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第5章 王国との激突
第48話「アーデル家の崩壊」
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レオンが意識を取り戻したのは、王宮の一室だった。豪華な天蓋付きのベッド。かつて、自分が暮らしていた部屋に似ている。
「ここは」
レオンは、体を起こそうとした。だが、激痛が全身を襲う。
「動かないでください」
ルリアの声がした。彼女は、椅子に座ってレオンを見守っていた。目の下に隈ができている。ずっと、看病していたのだろう。
「また、倒れたのか」
「はい。装置を止めた後、三時間も意識がありませんでした」
ルリアは、レオンに水を飲ませた。
「体が、限界です。世界の断片を使いすぎています」
レオンは、窓の外を見た。王都の街並みが見える。建物は無事だ。装置の暴走は、止まったのだ。
「国王陛下は」
「亡くなりました」
ルリアは、静かに答えた。
「エリーゼ様が、看取られました」
レオンは、複雑な表情をした。敵だった男が、死んだ。だが、喜びは感じない。
「みんなは」
「無事です。カイルさんもセリアさんも、軽傷ですが動けます」
それを聞いて、レオンは少し安心した。だが、その時、扉が開いた。カイルが入ってくる。その表情は、深刻だった。
「レオン、起きたか」
「ああ。何かあったのか」
「アーデル家の当主が、ここに来ている」
カイルの言葉に、レオンの体が強張った。
「父上が」
「ああ。お前と、話したいと」
レオンは、ベッドから降りた。体が痛むが、立てないわけではない。
「わかった。会おう」
応接室に、一人の男が立っていた。灰色の髪、深い皺の刻まれた顔。アーデル家当主、エリック・アーデルハイト。レオンの父だ。
「レオン」
父は、レオンを見た。その目には、複雑な感情が宿っている。
「久しぶりだな」
「父上」
レオンは、簡潔に答えた。感情を表に出さない。父は、深く息をついた。
「まず、礼を言わせてくれ」
「礼?」
「王都を、救ってくれた。何十万の命を、救ってくれた」
父は、頭を下げた。アーデル家当主が、追放した息子に頭を下げる。異様な光景だった。
「当然のことをしただけです」
レオンは、冷たく答えた。
「そうか」
父は、顔を上げた。
「では、もう一つ。謝罪させてくれ」
父は、再び頭を下げた。今度は、深々と。
「お前を、追放したこと。守れなかったこと。すまなかった」
レオンは、何も答えなかった。ただ、父を見つめている。
「今更、何を言っても遅いだろう」
父は、続けた。
「だが、言わせてくれ。お前は、正しかった」
「正しかった?」
「ああ。お前の選んだ道は、正しかった」
父の声には、後悔が滲んでいた。
「俺は、家のために、お前を犠牲にした。王国のために、息子を捨てた」
「それが、間違いだった」
レオンは、拳を握りしめた。怒りが、込み上げてくる。
「今更、そんなことを言われても」
「わかっている」
父は、レオンの目を見た。
「だが、言わせてくれ。お前を、誇りに思っている」
その言葉に、レオンの怒りが揺らいだ。
「お前は、誰よりも強く、誰よりも優しい。本当の貴族だ」
父の目には、涙が浮かんでいる。
「俺が、お前の父親で良かった」
レオンは、何も言えなくなった。憎しみと愛情が、心の中で渦巻いている。
その時、扉が開いた。兄のエドワードが入ってきた。彼も、傷だらけだった。
「父上、何をしている」
エドワードは、レオンを睨んだ。
「こいつに、頭を下げるなど」
「エドワード」
父は、厳しい声で言った。
「お前も、レオンに謝れ」
「何を」
「お前が、レオンを陥れたこと。俺は、知っている」
その言葉に、エドワードの顔色が変わった。
「何のことだ」
エドワードは、しらを切ろうとした。
「とぼけるな」
父は、一枚の書類を取り出した。
「成人の儀の記録だ。お前が、ギフト鑑定士に賄賂を渡していた証拠がある」
レオンは、驚いて書類を見た。
「まさか」
「ああ。お前のギフトは、本当は『ゴミ』ではなかった」
父は、苦しそうに続けた。
「鑑定士が、わざと『再構築』を低く評価したんだ。エドワードの依頼で」
「兄上」
レオンは、エドワードを見た。エドワードは、唇を噛んでいた。否定できない。
「なぜだ」
「なぜ、だと?」
エドワードは、叫んだ。
「決まっている。お前が憎かったからだ」
エドワードの目には、憎しみが燃えている。
