絶望の魔王

たじ

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一方、魔王城では………………。

ラーヌで、魔導騎士団との戦いを投げ出して逃げ帰ってきた、旋風のパルス率いる一団は、魔王の玉座前にひれ伏して報告を行っていた。

「…………それで、お前達は、おめおめと逃げ帰ってきた、と?」

「……申し訳ございませんわ。でも、ラーヌには、得たいの知れぬ強大な魔力の持ち主もいたようで…………」

パルスは、魔導騎士団との戦闘中にも魔力探知を逐一行っており、ラボスの存在に気がついていた。

故に、魔導騎士団以外ともやりあうとなると、敗走の憂き目を見る可能性が高いと踏んで、魔王城へと逃げ帰ってきたのだった。

「………………そうか。
…………さては、ラボス・ドゥール・クリスティが…………」

「……ハイ?」

「いや、こっちのことだ……。
……ともかく、ご苦労だったな。
また、機を見て、奴の暗殺をよろしく頼むぞ、パルスよ」

「ハッ!!かしこまりましてございます!我が王っ!!」

そうして一礼すると、パルスと配下のモンスター達は玉座の間を去ってゆく。

一人残された魔王ガロンは呟く。

「…………そうか。ラボスが、な…………」


    ◆  ◆  ◆  ◆


相変わらず、デル・バンバの祭壇の間では、ラボスが苦しそうに仰向けに倒れて喘ぎ声をあげていた。

「…………なあ、百合江。何度もすまないけど、何かラボスに回復の魔法を使ってやってくれないか?」

「…………自信ないけど、やってみる。
細胞活性化ミランガ!」

百合江が、呪文を唱えると、優しい緑の光がラボスの体を覆い、その全身についた傷をみるみるうちに癒してゆく。

心なしか、ラボスの青ざめていた顔が、幾分持ち直したようだ。乱れていた呼吸も、段々と落ち着いてくる。

「…………成功、したかな……?」

「ありがとう」

自信なさげに呟く百合江にハルトが礼を言ってハグする。

「……いいのよ。……それよりも、これからどうする?」

「……まずは、ラボスが回復してからだな。百合江も、俺と同じでこの世界には余り詳しくないんだろ?」

ハルトの言葉にコクン、と百合江が一つ頷く。

…………やがて、小一時間たった頃、ようやく、ラボスが体を起こして言った。

「……すまなかったね。助かったよ。どうやら、僕もまだこの体には慣れていないようだな。ラーヌから逃げ出す前に、倒れてしまわなくって良かった……」

「……本当に大丈夫なんですか?」

ハルトと百合江が、ラボスを気遣う。

「……ああ。お陰さまでもう、大丈夫みたいだよ。……さて、これからどうしようか?
あっ!そういえば、ハルトの魔力を遮断しないと…………」

「それは、大丈夫です。百合江がやってくれましたから」

「……本当かい?…………確かに、魔力はちゃんと遮断されているようだね。百合江さんは、魔法が使えるの?」

「……ええ。どうやら、あそこでモンスターの体を植え付けられた、その影響みたいで…………」

「……あいつら、何て酷いことを…………。……やはり、あの場で僕が止めを刺していれば良かったな…………。…………ところで、百合江さんの体の事だけど、ひょっとしたら、なんとかなるかもしれない」

「…………本当に?」

驚いてハルトと百合江は、ラボスの顔をまじまじと見つめた。

「ああ。モンスターの肉片のみを取り除けばいいわけだから、何とか出来る、と思う」

「良かったな!百合江っ!」

「…………信じられない……。何年も、魔術研究所に閉じ込められていたか、と思ったら、ハルトとも再会できて、その上、この醜い体も治せるなんて…………」

百合江の瞳から、再度涙がポロポロとこぼれ落ち床を濡らしてゆく。

「……よし!それじゃあ、今日は皆疲れているだろうから、とりあえずここで夜を明かして、明日早速、百合江さんの体の治療をすることにしようか」

「……はいっ!!」

ハルトと百合江が、ラボスにそう答えると、3人は祭壇の間に寝転がり、すぐにスヤスヤと安らかな寝息を立て始めた。






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