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第2章 死を齎す〝血塗れ少女〟
23「次の目的地へ」
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その後。
姉妹の別れから三十分もしない内に、ティーパたちは、帝都キンティスを出て、次の国――ダギッシュ帝国の北東にある、デホティッド皇国――に向かって出立する事が出来た。しかも無料で。
それは何故かと言うと――
「ガハハハハ! 少し見ない間に、素敵な仲間が増えたじゃねぇか、坊主と鎧の嬢ちゃん!」
「はい、お陰様で」
「まぁ、色々ありまして……って、再会して早々パンツ食うな!」
――ウェーダン王国王都クローズからキンティスまで移動する際に世話になった行商人のトスマル(何故か以前に比べてかなり軽装)が、再度、商品を積んだ荷馬車に乗せてくれたからだ。
「ありがとうなの! おじさん、良い人なの!」
「ガハハハハ! ただの仕事のついでだ! 気にする事は無いぜ、ローブの嬢ちゃん!」
まだ二週間も経っていないにも拘らず、その豪快な笑い声に懐かしさを感じていたアンは――
「っていうか、何で丁度タイミング良くトスマルさんが出発する時間に間に合ったのよ!? あんたまさか、リカが仲間になるって確信していて、トスマルさんが出発する時間を調べて、『また乗せて下さい、しかも今度は三人で』って、お願いしていたわけ!?」
「当然だ。リカが俺の仲間にならない訳ないからな」
然も当然と言わんばかりの物言いに、アンは呆れて溜息をつく。
「あんたって、本当、良くも悪くも規格外よね」
「だろ?」
「前言撤回! あんたは〝悪い〟規格外よ!」
揺れる馬車の中で、能面のような顔ながら胸を張るティーパに苛立ち、アンがビシッと指を差して言い放つ。
「ああ、怖いの。これだから年増は。怒ってばっかだと、皺が増えるの」
「何言ってんのよ! あんた、あたしと二歳しか違わないでしょ!」
「怖~い! お兄ちゃん、助けてなの!」
「だ・か・ら! あんたは妹じゃないって何回言ったら分かるのよ!」
新メンバーの僧侶娘とアンは犬猿の仲らしく、言い争いが絶えなかった。
それは、特に夜に顕著に表れた。
「何でリカが、あなたと身体を密着させながら寝なきゃならないの!?」
「しょうがないでしょ! 仕事用の馬車に乗せて貰ってるんだから!」
ティーパとアンの二人だけの時でさえ、既に手狭だった荷台に、馬車の主であるトスマルの寝床を確保した上で、残った場所を、御者台での見張り役以外の二人で使用するティーパ一行。
ティーパが御者台に座る際には、アンとリカが(不本意ながら)身を寄せ合いつつ寝た。
そして、アンが見張り役を務める時には――
「お兄ちゃん! どうしてリカに添い寝してくれないの!?」
――気を遣う――という訳ではなく、単に〝いざこざ〟が面倒臭くて、ティーパは荷台の外――馬車の車輪に背を預けて、地べたに座りながら眠りに就いた。
そして、それは――
「まぁ、当然そうなるわよね。勿論、至近距離で寝るなんて許さないけど!」
――リカが御者台にて見張り役をして、アンが荷台で寝る際にも、適用される。
言葉とは裏腹に、そう呟くアンは、どこか残念そうな表情を浮かべていた。
※―※―※
二回の車中泊(約一名、車〝外〟泊もいたが)を挟んだ後――
――何故トスマルが、以前に比べてかなり軽装だったのか、その理由が姿を現した。
それは、プレートアーマーを装備するアンにとって、天敵である――
「暑いいいいいいッ! 死ぬううううううううッ!」
――砂漠だった。
姉妹の別れから三十分もしない内に、ティーパたちは、帝都キンティスを出て、次の国――ダギッシュ帝国の北東にある、デホティッド皇国――に向かって出立する事が出来た。しかも無料で。
それは何故かと言うと――
「ガハハハハ! 少し見ない間に、素敵な仲間が増えたじゃねぇか、坊主と鎧の嬢ちゃん!」
「はい、お陰様で」
「まぁ、色々ありまして……って、再会して早々パンツ食うな!」
――ウェーダン王国王都クローズからキンティスまで移動する際に世話になった行商人のトスマル(何故か以前に比べてかなり軽装)が、再度、商品を積んだ荷馬車に乗せてくれたからだ。
「ありがとうなの! おじさん、良い人なの!」
「ガハハハハ! ただの仕事のついでだ! 気にする事は無いぜ、ローブの嬢ちゃん!」
まだ二週間も経っていないにも拘らず、その豪快な笑い声に懐かしさを感じていたアンは――
「っていうか、何で丁度タイミング良くトスマルさんが出発する時間に間に合ったのよ!? あんたまさか、リカが仲間になるって確信していて、トスマルさんが出発する時間を調べて、『また乗せて下さい、しかも今度は三人で』って、お願いしていたわけ!?」
「当然だ。リカが俺の仲間にならない訳ないからな」
然も当然と言わんばかりの物言いに、アンは呆れて溜息をつく。
「あんたって、本当、良くも悪くも規格外よね」
「だろ?」
「前言撤回! あんたは〝悪い〟規格外よ!」
揺れる馬車の中で、能面のような顔ながら胸を張るティーパに苛立ち、アンがビシッと指を差して言い放つ。
「ああ、怖いの。これだから年増は。怒ってばっかだと、皺が増えるの」
「何言ってんのよ! あんた、あたしと二歳しか違わないでしょ!」
「怖~い! お兄ちゃん、助けてなの!」
「だ・か・ら! あんたは妹じゃないって何回言ったら分かるのよ!」
新メンバーの僧侶娘とアンは犬猿の仲らしく、言い争いが絶えなかった。
それは、特に夜に顕著に表れた。
「何でリカが、あなたと身体を密着させながら寝なきゃならないの!?」
「しょうがないでしょ! 仕事用の馬車に乗せて貰ってるんだから!」
ティーパとアンの二人だけの時でさえ、既に手狭だった荷台に、馬車の主であるトスマルの寝床を確保した上で、残った場所を、御者台での見張り役以外の二人で使用するティーパ一行。
ティーパが御者台に座る際には、アンとリカが(不本意ながら)身を寄せ合いつつ寝た。
そして、アンが見張り役を務める時には――
「お兄ちゃん! どうしてリカに添い寝してくれないの!?」
――気を遣う――という訳ではなく、単に〝いざこざ〟が面倒臭くて、ティーパは荷台の外――馬車の車輪に背を預けて、地べたに座りながら眠りに就いた。
そして、それは――
「まぁ、当然そうなるわよね。勿論、至近距離で寝るなんて許さないけど!」
――リカが御者台にて見張り役をして、アンが荷台で寝る際にも、適用される。
言葉とは裏腹に、そう呟くアンは、どこか残念そうな表情を浮かべていた。
※―※―※
二回の車中泊(約一名、車〝外〟泊もいたが)を挟んだ後――
――何故トスマルが、以前に比べてかなり軽装だったのか、その理由が姿を現した。
それは、プレートアーマーを装備するアンにとって、天敵である――
「暑いいいいいいッ! 死ぬううううううううッ!」
――砂漠だった。
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