「お前は、すべてを持っていた。才能も、人望も、父上の愛情も」
「俺は、長男なのに、誰も認めてくれなかった」
エドワードの声が、震えた。
「『神童』はお前だ。『天才』もお前だ」
「俺は、いつもお前の影だった」
「兄上」
「黙れ」
エドワードは、剣を抜いた。
「お前さえいなければ、俺が認められたんだ」
「お前さえいなければ」
エドワードは、レオンに斬りかかった。
だが、その剣は、父に阻まれた。父が、エドワードの腕を掴んでいる。
「やめろ、エドワード」
「離せ、父上」
「お前は、間違っている」
父は、エドワードの剣を取り上げた。
「お前も、十分に優れている。ただ、それを認めようとしなかっただけだ」
「嘘だ」
エドワードは、床に膝をついた。
「俺は、何をやってもお前に勝てなかった」
「剣も、学問も、政治も。すべて、お前の方が上だった」
エドワードは、泣き始めた。
「俺は、何のために生まれてきたんだ」
その姿を見て、レオンは複雑な気持ちになった。兄も、苦しんでいたのだ。
レオンは、エドワードの前に膝をついた。
「兄上、俺は一度も、兄上を超えたいと思ったことはない」
「嘘を言うな」
「本当だ」
レオンは、真剣な目で兄を見た。
「俺は、兄上を尊敬していた。いつも、背中を追いかけていた」
「だが、俺は才能があったから、周囲が勝手に期待した」
レオンの声には、苦しみが滲んでいた。
「俺も、苦しかった。『神童』と呼ばれることが、重荷だった」
「期待に応えなければならない。完璧でなければならない」
「そのプレッシャーが、俺を追い詰めていた」
エドワードは、レオンを見た。初めて、弟の本心を聞いた気がした。
「お前も、苦しかったのか」
「ああ」
レオンは頷いた。
「だから、追放されたとき、少しだけ楽になった」
「期待から、解放されたから」
エドワードは、涙を拭った。
「俺は、お前を誤解していた」
「いや、俺も兄上を理解しようとしなかった」
レオンは、エドワードの肩に手を置いた。
「すまなかった、兄上」
エドワードは、しばらく黙っていた。そして、小さく頷いた。
「俺も、すまなかった」
二人は、初めて本当の意味で向き合った。父は、その光景を見て、涙を流していた。
「お前たち」
だが、その時、地面が揺れた。
「何だ」
カイルが、窓の外を見た。
「まずい。王宮が崩れ始めている」
装置の影響で、王宮の基礎が損傷していたのだ。今、それが限界に達した。
「逃げろ」
カイルが叫んだ。全員が、部屋から飛び出した。廊下も、激しく揺れている。天井が崩れ、柱が倒れる。
「こっちです」
エリーゼが、先導した。彼女も、駆けつけていた。
「中庭を抜けて、正門へ」
一行は、走った。だが、崩壊の速度が速い。後ろから、瓦礫が追いかけてくる。
「急げ」
中庭に出た時、さらに大きな揺れが襲った。王宮の中央塔が、倒壊し始めている。
「あれが倒れたら、全員巻き込まれる」
セリアが叫んだ。
「レオン、再構築で支えられますか」
「やってみる」
レオンは、手を塔に向けた。再構築の力を発動する。だが、魔力が足りない。体が、もう限界だ。
「くそっ」
その時、父が前に出た。
「俺が、時間を稼ぐ」
「父上、何を」
父は、王宮の柱に手を当てた。そして、体に残っていたわずかな魔力を使って、柱を支えた。
「早く行け」
「ですが」
「いいから、行け」
父は、振り返った。その顔には、穏やかな笑みがあった。
「レオン、エドワード。お前たちは、生きろ」
「自由に、生きろ」
「父上」
レオンが叫んだ。だが、その時、天井が崩れ落ちた。巨大な石の塊が、父の上に降り注ぐ。
「父上!」
エドワードが、走り出そうとした。だが、カイルが止めた。
「間に合わない」
父は、石の下敷きになった。
「父上」
エドワードは、叫んだ。だが、もう遅い。父は、最後まで柱を支えていた。その犠牲で、一行は中庭を抜けることができた。
「行くぞ」
カイルが、エドワードの腕を引いた。
「父上を、見捨てるのか」
「お前の父親は、お前たちを守ったんだ」
カイルは、真剣な目でエドワードを見た。
「その意志を、無駄にするな」
エドワードは、歯を食いしばった。そして、走り出した。
一行は、王宮の正門から飛び出した。その直後、王宮の中央塔が完全に倒壊した。轟音と共に、瓦礫が舞い上がる。
全員が、地面に倒れ込んだ。息が上がっている。
「助かった、のか」
カイルが、呟いた。レオンは、崩れた王宮を見た。父が、あの中にいる。
「父上」
エドワードも、王宮を見つめていた。涙が、頬を伝う。
