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第十五章 終焉
第三十九話 攻略の糸口
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イリヤは自らが生み出した黒いタコと共に、波間に揺られてリラックスしていた。
『うふふ……なんて心地良いのでしょう。海に揺られて黒い闇に抱かれる。愚かな魔族は私の中。後は矮小なヒューマンを待つだけ……』
うっとりとした表情を浮かべて天を仰ぐ。
『ああ、この気持ち……あの魔族が原因なのですね。ああ……ラルフ様。早く貴方にお逢いしとうございます』
闇は全てを飲み込み、やがて一つとなる。イリヤの中に眠る多くの命は今や全てイリヤの物。
*
「えぇ……マジか……」
アルルから聞いた話は驚愕を通り越して最早呆れる領域だった。
ミーシャが捕まってからすぐにイミーナが戻り、事の経緯を説明。熱り立ったベルフィアとそれを諫めるブレイドがエレノアを引き連れてもう一度海へ。帰ってきたのはベルフィアだった。
ブレイドが闇に捕らわれたのを見過ごせなかったエレノアが助けに行って一緒に飲まれてしまった。ベルフィアはあわや取り込まれる寸前に転移魔法によってギリギリ難を逃れた。
今度はアンノウンと共にリベンジマッチを仕掛けるも、攻略どころか糸口すら見つからずにオメオメと戻ってきたらしい。
悲しむアルルの顔を見ていられなかったベルフィアは、部屋に籠もったとのこと。
「参ったよ。召喚獣を幾ら出しても全部持ってかれるんだ。容量の限界以上入れたらパンクさせられるかもって思ったけど……無理だったよ」
アンノウンもお手上げ状態だ。当時のことを思い出してため息をついている。
『思い切ったことをしたようだな。それではイリヤ相手に餌をやったようなものだ』
バルカンは鼻を鳴らして腕を組んだ。アルルたちはそこでようやくバルカンの存在に目がいく。ラルフとずっと一緒だったはずだが、影が薄すぎたのとミーシャたちが捕まった現状のせいで気づくのに少々時間がかかった。
「……それで、この方は?」
「ああ、神だよ。それよりもイミーナと黒影だ。お前ら自分の主人はちゃんと制御しなきゃダメじゃねぇか」
突然話を振られてイミーナは口をへの字に曲げ、黒影はしゅんっとしたように俯き「面目次第もない」と反省した。
「主人を制御なんてよくも言いやがりましたね?私は血の契約を交わしているのですよ?逆らえるはずがないでしょうに。私の開発した朱い槍ですらこの呪縛を解くことは出来なかったのですから」
「試したのかよ……相変わらず抜け目のない奴だな」
「褒めるより先にすることがあるでしょう?全く……」
「いや褒めてねぇわ。……でもまぁそれもそうだ。イリヤを何とかしてミーシャたちを助け出さねぇと……何か良い手は無いか?」
ラルフの縋るような目に誰も反応出来ない。それも当然のこと。良い手があれば既に使用している。
「なぁ、バルカンさん」
最終手段とも言える神への質問。闇の神と回帰の神。それぞれ役割が違うが、神のことを知れるのは神だけ。
『その前に少し聞きたいんだが、皆あまりに慣れ過ぎではないか?神だよの一言で紹介が終わるなど、普段どのような会話をしているのか気になってくるんだが……』
「ん?平凡そのものだよ。ただ少しだけ神との遭遇率が高いだけのな」
『なるほど?そういうことにしておこう。……さて、イリヤだったな。あれを攻略したいならやるべきことは一つ。光を浴びせることだ』
「もう浴びせタワ。強力な光をノぅ」
いつから居たのか壁にもたれかかるようにベルフィアが立っていた。彼女曰く、物理がダメならせめて照らしてやるという思い付きからだった。結局どうにもならず、どうしようも出来なかった。
『では単純に光量が足りないのだ。そこに黒影という良い例があるではないか。シャドーアイを閉じ込めるのに使用する光の量を考えれば、自ずとイリヤにぶつけるべき光量も見えてこよう』
みんな黒影の方を見た。真っ黒な影。これを封じるレベルの光量など、かなり希少な魔鉱石が必要になるだろう。光魔法も工夫を凝らさねばあっという間に影が出来る。蒼玉の持っていた光の牢屋はかなり良く出来ていた。
だが、人間サイズのシャドーアイ族ならともかく相手は黒いタコに乗っている。どころか、特に陽の下に出てきても関係ない素振りをしているし、その一点だけでバルカンの言っていることに説得力がない。
「いや、これも単純に光量が足りないんだ。ふふっ、多量の光を腹一杯食わしてやろうぜ」
ラルフはしたり顔で笑った。もうさっきまでの縋るような目ではない、まっすぐ虚空を見据え、敵と戦うシミュレーションをしているように見えた。ひとしきり考えたであろうラルフは一つ頷いた。
「アスロンさん。案内頼んだぜ」
「良かろう。が、これだけは言わせて欲しい。そなたが最後の砦じゃ。脅かすようで申し訳ないが、負ければ終わりじゃ。心して掛かって欲しい。ただ、それだけなんじゃよ……」
「安心しな、アスロンさん。敵わなきゃ逃げる。冒険者の嗜みって奴だ」
通信機が光り輝く。行ったことが無い場所とイリヤの姿が頭の中にスーッと入ってきた。場所と位置が分かったら
「へー、これは便利だ。じゃ行くぜ!俺がミーシャたちを取り返す!!」
『うふふ……なんて心地良いのでしょう。海に揺られて黒い闇に抱かれる。愚かな魔族は私の中。後は矮小なヒューマンを待つだけ……』
うっとりとした表情を浮かべて天を仰ぐ。
『ああ、この気持ち……あの魔族が原因なのですね。ああ……ラルフ様。早く貴方にお逢いしとうございます』
闇は全てを飲み込み、やがて一つとなる。イリヤの中に眠る多くの命は今や全てイリヤの物。
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「えぇ……マジか……」
アルルから聞いた話は驚愕を通り越して最早呆れる領域だった。
ミーシャが捕まってからすぐにイミーナが戻り、事の経緯を説明。熱り立ったベルフィアとそれを諫めるブレイドがエレノアを引き連れてもう一度海へ。帰ってきたのはベルフィアだった。
ブレイドが闇に捕らわれたのを見過ごせなかったエレノアが助けに行って一緒に飲まれてしまった。ベルフィアはあわや取り込まれる寸前に転移魔法によってギリギリ難を逃れた。
今度はアンノウンと共にリベンジマッチを仕掛けるも、攻略どころか糸口すら見つからずにオメオメと戻ってきたらしい。
悲しむアルルの顔を見ていられなかったベルフィアは、部屋に籠もったとのこと。
「参ったよ。召喚獣を幾ら出しても全部持ってかれるんだ。容量の限界以上入れたらパンクさせられるかもって思ったけど……無理だったよ」
アンノウンもお手上げ状態だ。当時のことを思い出してため息をついている。
『思い切ったことをしたようだな。それではイリヤ相手に餌をやったようなものだ』
バルカンは鼻を鳴らして腕を組んだ。アルルたちはそこでようやくバルカンの存在に目がいく。ラルフとずっと一緒だったはずだが、影が薄すぎたのとミーシャたちが捕まった現状のせいで気づくのに少々時間がかかった。
「……それで、この方は?」
「ああ、神だよ。それよりもイミーナと黒影だ。お前ら自分の主人はちゃんと制御しなきゃダメじゃねぇか」
突然話を振られてイミーナは口をへの字に曲げ、黒影はしゅんっとしたように俯き「面目次第もない」と反省した。
「主人を制御なんてよくも言いやがりましたね?私は血の契約を交わしているのですよ?逆らえるはずがないでしょうに。私の開発した朱い槍ですらこの呪縛を解くことは出来なかったのですから」
「試したのかよ……相変わらず抜け目のない奴だな」
「褒めるより先にすることがあるでしょう?全く……」
「いや褒めてねぇわ。……でもまぁそれもそうだ。イリヤを何とかしてミーシャたちを助け出さねぇと……何か良い手は無いか?」
ラルフの縋るような目に誰も反応出来ない。それも当然のこと。良い手があれば既に使用している。
「なぁ、バルカンさん」
最終手段とも言える神への質問。闇の神と回帰の神。それぞれ役割が違うが、神のことを知れるのは神だけ。
『その前に少し聞きたいんだが、皆あまりに慣れ過ぎではないか?神だよの一言で紹介が終わるなど、普段どのような会話をしているのか気になってくるんだが……』
「ん?平凡そのものだよ。ただ少しだけ神との遭遇率が高いだけのな」
『なるほど?そういうことにしておこう。……さて、イリヤだったな。あれを攻略したいならやるべきことは一つ。光を浴びせることだ』
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いつから居たのか壁にもたれかかるようにベルフィアが立っていた。彼女曰く、物理がダメならせめて照らしてやるという思い付きからだった。結局どうにもならず、どうしようも出来なかった。
『では単純に光量が足りないのだ。そこに黒影という良い例があるではないか。シャドーアイを閉じ込めるのに使用する光の量を考えれば、自ずとイリヤにぶつけるべき光量も見えてこよう』
みんな黒影の方を見た。真っ黒な影。これを封じるレベルの光量など、かなり希少な魔鉱石が必要になるだろう。光魔法も工夫を凝らさねばあっという間に影が出来る。蒼玉の持っていた光の牢屋はかなり良く出来ていた。
だが、人間サイズのシャドーアイ族ならともかく相手は黒いタコに乗っている。どころか、特に陽の下に出てきても関係ない素振りをしているし、その一点だけでバルカンの言っていることに説得力がない。
「いや、これも単純に光量が足りないんだ。ふふっ、多量の光を腹一杯食わしてやろうぜ」
ラルフはしたり顔で笑った。もうさっきまでの縋るような目ではない、まっすぐ虚空を見据え、敵と戦うシミュレーションをしているように見えた。ひとしきり考えたであろうラルフは一つ頷いた。
「アスロンさん。案内頼んだぜ」
「良かろう。が、これだけは言わせて欲しい。そなたが最後の砦じゃ。脅かすようで申し訳ないが、負ければ終わりじゃ。心して掛かって欲しい。ただ、それだけなんじゃよ……」
「安心しな、アスロンさん。敵わなきゃ逃げる。冒険者の嗜みって奴だ」
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