女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃

文字の大きさ
28 / 41

二十七話 宿場町にて

しおりを挟む
 イース王国の都市と都市の間には街道が敷かれ、一定の間隔で宿場町や村が点在している。例の男がいるという宿場町は、アルスターから数えて二つ目の町だった。

「わあ、結構栄えているんですね」

 こじんまりしているけど街道沿いの宿場町だから、人の行き来が多くて活気がある。いろんな店も並んでいる。なかなか感じいい街だ。
 酒場と宿を兼ねた店で部屋を取って荷物を下ろすと、さっそく情報提供者に会いに行く。
 情報提供者はネズミを思わせる中年の男だった。目をキョロキョロと動かして、落ち着きがなさそうに早口で捲し立てる。

「それが、昨日の夜からぱったり姿を見せねえんでヤンス」
「何だと? まさか行き違いになったというのか?」
「それが奴の宿には荷物が残されているみたいでヤンス。どっかに出かけているんじゃねえッスかねえ?」
「そうか……まさかとは思うが、偽の情報を掴ませたわけじゃないだろうな」

 レスターさんは笑顔で凄んでみせた。
 怒っている時の彼の笑顔には妙な迫力がある。私が怒られているわけじゃないのに、こっちまで怖くなる。案の定、ネズミみたいな男は青い顔をして震え出した。

「そっ、そんなことはありやせん! この首に誓って!!」
「首に? ほう……」
「ぜ、絶対に、そこらを出歩いているだけですって! ハイ! 今日か明日には帰ってきやすよ!!」

 最後は涙目になっていた。さすがに嘘をついているようには見えない。レスターさんも同感だったらしく、しょうがないといった感じに男を解放した。

「やれやれ……骨が折れるが張り込みと行くか。俺は酒場の方を見張るから、アイリたちは奴が止まっている部屋を監視してくれ」
「了解しました!」

 建物は一階が酒場、二階が宿屋になっている。両方を押さえておけば、戻ってきた時にはすぐに分かる。二階の部屋に戻ってルゥに事情を話すと、私たちの張り込みが始まった。

***

「……来ないね」
「そうだねー」

 私とルゥは交代で休憩をとりながら、例の男の部屋を監視し続けていた。一日経っても二日経っても、例の男は姿を現さなかった。レスターさんの方はどうだろうと思って、私は階下に降りる。

「お前、誓ったよな? この首に賭けると誓ったよな? その心意気は認めよう。だが例の男は二日経った今でも姿を現す気配がない。これは貴様が嘘をついたと見なして問題ないな?」
「決して、決して、決して嘘ではございませんんん!! どうかお許しを、この首だけはああああ!! あっしには田舎に病気の母と女房と五人の腹を空かせた子供があああ!!」
「ちょ、こんなところで流血沙汰は止めてくださいよ! 町から追い出されちゃいますよ!?」

 酒場に入るとレスターさんが情報提供者を締め上げていた。
 実りのない張り込みが三日目にもなれば、イラつく気持ちはよく分かる。本音を言うなら私も締め上げてやりたい。でも実行に移すのはまずい!

「そうでヤンス、そうでヤンス! それにあっしには病気の父と三人の女房と腹を空かせた母が五人いるんでヤンスううう!!」
「さっきと家族構成変わってないですか?」
「やはり詐欺師だな。天に召されるがいい」
「ひいいいいいい!!」
「だーかーらー! あんまり騒がないでくださいよ! ほら、店主も睨んでるじゃないですか!」

 多くの旅人を迎える酒場の店主は、この程度の騒ぎじゃ物怖じしない。騒ぐ私たちを冷静に睨んでいる。これ以上騒ぎが続くと、本当に追い出されそうだ。
 レスターさんも視線に気付いたらしく、情報提供者の首根っこを掴んだまま声のトーンを落とした。