「父上、すまなかった」
「父上」
二人の兄弟は、初めて同じ思いを共有した。ルリアが、レオンの隣に座った。
「レオン、大丈夫ですか」
「ああ」
レオンは、空を見上げた。青い空が、広がっている。
「父上は、最後に俺たちを守ってくれた」
「はい」
「それで、いいのかもしれない」
レオンは、立ち上がった。体は痛むが、まだ動ける。
「アーデル家は、終わった」
エドワードも、立ち上がった。
「ああ。もう、家はない」
エドワードは、レオンを見た。
「これから、どうする」
「それは、兄上が決めることです」
レオンは、エドワードに手を差し伸べた。
「でも、もし望むなら、俺の町に来てください」
「お前の町に?」
「ああ。リコンストラクト自由国。そこでは、身分は関係ない」
レオンは、微笑んだ。
「兄上も、自由に生きられます」
エドワードは、その手を見つめた。そして、ゆっくりと握った。
「考えておく」
「いつでも、待っています」
二人は、初めて本当の意味で兄弟になった。
王宮の崩壊を見て、王都は混乱に陥っていた。国王も死に、王宮も崩れた。王国は、今、指導者を失っている。
貴族たちが、あちこちで集まって議論している。
「誰が、王国を治めるのだ」
「王位継承者は」
「国王には、跡継ぎがいない」
混乱は、収まらない。エリーゼが、レオンの元へ来た。
「レオン、王都は混乱しています」
「わかっている」
「私は、ここに残ります」
エリーゼは、決意を込めて言った。
「父の後始末をしなければなりません」
「そして、王都を立て直さなければ」
レオンは、エリーゼを見た。
「一人で、大丈夫か」
「大丈夫です」
エリーゼは、微笑んだ。
「あなたが、私を強くしてくれました」
「自由に生きる勇気を、くれました」
エリーゼは、レオンの手を取った。
「ありがとう、レオン」
「礼を言うのは、俺の方だ」
レオンも、エリーゼの手を握った。
「君がいなければ、王都を救えなかった」
二人は、しばらく手を握り合っていた。そして、離れた。
「では、行きます」
エリーゼは、王都の中心へ向かった。貴族たちを説得するために。レオンは、その背中を見送った。
「あの人なら、大丈夫だ」
カイルが言った。
「ああ」
夕暮れ時、レオンたちは王都を出発する準備をしていた。町へ、帰る時間だ。
仲間たちが、馬の準備をしている。
「レオン」
セリアが、報告に来た。
「王都に、古代兵器の残骸がまだあります」
「処理は?」
「エリーゼ様が、責任を持って封印すると」
「わかった」
レオンは頷いた。
「信じよう」
ルリアが、レオンの隣に来た。
「レオン、体は大丈夫ですか」
「まだ、痛むが、動ける」
レオンは、世界の断片を取り出した。今、二つの断片を持っている。
「これを、どうするか」
「まだ、使うつもりですか」
ルリアは、心配そうに聞いた。
「わからない」
レオンは、断片を見つめた。
「だが、これがある限り、まだ戦いは終わらない」
「では、壊せば」
「壊せない」
セリアが言った。
「世界の断片は、破壊不可能です。封印するしかありません」
レオンは、断片を懐にしまった。
「なら、俺が管理する」
その時、エドワードが近づいてきた。
「レオン」
「兄上」
「俺は、ここに残る」
エドワードは、王都を見た。
「アーデル家の後始末をしなければならない」
「そうですか」
「だが、いつか、お前の町へ行く」
エドワードは、レオンを見た。
「その時は、歓迎してくれ」
「もちろんです」
レオンは、微笑んだ。二人は、握手した。
「では、また」
「ああ、また」
エドワードは、去っていった。レオンは、仲間たちを見た。
「帰るぞ。町へ」
全員が、馬に乗った。そして、王都を後にした。
西の空が、赤く染まっている。新しい夜が、始まろうとしている。だが、レオンは知っていた。この戦いは、まだ終わっていない。
最後の戦いが、待っている。王国全体を、どうするか。その決断が、迫っていた。
「ここは」
レオンは、体を起こそうとした。だが、激痛が全身を襲う。
「動かないでください」
ルリアの声がした。彼女は、椅子に座ってレオンを見守っていた。目の下に隈ができている。ずっと、看病していたのだろう。
「また、倒れたのか」
「はい。装置を止めた後、三時間も意識がありませんでした」
ルリアは、レオンに水を飲ませた。
「体が、限界です。世界の断片を使いすぎています」
レオンは、窓の外を見た。王都の街並みが見える。建物は無事だ。装置の暴走は、止まったのだ。
「国王陛下は」
「亡くなりました」
