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俺達は通路の奥を抜けてだだっ広い空間に出た。
ここからでは天井が見えないくらい高い。
その奥の祭壇には銀色の妖しい光を放つオーブが空に浮かんでいる。
「ハルトっ!とりあえずあの祭壇の裏に隠れよう!」
ラボスと俺は祭壇の裏に回り込みしゃがんで追っ手が来ないか息を潜める。
タッタッタッタッ……。
通路の奥から追っ手のものだろう複数の人間の足音がこちらに近づいてくる。
「フーフーフーフー……。」
俺達の漏らす吐息がやけに大きく耳に届いた。
やがて、タッタッタッタッ、と奴等の足音が俺達のいる祭壇の間の入り口で止まった。
「……くそっ……。なんで奴等はこちらの正確な位置がわかるんだ……。魔力探知は無効にしたはずなのに……。」
ラボスが俺のとなりで声を殺してそう呻いた。
祭壇から様子を伺うと奴等の前には魔法の赤い光が浮かんでおり、黒い面をつけた茶色の装束の男がこちらに言い放った。
「……隠れても無駄だ!お前達がこの部屋までやって来たことは分かっている!大人しく出てくるがいい!」
俺達はソロソロと、隠れていた祭壇の裏から出て追っ手の前に姿を見せた。黒い面の男がギロリと俺たちを睨み付ける。
「……魔術研究所所長オゥル様の命により勇者、お前を捕縛する!かかれっ!!」
黒い面の男がそう命令すると、残りの3人が腰の曲刀を抜き放ち俺とラボスに襲いかかった。
その瞬間ラボスが呪文を唱えて俺達の四方に光の壁が出現する。
「反射壁!」
すると俺達に襲いかかろうとしていた3人はラボスの作った光の壁に弾かれてその場に蹲る。
黒い仮面の男はその様を一瞥すると俺達にゆっくりと近づいてきた。
「……フン!小癪な……。黒撃陣!!」
男が何かの技の名前を唱えると、男の持つ曲刀が黒い不気味な光を帯びて、ラボスの作った魔法の障壁をバラバラに切り刻んだ。
「そんなバカな……!!僕の魔法が効かない、だと!?」
ラボスが呟いて呆然とした、その一瞬を男は見逃さなかった。
素早くラボスの懐に飛び込んで曲刀でその腹部を切り裂く。
「ぐはあっっ!!」
男に斬られたラボスは声をあげてその場にくずおれた。うつ伏せに倒れたその背中はピクリとも動かない。
「……お前っっ!!よくもラボスをっっ!!」
黒い仮面の男は叫んで睨み付ける俺の視線を軽く受け流して酷薄な笑みを浮かべる。
「……さて。それではお前をラーヌにいらっしゃるオゥル様のもとへ届けるとしようか。」
俺の目の前で黒い仮面から覗く男の目が不気味に笑っていた。
◆ ◆ ◆ ◆
その頃魔王城では…………。
旋風のパルスとその一団が勇者の捜索から戻ってきて魔王の玉座の前にひれ伏した。代表してパルスが報告する。
「魔王様申し訳ありませんわぁ。同行者の小癪な魔法によりこちらの追跡がきかない事態となってしまったので、魔法探知がまた出来るようになってから出直そうと思います。……魔王様、それでよろしいですか?」
玉座に座った魔王ガロンはしばし黙っていたかと思うとこう言った。
「……そうか。……今の段階では急ぐ事もない、か……。……ご苦労だった皆の者よ。下がれ!」
ひれ伏したままで一礼すると旋風のパルスと配下のモンスター達はその場を立ち去ってゆく。
「……しかし俺は必ず今度こそ悲劇を回避して見せよう……。」
一人残された魔王ガロンは玉座でそう、呟いた。
ここからでは天井が見えないくらい高い。
その奥の祭壇には銀色の妖しい光を放つオーブが空に浮かんでいる。
「ハルトっ!とりあえずあの祭壇の裏に隠れよう!」
ラボスと俺は祭壇の裏に回り込みしゃがんで追っ手が来ないか息を潜める。
タッタッタッタッ……。
通路の奥から追っ手のものだろう複数の人間の足音がこちらに近づいてくる。
「フーフーフーフー……。」
俺達の漏らす吐息がやけに大きく耳に届いた。
やがて、タッタッタッタッ、と奴等の足音が俺達のいる祭壇の間の入り口で止まった。
「……くそっ……。なんで奴等はこちらの正確な位置がわかるんだ……。魔力探知は無効にしたはずなのに……。」
ラボスが俺のとなりで声を殺してそう呻いた。
祭壇から様子を伺うと奴等の前には魔法の赤い光が浮かんでおり、黒い面をつけた茶色の装束の男がこちらに言い放った。
「……隠れても無駄だ!お前達がこの部屋までやって来たことは分かっている!大人しく出てくるがいい!」
俺達はソロソロと、隠れていた祭壇の裏から出て追っ手の前に姿を見せた。黒い面の男がギロリと俺たちを睨み付ける。
「……魔術研究所所長オゥル様の命により勇者、お前を捕縛する!かかれっ!!」
黒い面の男がそう命令すると、残りの3人が腰の曲刀を抜き放ち俺とラボスに襲いかかった。
その瞬間ラボスが呪文を唱えて俺達の四方に光の壁が出現する。
「反射壁!」
すると俺達に襲いかかろうとしていた3人はラボスの作った光の壁に弾かれてその場に蹲る。
黒い仮面の男はその様を一瞥すると俺達にゆっくりと近づいてきた。
「……フン!小癪な……。黒撃陣!!」
男が何かの技の名前を唱えると、男の持つ曲刀が黒い不気味な光を帯びて、ラボスの作った魔法の障壁をバラバラに切り刻んだ。
「そんなバカな……!!僕の魔法が効かない、だと!?」
ラボスが呟いて呆然とした、その一瞬を男は見逃さなかった。
素早くラボスの懐に飛び込んで曲刀でその腹部を切り裂く。
「ぐはあっっ!!」
男に斬られたラボスは声をあげてその場にくずおれた。うつ伏せに倒れたその背中はピクリとも動かない。
「……お前っっ!!よくもラボスをっっ!!」
黒い仮面の男は叫んで睨み付ける俺の視線を軽く受け流して酷薄な笑みを浮かべる。
「……さて。それではお前をラーヌにいらっしゃるオゥル様のもとへ届けるとしようか。」
俺の目の前で黒い仮面から覗く男の目が不気味に笑っていた。
◆ ◆ ◆ ◆
その頃魔王城では…………。
旋風のパルスとその一団が勇者の捜索から戻ってきて魔王の玉座の前にひれ伏した。代表してパルスが報告する。
「魔王様申し訳ありませんわぁ。同行者の小癪な魔法によりこちらの追跡がきかない事態となってしまったので、魔法探知がまた出来るようになってから出直そうと思います。……魔王様、それでよろしいですか?」
玉座に座った魔王ガロンはしばし黙っていたかと思うとこう言った。
「……そうか。……今の段階では急ぐ事もない、か……。……ご苦労だった皆の者よ。下がれ!」
ひれ伏したままで一礼すると旋風のパルスと配下のモンスター達はその場を立ち去ってゆく。
「……しかし俺は必ず今度こそ悲劇を回避して見せよう……。」
一人残された魔王ガロンは玉座でそう、呟いた。
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