絶望の魔王

たじ

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広大なデル・バンバの祭壇の間には、トレースに腹を切り裂かれて今にも絶命してしまいそうなラボスが一人うつ伏せに倒れている。

「………グ……ググ…………。……ハル、トッ……。」

ラボスが伸ばすその手の先にはしかし、誰の姿もなく両手は虚しく空を切るばかりだ。

するとどこからともなく声が響いた。

「このまま無念を抱えて死ぬことなく、生きたいか?……例え、その身が邪悪に沈もうとも……。」

「……だ、誰だ…………?」

「お前が心からそう願うのなら私がその望みを叶えてやろう……。」

ラボスの視界は既に霞がかって朦朧としていて彼に語りかける者の姿は良く見えない。

「……………僕……に、は……ま、だ……やる……べき、こと……が………。」

絶命の間際、ラボス・ドゥール・クリスティは心の中でこう叫んだ。例え邪にこの身が沈もうともここで死ぬわけにはいかない、必ず生きてやるべきことを成し遂げるのだ、と。


そして、祭壇の間に浮かぶ金色のオーブがその妖しい光を一層強め眩いほどに光輝いた。


……その光はやがて、倒れて絶命しているラボスのその全身を包み込んでいく……。


     ◆  ◆  ◆  ◆


…………ラボスと離ればなれにされた俺は、茶色の装束に身を包んだ一団に、ロープで体をぐるぐる巻きにされて連行されていた。

「……お前達っ、絶対に許さないぞっっ!!」

俺はそう言って、俺を縛っているロープの先を握り横を歩いている、赤い短髪の女をキツく睨み付けた。

女は立ち止まってチラリとこちらを一瞥すると、何事もなかったかのように再び正面を向いて歩き始める。

「……くそっっ!!」俺は思わずそう吐き捨てた。


「……よし!ここらでいいだろう。ドレイン!」

先頭を歩いていた仮面の男が赤毛の女に声をかけた。ドレインの隣を歩いていた別の男がドレインから俺を繋ぐロープの先を受けとる。

ドレインは原っぱの真ん中に開けた場所に歩いていくと地面に何やら方陣を描き始めた。

そして、描いた方陣の所々に懐から出した青く光る石を置いて行く。

……やがてドレインが地面に描いた方陣全体が青い光を放ち始めた。

「……準備ができました。」

仮面の男に近づいてドレインが一言そう仮面の男に告げる。

その場にいた4人と彼らに引っ張られた俺は方陣の方に歩いていって方陣のちょうど中央に立った。

空間転移テレポーテーション!」

ドレインが両手で何かの印を結んで呪文を唱えると俺達の全身は方陣の青い光にぼわっと包まれていく。

……次の瞬間俺達の目の前には一面の荒野が広がっていた。遠くに大きな街の姿が見える。

……どうやら魔法を使ってどこかに瞬間移動したようだ。

茶色の装束を纏った4人は何事もなかったかのように平然と俺を引っ張って街の方へと歩き始めた。










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