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第十二章 協議
第20.5話 神々の言い争い
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『何だこの体たらくは……』
古代種同士で争う姿を見て呆れるアトム。
『第一に何故あの獣を連れてきた?ケルベロスは奴の創造物だということを考えればこちらの敵になり得るだろうに』
『知らないにゃー、バルカン辺りが全部集めようっていったにゃ。文句ならそっちに言って欲しいにゃ』
アルテミスは自身に責任は無いと言い逃れようとする。
『貴様らが勝手につけた名を私が把握していると思っているのか?誰が誰だか分かるわけがないだろう……いや、違う。誰が誰でも同じことだ。この事態を引き起こした責任の所在は貴様らにある。事態を収拾しろ』
『ムチャクチャ偉そうだにゃっ!元を正せばサトリとアトムのいざこざから始まった問題にゃのに、にゃんでうちがここまで言われなきゃならないにゃっ!!責任の所在を問うにゃら、まずそっちが事態を収拾するべきにゃよ!!こっちは尻拭いを買って出てやってるにゃ。感謝すべきにゃ』
アトムの言い分に憤慨したアルテミスは殊更に捲したてる。アトムも思うところはあったが、すぐ言いくるめようとするアルテミスの悪いクセを見抜いていたため、譲歩するつもりなく腕を組む。
『……冷静になれ、全てはサトリの暴走から始まったこと。本来我々には些かも咎はない。万が一にも非があるとするならば、サトリを野放しにしたことに他ならない。サトリを懲らしめてこそ贖えると、そうは思わないか?』
『む……確かに……そうだにゃっ!サトリが悪い!』
責任の押し付け合いは得てしてこのように終息する。
『そろそろあの子のイタズラにも飽きてきたところにゃ。遊びは散らかしたオモチャの片付けまでがセットだということを教えてやるにゃ……』
『その意気だアルテミス』
その様子を側から見ていたイミーナは怪訝な顔で呟く。
「……地上に問題を持ち込まずに神域で勝手にやりなさいよ……」
『聞こえたぞイミーナ。貴様は黙っていろ』
その瞬間、イミーナの口はキュッと真一文字に結ばれた。口を何とか開けられないかと右手で触ってみるが、ビクともしないので諦めて手を下ろした。
「しかしアルテミス様。どうやってそれを為そうとしているのでしょう?サトリ様と呼ばれる方は何処に?」
『サトリならラルフの中にこもっているにゃ。アシュタロトが一瞬上に戻った時に言ってた』
『うむ。そのせいで我が能力も効果を発揮しなかった。引きずり出すか、ラルフを殺すかの二択』
『生かす必要はないにゃ。ラルフには退場してもらって、ゆっくりと話し合うにゃ』
『それは良い。今度こそ引導を渡してやる』
先ほどまでの噛み合わない空気は鳴りを潜める。今や肩を組んで小躍りしそうなほど、ふたりの間の空気は穏やかになっている。共通の敵を認識すれば、いがみ合っていても得てして仲良くなるものだ。
(イミーナの言う通りですね。さっさと天に戻ってしまえば良いのですが……)
碌な神に合わないからこそ敬う気持ちも忘れる。
神とは物事に関わることなく静観し、意味深にそこに在り続けることが信仰心を生むと蒼玉はつくづく思う。降りてきて神秘を見せつけるのは良いが、ベラベラと喋って神格を落とすのは間違っている。せめてこれ以上の醜態を晒さぬよう切に願うが、相手は神。神頼みなどふたりの前には指先の逆剥けよりも関心がない。
やりたい放題とまではいかないが、面倒なパターンにはまったのだけは事実だ。
「……こうなれば何も起きないことを願うばかり……」
『ん?にゃんて?』
「何でもございません。何かお考えがあるのであれば拝見させていただければ光栄でございます」
『ふふんっ!うちが何とかするから見ててっ!』