ルリアは、静かに答えた。
「エリーゼ様が、看取られました」
レオンは、複雑な表情をした。敵だった男が、死んだ。だが、喜びは感じない。
「みんなは」
「無事です。カイルさんもセリアさんも、軽傷ですが動けます」
それを聞いて、レオンは少し安心した。だが、その時、扉が開いた。カイルが入ってくる。その表情は、深刻だった。
「レオン、起きたか」
「ああ。何かあったのか」
「アーデル家の当主が、ここに来ている」
カイルの言葉に、レオンの体が強張った。
「父上が」
「ああ。お前と、話したいと」
レオンは、ベッドから降りた。体が痛むが、立てないわけではない。
「わかった。会おう」
応接室に、一人の男が立っていた。灰色の髪、深い皺の刻まれた顔。アーデル家当主、エリック・アーデルハイト。レオンの父だ。
「レオン」
父は、レオンを見た。その目には、複雑な感情が宿っている。
「久しぶりだな」
「父上」
レオンは、簡潔に答えた。感情を表に出さない。父は、深く息をついた。
「まず、礼を言わせてくれ」
「礼?」
「王都を、救ってくれた。何十万の命を、救ってくれた」
父は、頭を下げた。アーデル家当主が、追放した息子に頭を下げる。異様な光景だった。
「当然のことをしただけです」
レオンは、冷たく答えた。
「そうか」
父は、顔を上げた。
「では、もう一つ。謝罪させてくれ」
父は、再び頭を下げた。今度は、深々と。
「お前を、追放したこと。守れなかったこと。すまなかった」
レオンは、何も答えなかった。ただ、父を見つめている。
「今更、何を言っても遅いだろう」
父は、続けた。
「だが、言わせてくれ。お前は、正しかった」
「正しかった?」
「ああ。お前の選んだ道は、正しかった」
父の声には、後悔が滲んでいた。
「俺は、家のために、お前を犠牲にした。王国のために、息子を捨てた」
「それが、間違いだった」
レオンは、拳を握りしめた。怒りが、込み上げてくる。
「今更、そんなことを言われても」
「わかっている」
父は、レオンの目を見た。
「だが、言わせてくれ。お前を、誇りに思っている」
その言葉に、レオンの怒りが揺らいだ。
「お前は、誰よりも強く、誰よりも優しい。本当の貴族だ」
父の目には、涙が浮かんでいる。
「俺が、お前の父親で良かった」
レオンは、何も言えなくなった。憎しみと愛情が、心の中で渦巻いている。
その時、扉が開いた。兄のエドワードが入ってきた。彼も、傷だらけだった。
「父上、何をしている」
エドワードは、レオンを睨んだ。
「こいつに、頭を下げるなど」
「エドワード」
父は、厳しい声で言った。
「お前も、レオンに謝れ」
「何を」
「お前が、レオンを陥れたこと。俺は、知っている」
その言葉に、エドワードの顔色が変わった。
「何のことだ」
エドワードは、しらを切ろうとした。
「とぼけるな」
父は、一枚の書類を取り出した。
「成人の儀の記録だ。お前が、ギフト鑑定士に賄賂を渡していた証拠がある」
レオンは、驚いて書類を見た。
「まさか」
「ああ。お前のギフトは、本当は『ゴミ』ではなかった」
父は、苦しそうに続けた。
「鑑定士が、わざと『再構築』を低く評価したんだ。エドワードの依頼で」
「兄上」
レオンは、エドワードを見た。エドワードは、唇を噛んでいた。否定できない。
「なぜだ」
「なぜ、だと?」
エドワードは、叫んだ。
「決まっている。お前が憎かったからだ」
エドワードの目には、憎しみが燃えている。
「お前は、すべてを持っていた。才能も、人望も、父上の愛情も」
「俺は、長男なのに、誰も認めてくれなかった」
エドワードの声が、震えた。
「『神童』はお前だ。『天才』もお前だ」
「俺は、いつもお前の影だった」
「兄上」
「黙れ」
エドワードは、剣を抜いた。
「お前さえいなければ、俺が認められたんだ」
「お前さえいなければ」
エドワードは、レオンに斬りかかった。
だが、その剣は、父に阻まれた。父が、エドワードの腕を掴んでいる。
「やめろ、エドワード」
「離せ、父上」
「お前は、間違っている」
父は、エドワードの剣を取り上げた。
「お前も、十分に優れている。ただ、それを認めようとしなかっただけだ」
「嘘だ」
エドワードは、床に膝をついた。
「俺は、何をやってもお前に勝てなかった」
「剣も、学問も、政治も。すべて、お前の方が上だった」
エドワードは、泣き始めた。
「俺は、何のために生まれてきたんだ」
その姿を見て、レオンは複雑な気持ちになった。兄も、苦しんでいたのだ。
