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第4章 街の興隆と影の手
第39話「王国との開戦前夜」
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辺境連合が結成されてから三日後の朝、北の見張り塔から緊急の報告が入った。王国軍が、予定より早く到着しつつあるという。当初の予測では、あと二日の余裕があるはずだった。だが、王国軍は強行軍で進んできたようだ。おそらく、辺境連合の結成を知り、急いだのだろう。レオンは、すぐに全軍に警戒態勢を命じた。城内は、一気に緊張に包まれた。
「明日の夕方には、到着するとのことです」
見張り塔の兵士が、息を切らしながら報告した。彼の顔には、恐怖と決意が入り混じっている。
「わかった。すぐに準備を完了させる」
レオンは、冷静に答えた。だが、その内心では焦りがあった。まだ、完全に準備が整っていない部分がある。連合軍の一部は、まだ訓練中だ。武器の配備も、完璧ではない。だが、時間がない。今ある力で、戦うしかない。
レオンは、すぐに幹部会議を招集した。集まったのは、カイル、ルーク、セリア、ルリア、ミーナ、リナ、村長、そして連合軍の代表たち。全員が、緊張した表情で席についている。
「王国軍が、明日の夕方に到着する」
レオンが報告すると、部屋がざわめいた。
「予定より、早いな」
カイルが、地図を見ながら言った。
「強行軍で来たんだろう。辺境連合のことを知って、焦ったのかもしれない」
「準備は、間に合いますか?」
クラインフェルト領の副官が、不安そうに聞いた。
「間に合わせる」
レオンは、断言した。
「今日一日で、すべてを完了させる」
レオンは、地図を広げた。そこには、リコンストラクト自由国の周辺が詳しく描かれている。町の位置、城壁、森、川。すべてが記されている。
「最終確認をする。まず、防衛隊三百は、城壁の守りを固める。ルーク、お前が指揮を執れ」
「任せろ」
ルークが頷いた。
「連合軍三百は、二つに分ける。カイル、お前は百五十名を率いて、東の森に待機しろ。ダリウス卿は、百五十名を率いて、西の森に」
レオンは、地図の両側を指差した。
「王国軍が町に到達したら、両側から挟み撃ちにする」
「了解した」
カイルが答えた。ダリウス卿も、力強く頷いた。
「セリア、防護壁の準備は?」
「完了しています」
セリアが答えた。
「いつでも展開できます。ただし、長時間の維持は魔力を消費します」
「わかった。王国軍の攻撃が始まったら、すぐに展開してくれ」
「はい」
「ルリア、お前は城壁の上で、魔法による支援を頼む」
「わかりました」
ルリアが頷いた。
「ミーナ、リナ、村長。お前たちは、町の避難誘導を担当してくれ。戦闘が始まったら、すべての住民を避難所に」
「承知しました」
三人が答えた。
「では、配置につけ。明日の夕方までに、すべての準備を完了させる」
レオンの言葉に、全員が立ち上がった。それぞれの役割を果たすために、散っていく。
その日の午後、町は戦争準備で大忙しだった。防衛隊の兵士たちは、城壁の点検をしている。石の継ぎ目を確認し、補強が必要な場所を修復する。レオンとカイルが、再構築の力で城壁をさらに強化していく。以前より高く、厚く、頑丈になっていく城壁を見て、兵士たちの表情に安心の色が浮かんだ。
ルークの工房では、最後の武器調整が行われていた。剣を研ぎ、槍の穂先を確認し、弓の弦を張り替える。すべての武器が、最高の状態でなければならない。ルークは、一つ一つの武器を丁寧に点検していた。
「これで、みんな戦える」
ルークは、満足そうに呟いた。彼の周りには、無数の武器が並んでいる。それらは、すべて彼が作ったものだ。再構築武具も含めて、この町の武器庫は充実している。
セリアは、研究所で防護壁の最終調整をしていた。魔法陣を確認し、魔石の配置を微調整する。少しでもミスがあれば、防護壁は機能しない。彼女は、何度も計算を確認した。
「完璧です」
セリアは、眼鏡を直して呟いた。この防護壁が、町を守る最後の砦になる。絶対に失敗は許されない。
ルリアは、他の魔法使いたちと共に、魔法の訓練をしていた。火の魔法、氷の魔法、雷の魔法。様々な魔法を、何度も練習する。実戦では、迷いは命取りだ。体に染み込ませるまで、練習を繰り返す。
ミーナとリナは、避難所の準備をしていた。食料、水、毛布。避難に必要なものを、すべて運び込む。中央の集会所と、城の地下室。二つの避難所に、町の全住民を収容できるように準備する。
「これで、みんなを守れます」
ミーナが、リナに言った。
「ええ。あとは、戦いが早く終わることを祈るだけです」
リナは、窓の外を見た。町の通りでは、人々が普段通りに生活している。子どもたちが遊び、商人が商売をしている。だが、その顔には緊張がある。明日、戦争が始まる。その事実が、町全体を重く圧迫していた。
村長は、町の人々に説明をして回っていた。明日の避難について、どこに集まるべきか、何を持っていくべきか。丁寧に、一人一人に伝えていく。
「大丈夫です。レオン様たちが、必ず守ってくださいます」
村長の言葉に、人々は頷いた。不安はあるが、レオンたちを信じている。この町を、彼らが守ってくれると。
夕方になると、連合軍が移動を始めた。カイル率いる東軍百五十名が、町を出て東の森へ向かう。ダリウス卿率いる西軍百五十名も、西の森へ。彼らは、静かに町を離れた。王国軍に気づかれないよう、慎重に移動する。
レオンは、城壁の上から、彼らの姿を見送った。森の中に消えていく兵士たち。彼らは、明日、王国軍を挟み撃ちにする。その作戦が成功するかどうかが、この戦いの鍵を握っている。
「上手くいくだろうか」
レオンが呟くと、隣に立っていたルークが答えた。
「上手くいくさ。カイルもダリウス卿も、優秀な指揮官だ」
「そうだな」
レオンは頷いた。だが、不安は消えない。戦いは、予測できないことが起きる。どんなに準備をしても、完璧ということはない。
「レオン」
ルークが、レオンの肩を叩いた。
「お前は、やるべきことをやった。あとは、戦うだけだ」
「ああ」
「俺たちは、負けない」
ルークの声は、確信に満ちていた。
「この町を、絶対に守る」
レオンは、ルークを見た。その目には、揺るぎない決意がある。
「ありがとう、ルーク」
「礼はいらねえ。俺たちは、仲間だからな」
二人は、しばらく黙って町を見下ろしていた。夕日が、町を赤く染めている。この平和な光景を、明日も守らなければならない。
その夜、レオンは城の大広間に、すべての幹部と防衛隊の隊長たちを集めた。明日の戦いを前に、最後の訓示をするためだ。広間には、百人以上の兵士と指揮官が集まっている。全員が、真剣な表情でレオンを見つめていた。
レオンは、演台に立った。広間が、静まり返る。レオンの声だけが、響くことになる。
「みんな、集まってくれてありがとう」
レオンの声は、落ち着いていた。だが、その奥には、強い決意が込められている。
「明日、王国軍が来る。数は五千。我々は六百。十倍近い差だ」
兵士たちの表情が、わずかに強張った。だが、誰も怯んでいない。
「だが、恐れることはない」
レオンは、力強く言った。
「我々には、守るべきものがある。この町、この自由、そして仲間たち」
レオンは、一人一人の顔を見た。
「王国軍は、数は多い。装備も良い。訓練も受けている。だが、彼らには、守るべきものがない」
「彼らは、命令で動いている。王のため、貴族のため。自分のためではない」
レオンの声が、さらに力を増した。
「だが、我々は違う。自分たちのために戦う。家族のために、友のために、自由のために」
「その思いの強さが、我々の力だ」
広間に、静かな熱気が広がっていく。兵士たちの目に、炎が宿り始めている。
「明日の戦いは、厳しいだろう。多くの困難が待っているだろう。だが、俺たちは勝つ」
レオンは、拳を掲げた。
「なぜなら、俺たちには、諦めない心があるからだ」
「なぜなら、俺たちには、仲間がいるからだ」
「なぜなら、俺たちには、守るべき未来があるからだ」
レオンの言葉が、広間を満たした。兵士たちは、その言葉を胸に刻んでいる。
「明日、戦場で会おう」
レオンは、剣を抜いて掲げた。
