4 / 57
1-4
しおりを挟む
……その日、聖都ラーヌは上へ下への大騒ぎだった。聖都を守護する魔導騎士団指示の元、魔王率いる魔王軍それに対抗すべく大がかりな召喚術式が組み上げられ、異世界から勇者が召喚された。…その筈だったのだが……。
「…早く薬を持ってこい!!何もたもたしてる!!」
「空きのベッドはないのか!?何処か空き室に運び込め!!」
「……ダメです!!意識が戻りません!!」
「……よりにもよって、強力な回復魔法の使えるルーナ様の一団が事故に遭ってしまわれるなんて………。」
召喚の儀式は見事に失敗した。
それにより魔導騎士団で後方支援を担っていた、魔導騎士団副団長のルーナを始めとする魔導騎士20名、そして儀式の視察に来ていた王族の一人が、魔力の暴走により瀕死の重症を負ってしまう事態となり、今聖都中の名うての医師達がここ魔導騎士団の広間で必死の治療を施していた。
「……まだ女神の涙は届かないのか!?」
女神の涙とは、マジックアイテムの一つで、地母神イリアの加護を受けた北の地にある大きな古木から、数年に一度のみ収穫される死者をも生き返らせることのできる万能薬のことだ。
「…もう少しで届く、という事なんですが………。」
「……くそっ!!これでは一体何人救えることか!!薬は足りない、回復魔法の使い手も足らない、俺達はどうすればいいって言うんだ!!しかも、現国王の弟君がもう亡くなってしまわれる寸前だなんて!!もし、ラリー様を救うことができないなんて事になったら………。」
医師は思わずブルッと身を震わせた。
今の国王は歴代の王たちの中でも、特に厳格な事で広く知られている。
必死の治療を施した医師達全員が下手すると打ち首、等という馬鹿な事態にもなりかねない。医師は頭を抱えて蹲(うずくま)った。
◆ ◆ ◆ ◆
「……実は僕の前職は魔導騎士団の騎士でね。ちょっと色々行き違いがあって、未だに昔の同僚達とは仲があまり良くないんだ。」
苦笑いを浮かべ、頭を掻きながらラボスが話し出した。
「さっきの店で言い合いをしていたのはその魔導騎士団の参謀役をしているサーシャという奴なんだけど、どうも昔から僕とは相性っていうのかな、そいつがあまり良くなくてね。何かにつけて僕を目の敵にしてくるのさ。」
「……そうだったんですね。それは大変ですね。」とは言いつつも、さっきの男が言っていた「人殺し」という言葉が俺の脳裏を過(よぎ)る。
「……やっぱり気になるよね。あいつが「人殺し」って僕を罵ったのは、さっきホワイトラグーンっていう飛空挺があったのを覚えてるかい?あれの試運転を団長に僕が任されたんだけど、不幸なことに事故で死人が出てしまってね。それを全部僕が悪いって思っているのさ、あいつは。」
一瞬、ラボスの顔に暗い影が射す。
……思いの外ヘビーな話になってきた。やっと辛い人生におさらば出来たかと思ったらいつの間にか異世界に飛んでいてパニックになりそうな俺には些(いささ)か厳しいものがある。
「…まぁ、暗い話はこの位にして、今日は取り敢えずこの街で一泊しよう。」
とこちらに気を使っているのだろう、わざとらしく明るい笑顔を振り撒きながらラボスが締めた。
◆ ◆ ◆ ◆
「サーシャ様。飛空挺のメンテナンスが全て終わりました。いつでも出発できます。」
白いローブ姿の男が先程ラボスと言い争っていた癖っ毛の男の前にひざまづいて報告する。
「……わかった。下がれ。」
「ハッ!!」と応え男は部屋を去った。
「ラボスめ……。目障りな奴だ……。まぁ、しかしこれで次期団長の座は私の物だ。そうなれば今さらあやつが何かしたとしてもこのサーシャ様の敵ではないわ。ククククク……。」
不気味な笑みを浮かべるとサーシャは右手に持ったグラスを口元へと運んだ……。
「…早く薬を持ってこい!!何もたもたしてる!!」
「空きのベッドはないのか!?何処か空き室に運び込め!!」
「……ダメです!!意識が戻りません!!」
「……よりにもよって、強力な回復魔法の使えるルーナ様の一団が事故に遭ってしまわれるなんて………。」
召喚の儀式は見事に失敗した。
それにより魔導騎士団で後方支援を担っていた、魔導騎士団副団長のルーナを始めとする魔導騎士20名、そして儀式の視察に来ていた王族の一人が、魔力の暴走により瀕死の重症を負ってしまう事態となり、今聖都中の名うての医師達がここ魔導騎士団の広間で必死の治療を施していた。
「……まだ女神の涙は届かないのか!?」
女神の涙とは、マジックアイテムの一つで、地母神イリアの加護を受けた北の地にある大きな古木から、数年に一度のみ収穫される死者をも生き返らせることのできる万能薬のことだ。
「…もう少しで届く、という事なんですが………。」