レオンは、エドワードの前に膝をついた。
「兄上、俺は一度も、兄上を超えたいと思ったことはない」
「嘘を言うな」
「本当だ」
レオンは、真剣な目で兄を見た。
「俺は、兄上を尊敬していた。いつも、背中を追いかけていた」
「だが、俺は才能があったから、周囲が勝手に期待した」
レオンの声には、苦しみが滲んでいた。
「俺も、苦しかった。『神童』と呼ばれることが、重荷だった」
「期待に応えなければならない。完璧でなければならない」
「そのプレッシャーが、俺を追い詰めていた」
エドワードは、レオンを見た。初めて、弟の本心を聞いた気がした。
「お前も、苦しかったのか」
「ああ」
レオンは頷いた。
「だから、追放されたとき、少しだけ楽になった」
「期待から、解放されたから」
エドワードは、涙を拭った。
「俺は、お前を誤解していた」
「いや、俺も兄上を理解しようとしなかった」
レオンは、エドワードの肩に手を置いた。
「すまなかった、兄上」
エドワードは、しばらく黙っていた。そして、小さく頷いた。
「俺も、すまなかった」
二人は、初めて本当の意味で向き合った。父は、その光景を見て、涙を流していた。
「お前たち」
だが、その時、地面が揺れた。
「何だ」
カイルが、窓の外を見た。
「まずい。王宮が崩れ始めている」
装置の影響で、王宮の基礎が損傷していたのだ。今、それが限界に達した。
「逃げろ」
カイルが叫んだ。全員が、部屋から飛び出した。廊下も、激しく揺れている。天井が崩れ、柱が倒れる。
「こっちです」
エリーゼが、先導した。彼女も、駆けつけていた。
「中庭を抜けて、正門へ」
一行は、走った。だが、崩壊の速度が速い。後ろから、瓦礫が追いかけてくる。
「急げ」
中庭に出た時、さらに大きな揺れが襲った。王宮の中央塔が、倒壊し始めている。
「あれが倒れたら、全員巻き込まれる」
セリアが叫んだ。
「レオン、再構築で支えられますか」
「やってみる」
レオンは、手を塔に向けた。再構築の力を発動する。だが、魔力が足りない。体が、もう限界だ。
「くそっ」
その時、父が前に出た。
「俺が、時間を稼ぐ」
「父上、何を」
父は、王宮の柱に手を当てた。そして、体に残っていたわずかな魔力を使って、柱を支えた。
「早く行け」
「ですが」
「いいから、行け」
父は、振り返った。その顔には、穏やかな笑みがあった。
「レオン、エドワード。お前たちは、生きろ」
「自由に、生きろ」
「父上」
レオンが叫んだ。だが、その時、天井が崩れ落ちた。巨大な石の塊が、父の上に降り注ぐ。
「父上!」
エドワードが、走り出そうとした。だが、カイルが止めた。
「間に合わない」
父は、石の下敷きになった。
「父上」
エドワードは、叫んだ。だが、もう遅い。父は、最後まで柱を支えていた。その犠牲で、一行は中庭を抜けることができた。
「行くぞ」
カイルが、エドワードの腕を引いた。
「父上を、見捨てるのか」
「お前の父親は、お前たちを守ったんだ」
カイルは、真剣な目でエドワードを見た。
「その意志を、無駄にするな」
エドワードは、歯を食いしばった。そして、走り出した。
一行は、王宮の正門から飛び出した。その直後、王宮の中央塔が完全に倒壊した。轟音と共に、瓦礫が舞い上がる。
全員が、地面に倒れ込んだ。息が上がっている。
「助かった、のか」
カイルが、呟いた。レオンは、崩れた王宮を見た。父が、あの中にいる。
「父上」
エドワードも、王宮を見つめていた。涙が、頬を伝う。
「父上、すまなかった」
「父上」
二人の兄弟は、初めて同じ思いを共有した。ルリアが、レオンの隣に座った。
「レオン、大丈夫ですか」
「ああ」
レオンは、空を見上げた。青い空が、広がっている。
「父上は、最後に俺たちを守ってくれた」
「はい」
「それで、いいのかもしれない」
レオンは、立ち上がった。体は痛むが、まだ動ける。
「アーデル家は、終わった」
エドワードも、立ち上がった。
「ああ。もう、家はない」
エドワードは、レオンを見た。
「これから、どうする」
「それは、兄上が決めることです」
レオンは、エドワードに手を差し伸べた。
「でも、もし望むなら、俺の町に来てください」
「お前の町に?」
「ああ。リコンストラクト自由国。そこでは、身分は関係ない」
レオンは、微笑んだ。
「兄上も、自由に生きられます」
エドワードは、その手を見つめた。そして、ゆっくりと握った。
「考えておく」
「いつでも、待っています」
二人は、初めて本当の意味で兄弟になった。
王宮の崩壊を見て、王都は混乱に陥っていた。国王も死に、王宮も崩れた。王国は、今、指導者を失っている。
貴族たちが、あちこちで集まって議論している。
「誰が、王国を治めるのだ」
「王位継承者は」
「国王には、跡継ぎがいない」
混乱は、収まらない。エリーゼが、レオンの元へ来た。
「レオン、王都は混乱しています」
「わかっている」
「私は、ここに残ります」
エリーゼは、決意を込めて言った。
「父の後始末をしなければなりません」
「そして、王都を立て直さなければ」
レオンは、エリーゼを見た。
「一人で、大丈夫か」
「大丈夫です」
エリーゼは、微笑んだ。
「あなたが、私を強くしてくれました」
「自由に生きる勇気を、くれました」
エリーゼは、レオンの手を取った。
「ありがとう、レオン」
「礼を言うのは、俺の方だ」
レオンも、エリーゼの手を握った。
「君がいなければ、王都を救えなかった」
二人は、しばらく手を握り合っていた。そして、離れた。
「では、行きます」
エリーゼは、王都の中心へ向かった。貴族たちを説得するために。レオンは、その背中を見送った。
「あの人なら、大丈夫だ」
カイルが言った。
「ああ」
夕暮れ時、レオンたちは王都を出発する準備をしていた。町へ、帰る時間だ。
仲間たちが、馬の準備をしている。
「レオン」
セリアが、報告に来た。
「王都に、古代兵器の残骸がまだあります」
「処理は?」
「エリーゼ様が、責任を持って封印すると」
「わかった」
レオンは頷いた。
「信じよう」
ルリアが、レオンの隣に来た。
「レオン、体は大丈夫ですか」
「まだ、痛むが、動ける」
レオンは、世界の断片を取り出した。今、二つの断片を持っている。
「これを、どうするか」
「まだ、使うつもりですか」
ルリアは、心配そうに聞いた。
「わからない」
レオンは、断片を見つめた。
「だが、これがある限り、まだ戦いは終わらない」
「では、壊せば」
「壊せない」
セリアが言った。
「世界の断片は、破壊不可能です。封印するしかありません」
レオンは、断片を懐にしまった。
「なら、俺が管理する」
その時、エドワードが近づいてきた。
「レオン」
「兄上」
「俺は、ここに残る」
エドワードは、王都を見た。
「アーデル家の後始末をしなければならない」
「そうですか」
「だが、いつか、お前の町へ行く」
エドワードは、レオンを見た。
「その時は、歓迎してくれ」
「もちろんです」
レオンは、微笑んだ。二人は、握手した。
「では、また」
「ああ、また」
エドワードは、去っていった。レオンは、仲間たちを見た。
「帰るぞ。町へ」
全員が、馬に乗った。そして、王都を後にした。
西の空が、赤く染まっている。新しい夜が、始まろうとしている。だが、レオンは知っていた。この戦いは、まだ終わっていない。
最後の戦いが、待っている。王国全体を、どうするか。その決断が、迫っていた。
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壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
まったく知らない世界に転生したようです
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まったく知らない世界に転生したようです。
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※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
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『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規
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不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
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火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
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