「そして、共に勝利を掴もう」
「おおっ!」
兵士たちが、一斉に叫んだ。その声は、城全体を揺るがすほど大きかった。剣を掲げ、槍を振り上げ、盾を叩く。その音が、リズムを刻む。これは、戦士たちの雄叫びだ。戦いへの決意の表明だ。
レオンは、その光景を見て、胸が熱くなった。この兵士たちと共に、明日を戦う。この仲間たちと共に、町を守る。その覚悟が、さらに強くなった。
訓示が終わった後、レオンは一人、城の屋上に立っていた。夜空には、無数の星が輝いている。明日は、晴れるだろう。戦うには、良い天気だ。だが、それは同時に、王国軍にとっても有利ということだ。
「レオン」
背後から、ルリアの声がした。振り返ると、彼女が温かいお茶を持って立っていた。
「また一人ですか」
「ああ。少し、考え事をしていた」
「明日のことですか?」
ルリアは、レオンの隣に立った。お茶を渡す。レオンは、それを受け取って一口飲んだ。体が温まる。
「ああ。本当に、勝てるのかと」
レオンは、正直に言った。
「数の差は、大きい。いくら準備をしても、不安は消えない」
「当然です」
ルリアは、星空を見上げた。
「不安のない人なんて、いません。でも、それでも戦うんです」
「なぜだ?」
「守りたいものがあるからです」
ルリアは、レオンを見た。その目は、優しく、強かった。
「私は、この町が好きです。ここの人々が好きです。そして、あなたが好きです」
ルリアの頬が、わずかに赤くなった。
「だから、守りたい。どんなに怖くても、どんなに辛くても」
レオンは、ルリアの言葉に、心が温かくなるのを感じた。そうだ。自分も同じだ。この町が好きだ。仲間たちが好きだ。そして、ルリアが好きだ。だから、戦う。
「ありがとう、ルリア」
レオンは、ルリアの手を取った。
「お前がいてくれて、本当に良かった」
「私もです」
ルリアは、レオンの手を握り返した。
「明日、一緒に戦いましょう」
「ああ」
二人は、しばらく手を繋いだまま、星空を見上げていた。静かな夜だ。だが、この静けさは、嵐の前の静けさだ。明日、すべてが変わる。
翌朝、町は早くから動き始めた。兵士たちは、武装を整え、配置についた。城壁の上には、弓兵が並んでいる。門の前には、槍兵が控えている。すべてが、戦いの準備だ。
住民たちは、避難を始めた。子どもたちを抱えた母親、老人を支える若者。みんな、静かに避難所へ向かう。パニックはない。訓練通りに、整然と動いている。
ミーナとリナ、村長が、避難を誘導している。一人一人を確認し、避難所へ案内する。
「大丈夫ですよ。すぐに終わります」
ミーナが、泣いている子どもを優しく抱きしめた。
「レオン様たちが、守ってくださいます」
子どもは、ミーナの言葉に少し安心したようだった。泣き止んで、母親にしがみついている。
昼過ぎ、すべての住民が避難を完了した。町は、静かになった。通りに人影はなく、店も閉まっている。まるで、ゴーストタウンのようだ。だが、城壁の上には、多くの兵士が待機している。この静けさは、戦いの前の静けさだ。
レオンは、城壁の上を歩いた。兵士たち一人一人に声をかける。
「緊張しているか?」
「はい、少し」
若い兵士が、正直に答えた。
「俺もだ」
レオンは、微笑んだ。
「でも、大丈夫だ。お前は一人じゃない。仲間がいる」
「はい」
若い兵士の表情が、少し和らいだ。
レオンは、城壁を一周した。すべての兵士に声をかけ、励ました。その姿を見て、兵士たちの士気が上がっていく。
午後三時、見張り塔から報告が入った。
「王国軍、視界に入りました」
レオンは、すぐに城壁の一番高い場所に登った。双眼鏡で、北を見る。
そこには、黒い波があった。いや、波ではない。それは、王国軍だ。五千の兵士が、整然と行進している。その数は、圧倒的だった。地平線の端から端まで、兵士で埋め尽くされている。
「すごい数だな」
ルークが、レオンの隣に立った。彼も、王国軍を見ている。
「ああ。だが、怯むな」
レオンは、城壁の兵士たちに向かって叫んだ。
「敵は多い。だが、我々には城壁がある。再構築武具がある。そして、何より、守るべきものがある」