「……くそっ!!これでは一体何人救えることか!!薬は足りない、回復魔法の使い手も足らない、俺達はどうすればいいって言うんだ!!しかも、現国王の弟君がもう亡くなってしまわれる寸前だなんて!!もし、ラリー様を救うことができないなんて事になったら………。」
医師は思わずブルッと身を震わせた。
今の国王は歴代の王たちの中でも、特に厳格な事で広く知られている。
必死の治療を施した医師達全員が下手すると打ち首、等という馬鹿な事態にもなりかねない。医師は頭を抱えて蹲(うずくま)った。
◆ ◆ ◆ ◆
「……実は僕の前職は魔導騎士団の騎士でね。ちょっと色々行き違いがあって、未だに昔の同僚達とは仲があまり良くないんだ。」
苦笑いを浮かべ、頭を掻きながらラボスが話し出した。
「さっきの店で言い合いをしていたのはその魔導騎士団の参謀役をしているサーシャという奴なんだけど、どうも昔から僕とは相性っていうのかな、そいつがあまり良くなくてね。何かにつけて僕を目の敵にしてくるのさ。」
「……そうだったんですね。それは大変ですね。」とは言いつつも、さっきの男が言っていた「人殺し」という言葉が俺の脳裏を過(よぎ)る。
「……やっぱり気になるよね。あいつが「人殺し」って僕を罵ったのは、さっきホワイトラグーンっていう飛空挺があったのを覚えてるかい?あれの試運転を団長に僕が任されたんだけど、不幸なことに事故で死人が出てしまってね。それを全部僕が悪いって思っているのさ、あいつは。」
一瞬、ラボスの顔に暗い影が射す。
……思いの外ヘビーな話になってきた。やっと辛い人生におさらば出来たかと思ったらいつの間にか異世界に飛んでいてパニックになりそうな俺には些(いささ)か厳しいものがある。
「…まぁ、暗い話はこの位にして、今日は取り敢えずこの街で一泊しよう。」
とこちらに気を使っているのだろう、わざとらしく明るい笑顔を振り撒きながらラボスが締めた。
◆ ◆ ◆ ◆
「サーシャ様。飛空挺のメンテナンスが全て終わりました。いつでも出発できます。」
白いローブ姿の男が先程ラボスと言い争っていた癖っ毛の男の前にひざまづいて報告する。
「……わかった。下がれ。」
「ハッ!!」と応え男は部屋を去った。
「ラボスめ……。目障りな奴だ……。まぁ、しかしこれで次期団長の座は私の物だ。そうなれば今さらあやつが何かしたとしてもこのサーシャ様の敵ではないわ。ククククク……。」
不気味な笑みを浮かべるとサーシャは右手に持ったグラスを口元へと運んだ……。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
やり直し令嬢は箱の外へ、気弱な一歩が織りなす無限の可能性~夜明けと共に動き出す時計~
悠月
ファンタジー
これは、狭い世界に囚われ、逃げ続けていた内気な貴族令嬢が、あるきっかけで時間が巻き戻り、幼い頃へ戻った。彼女は逃げるように、過去とは異なる道を選び、また周囲に押されながら、徐々に世界が広がり、少しずつ強くなり、前を向いて歩み始める物語である。
PS:
伝統的な令嬢物語ではないと思います。重要なのは「やり直し」ではなく、「箱の外」での出来事。
主人公が死ぬ前は主に引きこもりだったため、身の回りに影響する事件以外、本の知識しかなく、何も知らなかった。それに、今回転移された異世界人のせいで、多くの人の運命が変えられてしまい、元の世界線とは大きく異なっている。
薬師、冒険者、店長、研究者、作家、文官、王宮魔術師、騎士団員、アカデミーの教師などなど、未定ではあるが、彼女には様々なことを経験させたい。
※この作品は長編小説として構想しています。
前半では、主人公は内気で自信がなく、優柔不断な性格のため、つい言葉を口にするよりも、心の中で活発に思考を巡らせ、物事をあれこれ考えすぎてしまいます。その結果、狭い視野の中で悪い方向にばかり想像し、自分を責めてしまうことも多く、非常に扱いにくく、人から好かれ難いキャラクターだと感じられるかもしれません。
拙い文章ではございますが、彼女がどのように変わり、強くなっていくのか、その成長していく姿を詳細に描いていきたいと思っています。どうか、温かく見守っていただければ嬉しいです。
※リアルの都合で、不定期更新になります。基本的には毎週日曜に1話更新予定。
作品の続きにご興味をお持ちいただけましたら、『お気に入り』に追加していただけると嬉しいです。
※本作には一部残酷な描写が含まれています。また、恋愛要素は物語の後半から展開する予定です。
※この物語の舞台となる世界や国はすべて架空のものであり、登場する団体や人物もすべてフィクションです。
※同時掲載:小説家になろう、アルファポリス、カクヨム
※元タイトル:令嬢は幸せになりたい
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる