ隠してしまえば何とでもなるでしょ?初めて会った時のことを思い出してラルフ。ラルフは私をダークエルフと間違えたんだよ?」
「え?あ、えっと……それはだな……」
「はいっラルフの負け。サングラスの一つや二つ私が何とかするね」
アンノウンは嬉しそうに笑いながらくつろぎ始めた。
「……まぁいいや。結局重要なのは移動方法だよな」
ちらっとネックレスに目を向けると、アスロンがふふっと笑った。
「転移魔法じゃ。アロンツォさんにナタリアさん、良かったら共用せんか?労力いらずで、あっと言う間じゃぞ?」
「だってよ」
アロンツォとナタリアは目をパチクリさせながら、互いに顔を見合った。二人の内、どちらが行くかは未だ決めかねているものの……
「一先ず、よろしく頼む」
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