恐怖夜語り

たじ

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鬼の棲む場所その5

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小手川と愛実の二人は軽バンから降りて、
うっすら霧が立ち込めてきた山道を地蔵が祀られていた小さな祠まで下っていった。

長年建て替えてはいないのだろう、木造の祠は薄汚れ、所々細かい傷が入っている。

その横に1m程の細長い石が置いてあり、そこには何やら地蔵の由来について書かれていた。

「なになに?……時代は不明ではあるがその昔このW山には、一つ目で頭には3本の赤い角を生やした、人の目には見えない透明な姿にも化けることの出来る、曲鬼まがおにという鬼が住んで悪さをしており、それを退治した山伏がこの地蔵にその魂を封じ込めたものである、だって?
おいおい!それじゃあ、湯川やしおん、副部長が姿を消したのもこの地蔵に閉じ込められてた鬼のせいだってのかよ?」

「……やっぱりこのお地蔵さんにヒビが入っちゃったのが原因みたいだね。……でも、一体どうやって直したらいいんだろう?
ねえ、君分かる?」

「……う~~~ん………。
あれじゃねぇか。セメントかなんかでもありゃなんとかなるかもだけど、そんなもん一体どこにあるんだよ?」

「……そう言えば今使われてる方のトンネルって改修工事してる所がなかったっけ?
……もう一回、元のトンネルの所まで戻れないかやってみるしかないんじゃない?」

二人は再び軽バンに乗り込むと、山道を引き返して行く。

……その後ろでヒビの入った地蔵が仄かに光を放った。


……すると、さっきまでは延々とループしていた道が何故か開けて、二人の乗った軽バンは元のトンネルの入り口まで帰ってこれた。

「……何で急に戻れるようになったんだろう?……まあ、いいか。」

「……じゃあその辺にトンネル補修用のセメントとかないか見てみようよ!」

「ああ、そうだな。」

二人は手分けして現在使用されている方のトンネルの中をくまなく探した。

「…………!!おい、あったぜ!!」

「……本当!?」

「ほらこれ!」

小手川が指差したその先には、青いビニールシートの上に工事で使うのだろう、バケツやバット等と一緒にセメントの袋がいくつか重ねて
置いてあった。

「……えぇと、確か砂と水を混ぜればいいんだっけか。」

小手川が、傍らのバットに盛られた砂を刺さっていたスコップで青いプラスチックのバケツの中にいくらか入れる。

そしてセメントの袋の端を破いてセメントの粉もバケツに入れた。

「よし!後は水っと…………。」

セメントの袋の少し先に水の入ったバケツがあったので、それを砂とセメントの入った方のバケツへと注ぎ入れ手に持ったスコップでよくかき混ぜる。

「……これでいいかな。よし、地蔵のとこまで戻ろう!!」

生コンの入ったバケツを抱えて二人は軽バンに乗り込み、地蔵のある祠まで戻っていった。


    ◆  ◆  ◆  ◆

 
「………これでいいんじゃねぇか?」

地蔵の頭に入った亀裂にお手製の生コンをキレイに塗り込めて小手川が言った。

「……あとは祈るだけ、か……。」

二人は車の中に戻って目を閉じて、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と唱え始めた……。


    ◆  ◆  ◆  ◆ 


「……愛実っ!愛実ったら!!もうすぐ着くぞ~~!!起~き~ろ~~!!」

愛実の肩を誰かの手が揺り動かす。

「………うぅ~~~ん。………………。
……あれっ!?しおん!?無事だったんだ?」

「なに、寝惚けてんのよ!!やだ、愛実ってば!!」

愛実が目を覚ますと、そこは松前の運転する軽バンの中で、いなくなった3人と眠っている小手川の姿があった。

「……まさかの夢落ち?」

軽バンは山道をゆっくりと上っていく。

すると前方の道路脇にあの地蔵が見えてきた。
その頭には小手川の塗り込めたコンクリートがまだ生乾きのままテラテラと光っていた。














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