「本当に嘘はついていないんだろうな?」
「はい! 三日前まではこの辺りにうろついていたんですよ! 嘘じゃありません!」
「ということは、私たちの接近に気付いて身を隠しているのかもしれませんね」
「目端の利きそうな男だからな。その可能性もあるかもしれない」
「そうなると、私たちが張り込みを続けているのは逆効果かもしれませんよ。一旦引いたと見せかけて、密かに様子を探りましょうか」
「ぜひ、そうしてくださいでヤンス! では、あっしはこれで!」

 ネズミみたいな男は解放されると、脱兎のごとく逃げ去って行った。

「アイリ。お前は二階に戻り、あの方に事情を話してきてくれ」
「はーい」

 二階に戻ってルゥに酒場での話をする。ルゥは頷いて賛同を示すけど、一つ思いがけない提案をした。

「一旦引いたと見せかけておびき出す作戦なら、僕が囮になるよ」
「えぇ!? そんなのダメだよ、危ないよっ!」
「確かに危ないかもしれない。だけど、僕なりに考えがあるんだ。アイリ、レスターを呼んできてくれないか?」

 階下に戻ってレスターさんにルゥの提案を打ち明ける。
 彼は顔色を変えて二階に駆け登っていった。私も後に続く。レスターさんは部屋に入ると、開口一番ルゥを叱りつけた。

「一体何を言い出すのですか! それがどれほど危険なことのか、分かっているのですか!?」
「落ちついて、レスター」
「これが落ち着いていられますか!」
「君が僕の安全を最優先に考えてくれているのは分かる。だけど僕なりに考えたことでもあるんだ。盗賊退治の夜、あの男は僕を見て驚いていた。アイリも覚えているよね?」
「うん、まあ」
「あの男が王子誘拐と暗殺事件にかかわっていた張本人なら、きっと向こうも僕のことを気にしているんじゃないかと思うんだ。アルスター近くのこの町を拠点にしていたのも、僕のことを探っていたのかもしれないよ」
「だからって、ルゥが囮にならなくてもいいんじゃないの?」
「ううん、アイリ。もし僕の読みが当たっているなら、僕が一人になるタイミングは彼にとって大きなチャンスだ。アイリ、レスター。もし君たちがあの男の立場だったら、どうする? 誰かといる時よりも、僕が一人になった時に接触しようとするんじゃないかい?」

 確かにそうかもしれない。

「たとえば僕たちが捜索を諦めて、引き上げたと見せかける。そして人気のないところで僕が一人になれば、向こうから接触してくる可能性もあるんじゃないかな」
「そうかもしれませんが……ダメです。やはり危険すぎます。許可できません!」
「レスター。これは大事なことなんだ。君だって分かっている筈だ。休暇はいつまでも続かないし、いたずらに日数が経過すれば相手だって本格的に行方をくらましてしまうかもしれない」
「ですが……!」
「大丈夫。僕の身なら、君とアイリが守ってくれる。そうだろう?」

 ルゥは信頼を込めた瞳で私とレスターさんを交互に見比べた。その瞳には心からの信頼が込められている。

「決まりですね、レスターさん! ここまで言われて応えない手はありませんよ。私たちは少し離れた場所で、ルゥの安全を守りましょう。例の男が接触してきたら挟み撃ちにして、逃がさないようにすればいいんです!」
「僕の案に賛成してくれるんだね。ありがとう、アイリ」
「実際有効な作戦だと私も思うもん。ルゥの作戦にはいつも助けられているからね。今回もきっとうまく行く。私が保証するよ」
「アイリ……っ!」

 レスターさんは私たちの様子を見て、諦めたように肩を竦めた。

「……こうなった以上、俺も乗るしかなさそうですね。分かりました。しかし王子、くれぐれもご無理はなさらないようにしてください」
「もちろんさ! レスターも分かってくれてありがとう!」

 そして私たちはすぐさま宿屋を引き払い、宿場町を旅立ったふりをした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

処理中です...