兵士たちが、応えた。
「おおっ!」
王国軍は、ゆっくりと近づいてくる。その行進は、整然としている。訓練された軍隊の動きだ。やがて、町から一キロほどの場所で、彼らは停止した。
しばらくして、王国軍の陣営から、一騎の騎士が馬に乗って近づいてきた。白い旗を持っている。交渉の使者だ。
「門を開けろ」
レオンが命じると、門が少しだけ開いた。騎士が、馬を降りて門の前に立つ。
「リコンストラクト自由国の領主、レオン・アーデルハイトに、王国軍総司令グレイソン将軍からの伝言を伝える」
騎士の声は、朗々としていた。
「王国に降伏せよ。武器を捨て、城門を開け。さすれば、住民の命は保証する」
「だが、降伏しなければ、容赦なく攻撃する。この町は、灰燼に帰すだろう」
騎士は、そこで言葉を切った。レオンの返答を待っている。
レオンは、城壁の上から騎士を見下ろした。そして、はっきりと答えた。
「断る」
騎士の表情が、わずかに変わった。驚きではなく、予想通りという表情だ。
「我々は、降伏しない。この自由を、命を懸けて守る」
レオンの声は、力強かった。
「王国に伝えろ。我々は、もう王国の民ではない。リコンストラクト自由国の民だ」
騎士は、しばらくレオンを見つめていた。やがて、敬礼した。
「了解した。貴殿の勇気に、敬意を表する」
騎士は、馬に乗って王国軍の陣営へ戻っていった。
「さあ、始まるぞ」
レオンが言うと、城壁の上の兵士たちが、武器を構えた。弓兵は矢を番え、槍兵は槍を構える。すべての準備が、整った。
王国軍の陣営から、太鼓の音が響いた。それは、攻撃開始の合図だ。五千の兵士が、一斉に動き出した。その光景は、まるで黒い津波のようだった。
「来るぞ!全員、配置につけ!」
レオンの叫びが、城壁に響いた。
「この町を、守り抜く!」
「おおっ!」
兵士たちの雄叫びが、王国軍の太鼓の音と重なった。
リコンストラクト自由国と王国の戦いが、今、始まろうとしていた。運命の戦いが、今、幕を開ける。静かだった辺境の町が、歴史の舞台へと躍り出る瞬間だった。城壁の上で、レオンは剣を抜いた。その刃が、夕日に照らされて輝く。
戦いの時が、来た。
「明日の夕方には、到着するとのことです」
見張り塔の兵士が、息を切らしながら報告した。彼の顔には、恐怖と決意が入り混じっている。
「わかった。すぐに準備を完了させる」
レオンは、冷静に答えた。だが、その内心では焦りがあった。まだ、完全に準備が整っていない部分がある。連合軍の一部は、まだ訓練中だ。武器の配備も、完璧ではない。だが、時間がない。今ある力で、戦うしかない。
レオンは、すぐに幹部会議を招集した。集まったのは、カイル、ルーク、セリア、ルリア、ミーナ、リナ、村長、そして連合軍の代表たち。全員が、緊張した表情で席についている。
「王国軍が、明日の夕方に到着する」
レオンが報告すると、部屋がざわめいた。
「予定より、早いな」
カイルが、地図を見ながら言った。
「強行軍で来たんだろう。辺境連合のことを知って、焦ったのかもしれない」
「準備は、間に合いますか?」
クラインフェルト領の副官が、不安そうに聞いた。
「間に合わせる」
レオンは、断言した。
「今日一日で、すべてを完了させる」
レオンは、地図を広げた。そこには、リコンストラクト自由国の周辺が詳しく描かれている。町の位置、城壁、森、川。すべてが記されている。
「最終確認をする。まず、防衛隊三百は、城壁の守りを固める。ルーク、お前が指揮を執れ」
「任せろ」
ルークが頷いた。
「連合軍三百は、二つに分ける。カイル、お前は百五十名を率いて、東の森に待機しろ。ダリウス卿は、百五十名を率いて、西の森に」
レオンは、地図の両側を指差した。
「王国軍が町に到達したら、両側から挟み撃ちにする」
「了解した」
カイルが答えた。ダリウス卿も、力強く頷いた。
「セリア、防護壁の準備は?」
「完了しています」
セリアが答えた。
「いつでも展開できます。ただし、長時間の維持は魔力を消費します」
「わかった。王国軍の攻撃が始まったら、すぐに展開してくれ」
「はい」
「ルリア、お前は城壁の上で、魔法による支援を頼む」
「わかりました」
ルリアが頷いた。
「ミーナ、リナ、村長。お前たちは、町の避難誘導を担当してくれ。戦闘が始まったら、すべての住民を避難所に」
「承知しました」
三人が答えた。
「では、配置につけ。明日の夕方までに、すべての準備を完了させる」
レオンの言葉に、全員が立ち上がった。それぞれの役割を果たすために、散っていく。
その日の午後、町は戦争準備で大忙しだった。防衛隊の兵士たちは、城壁の点検をしている。石の継ぎ目を確認し、補強が必要な場所を修復する。レオンとカイルが、再構築の力で城壁をさらに強化していく。以前より高く、厚く、頑丈になっていく城壁を見て、兵士たちの表情に安心の色が浮かんだ。
ルークの工房では、最後の武器調整が行われていた。剣を研ぎ、槍の穂先を確認し、弓の弦を張り替える。すべての武器が、最高の状態でなければならない。ルークは、一つ一つの武器を丁寧に点検していた。
「これで、みんな戦える」
ルークは、満足そうに呟いた。彼の周りには、無数の武器が並んでいる。それらは、すべて彼が作ったものだ。再構築武具も含めて、この町の武器庫は充実している。
セリアは、研究所で防護壁の最終調整をしていた。魔法陣を確認し、魔石の配置を微調整する。少しでもミスがあれば、防護壁は機能しない。彼女は、何度も計算を確認した。
「完璧です」
セリアは、眼鏡を直して呟いた。この防護壁が、町を守る最後の砦になる。絶対に失敗は許されない。
ルリアは、他の魔法使いたちと共に、魔法の訓練をしていた。火の魔法、氷の魔法、雷の魔法。様々な魔法を、何度も練習する。実戦では、迷いは命取りだ。体に染み込ませるまで、練習を繰り返す。
ミーナとリナは、避難所の準備をしていた。食料、水、毛布。避難に必要なものを、すべて運び込む。中央の集会所と、城の地下室。二つの避難所に、町の全住民を収容できるように準備する。
「これで、みんなを守れます」
ミーナが、リナに言った。
「ええ。あとは、戦いが早く終わることを祈るだけです」
リナは、窓の外を見た。町の通りでは、人々が普段通りに生活している。子どもたちが遊び、商人が商売をしている。だが、その顔には緊張がある。明日、戦争が始まる。その事実が、町全体を重く圧迫していた。
村長は、町の人々に説明をして回っていた。明日の避難について、どこに集まるべきか、何を持っていくべきか。丁寧に、一人一人に伝えていく。
「大丈夫です。レオン様たちが、必ず守ってくださいます」
村長の言葉に、人々は頷いた。不安はあるが、レオンたちを信じている。この町を、彼らが守ってくれると。
夕方になると、連合軍が移動を始めた。カイル率いる東軍百五十名が、町を出て東の森へ向かう。ダリウス卿率いる西軍百五十名も、西の森へ。彼らは、静かに町を離れた。王国軍に気づかれないよう、慎重に移動する。
レオンは、城壁の上から、彼らの姿を見送った。森の中に消えていく兵士たち。彼らは、明日、王国軍を挟み撃ちにする。その作戦が成功するかどうかが、この戦いの鍵を握っている。
「上手くいくだろうか」
レオンが呟くと、隣に立っていたルークが答えた。
「上手くいくさ。カイルもダリウス卿も、優秀な指揮官だ」
「そうだな」
レオンは頷いた。だが、不安は消えない。戦いは、予測できないことが起きる。どんなに準備をしても、完璧ということはない。
「レオン」
ルークが、レオンの肩を叩いた。
「お前は、やるべきことをやった。あとは、戦うだけだ」
「ああ」
「俺たちは、負けない」
ルークの声は、確信に満ちていた。
「この町を、絶対に守る」
レオンは、ルークを見た。その目には、揺るぎない決意がある。
「ありがとう、ルーク」
「礼はいらねえ。俺たちは、仲間だからな」
二人は、しばらく黙って町を見下ろしていた。夕日が、町を赤く染めている。この平和な光景を、明日も守らなければならない。
その夜、レオンは城の大広間に、すべての幹部と防衛隊の隊長たちを集めた。明日の戦いを前に、最後の訓示をするためだ。広間には、百人以上の兵士と指揮官が集まっている。全員が、真剣な表情でレオンを見つめていた。
レオンは、演台に立った。広間が、静まり返る。レオンの声だけが、響くことになる。
「みんな、集まってくれてありがとう」
レオンの声は、落ち着いていた。だが、その奥には、強い決意が込められている。
「明日、王国軍が来る。数は五千。我々は六百。十倍近い差だ」
兵士たちの表情が、わずかに強張った。だが、誰も怯んでいない。
「だが、恐れることはない」
レオンは、力強く言った。
「我々には、守るべきものがある。この町、この自由、そして仲間たち」
レオンは、一人一人の顔を見た。
「王国軍は、数は多い。装備も良い。訓練も受けている。だが、彼らには、守るべきものがない」
「彼らは、命令で動いている。王のため、貴族のため。自分のためではない」
レオンの声が、さらに力を増した。
「だが、我々は違う。自分たちのために戦う。家族のために、友のために、自由のために」
「その思いの強さが、我々の力だ」
広間に、静かな熱気が広がっていく。兵士たちの目に、炎が宿り始めている。
「明日の戦いは、厳しいだろう。多くの困難が待っているだろう。だが、俺たちは勝つ」
レオンは、拳を掲げた。
「なぜなら、俺たちには、諦めない心があるからだ」
「なぜなら、俺たちには、仲間がいるからだ」
「なぜなら、俺たちには、守るべき未来があるからだ」
レオンの言葉が、広間を満たした。兵士たちは、その言葉を胸に刻んでいる。
「明日、戦場で会おう」
レオンは、剣を抜いて掲げた。
「そして、共に勝利を掴もう」
「おおっ!」
兵士たちが、一斉に叫んだ。その声は、城全体を揺るがすほど大きかった。剣を掲げ、槍を振り上げ、盾を叩く。その音が、リズムを刻む。これは、戦士たちの雄叫びだ。戦いへの決意の表明だ。
レオンは、その光景を見て、胸が熱くなった。この兵士たちと共に、明日を戦う。この仲間たちと共に、町を守る。その覚悟が、さらに強くなった。
訓示が終わった後、レオンは一人、城の屋上に立っていた。夜空には、無数の星が輝いている。明日は、晴れるだろう。戦うには、良い天気だ。だが、それは同時に、王国軍にとっても有利ということだ。
「レオン」
背後から、ルリアの声がした。振り返ると、彼女が温かいお茶を持って立っていた。
「また一人ですか」
「ああ。少し、考え事をしていた」
「明日のことですか?」
ルリアは、レオンの隣に立った。お茶を渡す。レオンは、それを受け取って一口飲んだ。体が温まる。
「ああ。本当に、勝てるのかと」
レオンは、正直に言った。
「数の差は、大きい。いくら準備をしても、不安は消えない」
「当然です」
ルリアは、星空を見上げた。
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「私は、この町が好きです。ここの人々が好きです。そして、あなたが好きです」
ルリアの頬が、わずかに赤くなった。
「だから、守りたい。どんなに怖くても、どんなに辛くても」
レオンは、ルリアの言葉に、心が温かくなるのを感じた。そうだ。自分も同じだ。この町が好きだ。仲間たちが好きだ。そして、ルリアが好きだ。だから、戦う。
「ありがとう、ルリア」
レオンは、ルリアの手を取った。
「お前がいてくれて、本当に良かった」
「私もです」
ルリアは、レオンの手を握り返した。
「明日、一緒に戦いましょう」
「ああ」
二人は、しばらく手を繋いだまま、星空を見上げていた。静かな夜だ。だが、この静けさは、嵐の前の静けさだ。明日、すべてが変わる。
翌朝、町は早くから動き始めた。兵士たちは、武装を整え、配置についた。城壁の上には、弓兵が並んでいる。門の前には、槍兵が控えている。すべてが、戦いの準備だ。
住民たちは、避難を始めた。子どもたちを抱えた母親、老人を支える若者。みんな、静かに避難所へ向かう。パニックはない。訓練通りに、整然と動いている。
ミーナとリナ、村長が、避難を誘導している。一人一人を確認し、避難所へ案内する。
「大丈夫ですよ。すぐに終わります」
ミーナが、泣いている子どもを優しく抱きしめた。
「レオン様たちが、守ってくださいます」
