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………ゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!!ゴツゴツとした険しい岩山の上に聳える魔王城。
その最奥部で魔王は玉座に座り静かに微笑む。
「さぁ、勇者よ。さっさと俺を殺しに来い……。」
赤黒い、頭から生えた2本の角にストレートに流した肩まである白い髪。緑の虹彩を見開きもう一度魔王は呟く。
「勇者よ……。早く俺を殺しに来い……。それが俺達全ての願いだ……。」
………魔王の呟きに答えるかのように不気味に雷鳴が轟いた……。
……今日も歴戦のつわもの逹が魔王城へとやって来る。……全くどいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。
魔王の臀部からヌニュッと生えている、蜥蜴のようなそれでいて遥かに逞しい尻尾が右に左に揺れる。
……「勇者」以外に自分を屠れる者などいない、というのに……。
明日も明後日も聖都の魔方陣経由でこの魔王城へと腕に覚えがあるもの逹が押し寄せるのだろう……。決して自分達に「魔王」という存在が倒せる訳がない、とは夢にも思わずに。
「ファル・クタン!」
魔王は自分自身に魔法をかける。その瞳に自分自身のステータスが投影される。……一体誰に手が負えるというのだ…。この能力値……。こんなもの、「勇者」以外の一体誰に………。
ひとりでに笑いが込み上げる。
「クククッッ!!ハァーーハッハッッ!!!アーーハッハッハッッ!!!」魔王の目尻にキラリと光るものが浮かんだ……。
◆ ◆ ◆ ◆
楠春人は今年で28歳のフリーターだ。毎日毎日、好きでもない深夜のコンビニでレジ打ちとして糊口を凌いでいる。
……本当なら今頃デビューして印税生活だったのにな………。
3年前のことである。春人がギターボーカルを務めるオリジナルバンドがコツコツとやって来たライブの評判も相まってたまたま来ていたレコード会社の人間の目に留まり、トントン拍子にメジャーデビューが決まった。
やっと俺達の音楽が認められた。今まで自分を冷ややかな眼で見ていた周りの連中に一泡吹かせてやれる、と意気込んだものだ。
……しかし、悲劇というものはいつも突然人に襲いかかるものだ。ある日のスタジオからの帰り道、春人は後ろから蛇行してきた大型バイクに跳ねられた。その結果、両腕を複雑骨折してしまい、二度とギターを弾けない体になってしまったのだ。それに伴ってデビューの話も立ち消えた。
(畜生!!)
深夜のコンビニで客もおらず、一人陳列に勤しむ春人は思わず舌打ちする。
(あの酔っ払いのせいで俺の人生ぐちゃぐちゃだ!!畜生!!)
思えば7年前もそうだった。(百合江………。)
俺の人生はいつもこうだ。幸せが向こうからやって来たと思ったら無惨に希望は打ち砕かれる。
「……もう、限界だ…………。」
その最奥部で魔王は玉座に座り静かに微笑む。
「さぁ、勇者よ。さっさと俺を殺しに来い……。」
赤黒い、頭から生えた2本の角にストレートに流した肩まである白い髪。緑の虹彩を見開きもう一度魔王は呟く。
「勇者よ……。早く俺を殺しに来い……。それが俺達全ての願いだ……。」
………魔王の呟きに答えるかのように不気味に雷鳴が轟いた……。
……今日も歴戦のつわもの逹が魔王城へとやって来る。……全くどいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。
魔王の臀部からヌニュッと生えている、蜥蜴のようなそれでいて遥かに逞しい尻尾が右に左に揺れる。
……「勇者」以外に自分を屠れる者などいない、というのに……。
明日も明後日も聖都の魔方陣経由でこの魔王城へと腕に覚えがあるもの逹が押し寄せるのだろう……。決して自分達に「魔王」という存在が倒せる訳がない、とは夢にも思わずに。
「ファル・クタン!」
魔王は自分自身に魔法をかける。その瞳に自分自身のステータスが投影される。……一体誰に手が負えるというのだ…。この能力値……。こんなもの、「勇者」以外の一体誰に………。
ひとりでに笑いが込み上げる。
「クククッッ!!ハァーーハッハッッ!!!アーーハッハッハッッ!!!」魔王の目尻にキラリと光るものが浮かんだ……。
◆ ◆ ◆ ◆
楠春人は今年で28歳のフリーターだ。毎日毎日、好きでもない深夜のコンビニでレジ打ちとして糊口を凌いでいる。
……本当なら今頃デビューして印税生活だったのにな………。
3年前のことである。春人がギターボーカルを務めるオリジナルバンドがコツコツとやって来たライブの評判も相まってたまたま来ていたレコード会社の人間の目に留まり、トントン拍子にメジャーデビューが決まった。
やっと俺達の音楽が認められた。今まで自分を冷ややかな眼で見ていた周りの連中に一泡吹かせてやれる、と意気込んだものだ。
……しかし、悲劇というものはいつも突然人に襲いかかるものだ。ある日のスタジオからの帰り道、春人は後ろから蛇行してきた大型バイクに跳ねられた。その結果、両腕を複雑骨折してしまい、二度とギターを弾けない体になってしまったのだ。それに伴ってデビューの話も立ち消えた。
(畜生!!)
深夜のコンビニで客もおらず、一人陳列に勤しむ春人は思わず舌打ちする。
(あの酔っ払いのせいで俺の人生ぐちゃぐちゃだ!!畜生!!)
思えば7年前もそうだった。(百合江………。)
俺の人生はいつもこうだ。幸せが向こうからやって来たと思ったら無惨に希望は打ち砕かれる。
「……もう、限界だ…………。」
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