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一章
4:ご対面らしい
しおりを挟む二度目の死を覚悟していたにも関わらず、走馬灯らしい走馬灯が走ることはなかった。一瞬でもあの自称勇者パーティー四人組が脳裏に浮かんだことは悔やまれるが、かといって転生してからこの方、あの四人以外とまともにコミュニケーションを取れた試しがなかったから、海馬も側頭葉も即席の走馬灯を作るのに相当苦心したのだろう。可哀想に。
ガシャガシャと喧しい音を立てながら落ちた先は、先ほど見上げていた城と同じく厳つい装飾が施された大広間であった。不思議の国のアリスも穴に落ちた先がこんな厳しい部屋だったら必死こいて落ちてきた穴を登るだろう。
薄暗い部屋に真っ赤なカーペットが敷かれている。その先を辿っていくと階段があり、さらにその先には絵に描いた玉座があった。まさに玉座。王の座に相応しい厳かな座具には、これまた正しく魔王と呼ぶに相応しい大男が当然のように腰を据えている。肘を杖にして頰を支えているその姿は退屈だと主張いているようだ。というかにじみ出ている。
「負け確イベントじゃん……」
ゲームでよくあるやつだ。最初に理不尽な強さの敵と戦わせておいて、最後に再び戦う時自身の成長にテンションが爆上がりするやつ。昔よくやったよな、そういうRPG。ヒノキの棒と鍋のふたから始まり、徐々にレベルと装備の格が上がっていくのがマジで嬉しかったなあ。
「貴様は何者だ」
地鳴りみたいな声でド定番の台詞を向けられる。普段ならテンションが上がるだろう場面に直面したというのにまったくもって嬉しくない。それもこれも勇者という当事者になってしまったからだろう。これが「ゲームのプレイヤー側」であれば間違いなくテンション爆上がりだった。
「いやー……、なんと申せばいいのでしょうか、一応、勇者? 的なことをやらせて頂いております……」
「正気か?」
「その反応は正しい」
ぐうの音も出ない。そりゃあ上からゴテゴテの鎧を着た奴が落ちてきたらそういう反応になりますよね。威厳たっぷりの大男が若干引き気味なのはさておいて、この場面で名乗らないわけにもいかず、俺もしどろもどろになりながら名乗ったが、自分で勇者を名乗るのって結構ハズいな。どんな羞恥プレイだよ。なんかもっと適切な役職があっただろ、村人Aとかさ。
やっとのことで立ち上がり、改めて大男を見上げる。鎧に邪魔されて体を反らす形になった。視認性が悪すぎだろ。これで魔王とも戦えますね! と意気揚々と肩を叩いてきたどこぞの武闘家、つぎ会ったら覚えておけよ。次があるか分からないけど。
俺は恐る恐る腰に提げた剣に手をかける。ふむ、と魔王が興味深そうに顎を撫でた。
「そうか、我を倒しに来たのか」
「一応勇者なもんで」
「その程度で、か?」
どうやら魔王にはステータスが見えるらしい。いや、俺が生まれたての子鹿の如く震えているせいかも知れない。どっちにしろ転生して間もない俺の戦力などたかが知れている。精々虚勢を張ってこの負け確イベントを終わらせてしまうが吉であろう。俺は重い剣を鞘から引き抜き、構えた。
「……いや、無理だわ。何この剣、重すぎ…………」
前に重心が傾いてしまい、まともに立っていられない。前に進もうとしているのに、足がふらついて右へ、左へ。魔王にもため息を吐かれる始末である。穴があったら入りたい。結局、剣を振り上げることなく鞘へと戻した。
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11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
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