絶望の魔王

たじ

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ハルトと百合江を抱えてラーヌから飛び立ったラボスは、再び古代遺跡デル・バンバへと戻ってきた。

地上に降り立ち、ハルトと百合江を下ろすと、ラボスは地面にうずくまり、苦悶の表情を浮かべる。

「ラボスさんっっ!!大丈夫ですかっ?」

ハルトが、うずくまっているラボスの両肩に両手を添えて、心配そうな顔で言った。

「……グッ!!……うぅっっ!!」

ラボスは、ハルトの言葉に答えることなく、低く呻いた。額からは玉のような汗が次々と流れ地面へと落ちてゆく。

一体どうしたのだろうか?それに、ラボスのこのまるでモンスターのような姿は………………。

「百合江!すまないけど、手を貸してくれないか?ここにいては、誰かに見つかるかもしれない。とりあえず、遺跡の中に移動しよう」

ハルトと百合江は、ラボスを両側から支えると、デル・バンバの中へと入っていった。

「…………暗いな」

遺跡の入り口でハルトがそう呟くと、百合江が魔法を唱え、小さな火の玉が目の前に出現した。

「見よう見まねでやってみたけど、うまく行ったみたい」

百合江が、はにかみながら言った。

「凄いな。…………他の魔法も使えるのか?」

「…………やってみないと、分からないけど、多分…………。……私、あの場所で、モンスターの体を無理やりくっつけられたりしたから、それで魔法が使えるのかも…………」

自信なさげに百合江が答える。

「よし。もう少し先に行くと、広い祭壇の間があるから、そこまでラボスを運ぼう。…………百合江、大丈夫か?きついなら、俺一人でも何とかして運ぶけど……」

「…………大丈夫。少し位なら…………」

そうして、ラボスを支えながら2人は、金色のオーブが妖しい輝きを放つ、奥の祭壇の間までたどり着いた。

2人は、ラボスを床に下ろすと、ホッと一息つく。

「…………まあ、ここなら簡単には見つからないかな…………。……でも、また、魔力探知を使われたら…………」

「…………私が、魔力の遮断、やってみようか?」

百合江はそう言うと、ハルトに向き直って呪文を唱える。

魔力遮断マジックインタラクト!」

ハルトの体が、赤い光に包まれてやがて、光が消えてゆく。

「…………これで、大丈夫だと思うけど…………」

「……百合江、一体いつ魔法を?」

「…………研究所にいる間、色々あったから…………」

言葉少なに答える百合江。

場にどことなく、気まずい沈黙が流れる。

「…………まあ、なにはともあれ、良かったよ!
再び、お前と生きて会えるなんて…………。俺は……俺は…………!」

ハルトの両目から、知らず知らず涙が頬を伝い落ちる。

百合江も、疲れきった顔で涙ぐみ、二人は実に7年ぶりに熱い抱擁を交わした。


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