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一章
3:コンビニ感覚らしい
しおりを挟む街から出て徒歩五分。俺の目の前には絵に描いたような厳つい西洋建築の城が聳え立っていた。本当に歩いてたどり着けるのかよ。コンビニ感覚でたどり着ける魔王城のなんと威厳のないことか。見上げれば立派な門構えがあるが、狛犬のごとく置かれたガーゴイルの彫像を見ると近所の寂れた神社を彷彿とさせる。
懐かしいなあ、子どもの頃お祭りで遊びに行ったっけ。あ、もしかしてこの魔王城も神社的な建物だったりしない? ほら、神社は神様を祀っているし、魔王城も魔王を祀っているようなもんじゃん。一緒一緒。
「神さま討伐とか罰あたりなこと、流石に勇者でもできないって。よし、帰るか」
まあ、帰る場所なんてないんだけど。ひと月も魔王宅の隣で生活していたんだから、どうにでもなるだろう。
俺は踵を返し、さあてボッチ勇者ぶらり旅でも始めるか、と一歩踏み出した。ところがどっこい、その踏み出した足は地面を踏みしめることなく、虚無に沈んでいった。
体が傾く。
前のめりになる。
受け身を取ろうと手を伸ばす。
そうして、迫る地面が真っ黒なことに気がづいた。あ、これヤバいやつだ。この感覚を俺は知っている。
「ビルから飛び降りたときと同じだわ」
確かに死にたいとは言ったけれど、こんな意味の分からない落下で死ぬとか仮にも勇者の肩書をもらった人間の死因としては如何なるものか。勇者としてじゃなくて良いから、せめて冒険者らしく死にたかった。まあ、でも。
「これが俺にお似合いの死に方なんだろうなあ」
痛みはない。ただ強い衝撃がくるだけだ。あとは意識が真っ暗になって、幕が下ろされる。それだけだ。あーあ、せっかく転生したんだったら会社のことも、上司のことも、同僚のことも、部下のことも綺麗さっぱり忘れて、もっとエンジョイしたかった。田舎で農業を営みつつ、ひっそりと暮らしたかった。少しでいいから、向こうの世界で手に入らなかった穏やかな生活というものをしてみたかった。じん、と目頭が熱くなる。枯れ果てたと思っていた涙が目尻に滲んだ。
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11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
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