子どもは、ミーナの言葉に少し安心したようだった。泣き止んで、母親にしがみついている。
昼過ぎ、すべての住民が避難を完了した。町は、静かになった。通りに人影はなく、店も閉まっている。まるで、ゴーストタウンのようだ。だが、城壁の上には、多くの兵士が待機している。この静けさは、戦いの前の静けさだ。
レオンは、城壁の上を歩いた。兵士たち一人一人に声をかける。
「緊張しているか?」
「はい、少し」
若い兵士が、正直に答えた。
「俺もだ」
レオンは、微笑んだ。
「でも、大丈夫だ。お前は一人じゃない。仲間がいる」
「はい」
若い兵士の表情が、少し和らいだ。
レオンは、城壁を一周した。すべての兵士に声をかけ、励ました。その姿を見て、兵士たちの士気が上がっていく。
午後三時、見張り塔から報告が入った。
「王国軍、視界に入りました」
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そこには、黒い波があった。いや、波ではない。それは、王国軍だ。五千の兵士が、整然と行進している。その数は、圧倒的だった。地平線の端から端まで、兵士で埋め尽くされている。
「すごい数だな」
ルークが、レオンの隣に立った。彼も、王国軍を見ている。
「ああ。だが、怯むな」
レオンは、城壁の兵士たちに向かって叫んだ。
「敵は多い。だが、我々には城壁がある。再構築武具がある。そして、何より、守るべきものがある」
兵士たちが、応えた。
「おおっ!」
王国軍は、ゆっくりと近づいてくる。その行進は、整然としている。訓練された軍隊の動きだ。やがて、町から一キロほどの場所で、彼らは停止した。
しばらくして、王国軍の陣営から、一騎の騎士が馬に乗って近づいてきた。白い旗を持っている。交渉の使者だ。
「門を開けろ」
レオンが命じると、門が少しだけ開いた。騎士が、馬を降りて門の前に立つ。
「リコンストラクト自由国の領主、レオン・アーデルハイトに、王国軍総司令グレイソン将軍からの伝言を伝える」
騎士の声は、朗々としていた。
「王国に降伏せよ。武器を捨て、城門を開け。さすれば、住民の命は保証する」
「だが、降伏しなければ、容赦なく攻撃する。この町は、灰燼に帰すだろう」
騎士は、そこで言葉を切った。レオンの返答を待っている。
レオンは、城壁の上から騎士を見下ろした。そして、はっきりと答えた。
「断る」
騎士の表情が、わずかに変わった。驚きではなく、予想通りという表情だ。
「我々は、降伏しない。この自由を、命を懸けて守る」
レオンの声は、力強かった。
「王国に伝えろ。我々は、もう王国の民ではない。リコンストラクト自由国の民だ」
騎士は、しばらくレオンを見つめていた。やがて、敬礼した。
「了解した。貴殿の勇気に、敬意を表する」
騎士は、馬に乗って王国軍の陣営へ戻っていった。
「さあ、始まるぞ」
レオンが言うと、城壁の上の兵士たちが、武器を構えた。弓兵は矢を番え、槍兵は槍を構える。すべての準備が、整った。
王国軍の陣営から、太鼓の音が響いた。それは、攻撃開始の合図だ。五千の兵士が、一斉に動き出した。その光景は、まるで黒い津波のようだった。
「来るぞ!全員、配置につけ!」
レオンの叫びが、城壁に響いた。
「この町を、守り抜く!」
「おおっ!」
兵士たちの雄叫びが、王国軍の太鼓の音と重なった。
リコンストラクト自由国と王国の戦いが、今、始まろうとしていた。運命の戦いが、今、幕を開ける。静かだった辺境の町が、歴史の舞台へと躍り出る瞬間だった。城壁の上で、レオンは剣を抜いた。その刃が、夕日に照らされて輝く。
戦いの時が、来た。
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しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
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火・金・日、投稿予定
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