不安しか残らぬ自信。蒼玉は不安を表に出すことなく、笑顔で耐え忍んだ。
古代種同士で争う姿を見て呆れるアトム。
『第一に何故あの獣を連れてきた?ケルベロスは奴の創造物だということを考えればこちらの敵になり得るだろうに』
『知らないにゃー、バルカン辺りが全部集めようっていったにゃ。文句ならそっちに言って欲しいにゃ』
アルテミスは自身に責任は無いと言い逃れようとする。
『貴様らが勝手につけた名を私が把握していると思っているのか?誰が誰だか分かるわけがないだろう……いや、違う。誰が誰でも同じことだ。この事態を引き起こした責任の所在は貴様らにある。事態を収拾しろ』
『ムチャクチャ偉そうだにゃっ!元を正せばサトリとアトムのいざこざから始まった問題にゃのに、にゃんでうちがここまで言われなきゃならないにゃっ!!責任の所在を問うにゃら、まずそっちが事態を収拾するべきにゃよ!!こっちは尻拭いを買って出てやってるにゃ。感謝すべきにゃ』
アトムの言い分に憤慨したアルテミスは殊更に捲したてる。アトムも思うところはあったが、すぐ言いくるめようとするアルテミスの悪いクセを見抜いていたため、譲歩するつもりなく腕を組む。
『……冷静になれ、全てはサトリの暴走から始まったこと。本来我々には些かも咎はない。万が一にも非があるとするならば、サトリを野放しにしたことに他ならない。サトリを懲らしめてこそ贖えると、そうは思わないか?』
『む……確かに……そうだにゃっ!サトリが悪い!』
責任の押し付け合いは得てしてこのように終息する。
『そろそろあの子のイタズラにも飽きてきたところにゃ。遊びは散らかしたオモチャの片付けまでがセットだということを教えてやるにゃ……』
『その意気だアルテミス』
その様子を側から見ていたイミーナは怪訝な顔で呟く。
「……地上に問題を持ち込まずに神域で勝手にやりなさいよ……」
『聞こえたぞイミーナ。貴様は黙っていろ』
その瞬間、イミーナの口はキュッと真一文字に結ばれた。口を何とか開けられないかと右手で触ってみるが、ビクともしないので諦めて手を下ろした。
「しかしアルテミス様。どうやってそれを為そうとしているのでしょう?サトリ様と呼ばれる方は何処に?」
『サトリならラルフの中にこもっているにゃ。アシュタロトが一瞬上に戻った時に言ってた』
『うむ。そのせいで我が能力も効果を発揮しなかった。引きずり出すか、ラルフを殺すかの二択』
『生かす必要はないにゃ。ラルフには退場してもらって、ゆっくりと話し合うにゃ』
『それは良い。今度こそ引導を渡してやる』
先ほどまでの噛み合わない空気は鳴りを潜める。今や肩を組んで小躍りしそうなほど、ふたりの間の空気は穏やかになっている。共通の敵を認識すれば、いがみ合っていても得てして仲良くなるものだ。
(イミーナの言う通りですね。さっさと天に戻ってしまえば良いのですが……)
碌な神に合わないからこそ敬う気持ちも忘れる。
神とは物事に関わることなく静観し、意味深にそこに在り続けることが信仰心を生むと蒼玉はつくづく思う。降りてきて神秘を見せつけるのは良いが、ベラベラと喋って神格を落とすのは間違っている。せめてこれ以上の醜態を晒さぬよう切に願うが、相手は神。神頼みなどふたりの前には指先の逆剥けよりも関心がない。
やりたい放題とまではいかないが、面倒なパターンにはまったのだけは事実だ。
「……こうなれば何も起きないことを願うばかり……」
『ん?にゃんて?』
「何でもございません。何かお考えがあるのであれば拝見させていただければ光栄でございます」
『ふふんっ!うちが何とかするから見ててっ!』
不安しか残らぬ自信。蒼玉は不安を表に出すことなく、笑顔で耐え忍んだ。
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