16 / 25
鬼の棲む場所その5
しおりを挟む
小手川と愛実の二人は軽バンから降りて、
うっすら霧が立ち込めてきた山道を地蔵が祀られていた小さな祠まで下っていった。
長年建て替えてはいないのだろう、木造の祠は薄汚れ、所々細かい傷が入っている。
その横に1m程の細長い石が置いてあり、そこには何やら地蔵の由来について書かれていた。
「なになに?……時代は不明ではあるがその昔このW山には、一つ目で頭には3本の赤い角を生やした、人の目には見えない透明な姿にも化けることの出来る、曲鬼という鬼が住んで悪さをしており、それを退治した山伏がこの地蔵にその魂を封じ込めたものである、だって?
おいおい!それじゃあ、湯川やしおん、副部長が姿を消したのもこの地蔵に閉じ込められてた鬼のせいだってのかよ?」
「……やっぱりこのお地蔵さんにヒビが入っちゃったのが原因みたいだね。……でも、一体どうやって直したらいいんだろう?
ねえ、君分かる?」
「……う~~~ん………。
あれじゃねぇか。セメントかなんかでもありゃなんとかなるかもだけど、そんなもん一体どこにあるんだよ?」
「……そう言えば今使われてる方のトンネルって改修工事してる所がなかったっけ?
……もう一回、元のトンネルの所まで戻れないかやってみるしかないんじゃない?」
二人は再び軽バンに乗り込むと、山道を引き返して行く。
……その後ろでヒビの入った地蔵が仄かに光を放った。
……すると、さっきまでは延々とループしていた道が何故か開けて、二人の乗った軽バンは元のトンネルの入り口まで帰ってこれた。
「……何で急に戻れるようになったんだろう?……まあ、いいか。」
「……じゃあその辺にトンネル補修用のセメントとかないか見てみようよ!」
「ああ、そうだな。」
二人は手分けして現在使用されている方のトンネルの中をくまなく探した。
「…………!!おい、あったぜ!!」
「……本当!?」
「ほらこれ!」
小手川が指差したその先には、青いビニールシートの上に工事で使うのだろう、バケツやバット等と一緒にセメントの袋がいくつか重ねて
置いてあった。
「……えぇと、確か砂と水を混ぜればいいんだっけか。」
小手川が、傍らのバットに盛られた砂を刺さっていたスコップで青いプラスチックのバケツの中にいくらか入れる。
そしてセメントの袋の端を破いてセメントの粉もバケツに入れた。
「よし!後は水っと…………。」
セメントの袋の少し先に水の入ったバケツがあったので、それを砂とセメントの入った方のバケツへと注ぎ入れ手に持ったスコップでよくかき混ぜる。
「……これでいいかな。よし、地蔵のとこまで戻ろう!!」
生コンの入ったバケツを抱えて二人は軽バンに乗り込み、地蔵のある祠まで戻っていった。
◆ ◆ ◆ ◆
「………これでいいんじゃねぇか?」
地蔵の頭に入った亀裂にお手製の生コンをキレイに塗り込めて小手川が言った。
「……あとは祈るだけ、か……。」
二人は車の中に戻って目を閉じて、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と唱え始めた……。
◆ ◆ ◆ ◆
「……愛実っ!愛実ったら!!もうすぐ着くぞ~~!!起~き~ろ~~!!」
愛実の肩を誰かの手が揺り動かす。
「………うぅ~~~ん。………………。
……あれっ!?しおん!?無事だったんだ?」
「なに、寝惚けてんのよ!!やだ、愛実ってば!!」
愛実が目を覚ますと、そこは松前の運転する軽バンの中で、いなくなった3人と眠っている小手川の姿があった。
「……まさかの夢落ち?」
軽バンは山道をゆっくりと上っていく。
すると前方の道路脇にあの地蔵が見えてきた。
その頭には小手川の塗り込めたコンクリートがまだ生乾きのままテラテラと光っていた。
うっすら霧が立ち込めてきた山道を地蔵が祀られていた小さな祠まで下っていった。
長年建て替えてはいないのだろう、木造の祠は薄汚れ、所々細かい傷が入っている。
その横に1m程の細長い石が置いてあり、そこには何やら地蔵の由来について書かれていた。
「なになに?……時代は不明ではあるがその昔このW山には、一つ目で頭には3本の赤い角を生やした、人の目には見えない透明な姿にも化けることの出来る、曲鬼という鬼が住んで悪さをしており、それを退治した山伏がこの地蔵にその魂を封じ込めたものである、だって?
おいおい!それじゃあ、湯川やしおん、副部長が姿を消したのもこの地蔵に閉じ込められてた鬼のせいだってのかよ?」
「……やっぱりこのお地蔵さんにヒビが入っちゃったのが原因みたいだね。……でも、一体どうやって直したらいいんだろう?
ねえ、君分かる?」
「……う~~~ん………。
あれじゃねぇか。セメントかなんかでもありゃなんとかなるかもだけど、そんなもん一体どこにあるんだよ?」
「……そう言えば今使われてる方のトンネルって改修工事してる所がなかったっけ?
……もう一回、元のトンネルの所まで戻れないかやってみるしかないんじゃない?」
二人は再び軽バンに乗り込むと、山道を引き返して行く。
……その後ろでヒビの入った地蔵が仄かに光を放った。
……すると、さっきまでは延々とループしていた道が何故か開けて、二人の乗った軽バンは元のトンネルの入り口まで帰ってこれた。
「……何で急に戻れるようになったんだろう?……まあ、いいか。」
「……じゃあその辺にトンネル補修用のセメントとかないか見てみようよ!」
「ああ、そうだな。」
二人は手分けして現在使用されている方のトンネルの中をくまなく探した。
「…………!!おい、あったぜ!!」
「……本当!?」
「ほらこれ!」
小手川が指差したその先には、青いビニールシートの上に工事で使うのだろう、バケツやバット等と一緒にセメントの袋がいくつか重ねて
置いてあった。
「……えぇと、確か砂と水を混ぜればいいんだっけか。」
小手川が、傍らのバットに盛られた砂を刺さっていたスコップで青いプラスチックのバケツの中にいくらか入れる。
そしてセメントの袋の端を破いてセメントの粉もバケツに入れた。
「よし!後は水っと…………。」
セメントの袋の少し先に水の入ったバケツがあったので、それを砂とセメントの入った方のバケツへと注ぎ入れ手に持ったスコップでよくかき混ぜる。
「……これでいいかな。よし、地蔵のとこまで戻ろう!!」
生コンの入ったバケツを抱えて二人は軽バンに乗り込み、地蔵のある祠まで戻っていった。
◆ ◆ ◆ ◆
「………これでいいんじゃねぇか?」
地蔵の頭に入った亀裂にお手製の生コンをキレイに塗り込めて小手川が言った。
「……あとは祈るだけ、か……。」
二人は車の中に戻って目を閉じて、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と唱え始めた……。
◆ ◆ ◆ ◆
「……愛実っ!愛実ったら!!もうすぐ着くぞ~~!!起~き~ろ~~!!」
愛実の肩を誰かの手が揺り動かす。
「………うぅ~~~ん。………………。
……あれっ!?しおん!?無事だったんだ?」
「なに、寝惚けてんのよ!!やだ、愛実ってば!!」
愛実が目を覚ますと、そこは松前の運転する軽バンの中で、いなくなった3人と眠っている小手川の姿があった。
「……まさかの夢落ち?」
軽バンは山道をゆっくりと上っていく。
すると前方の道路脇にあの地蔵が見えてきた。
その頭には小手川の塗り込めたコンクリートがまだ生乾きのままテラテラと光っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる