絶望の魔王

たじ

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ラボスが外で狩ってきた野生のルカスの肉を魔法で焼いて食した後、ハルトと百合江は、ラボスに抱えられて、一路ヘルム山脈目指して大空を飛行している最中だった。

「……凄い高さだな。街や人が豆粒みたいだ」

そう呟きながら、デル・バンバを出発する前にラボスの言った言葉を、ハルトは思い出していた。

「ヘルム山脈までは、結構距離があるから、何回かに分けて進むことになると思う。それで、僕も百合江さんも、街に隠れるにしたって目立ちすぎてしまうだろうから、なるべく街を避けて野宿することにしよう」

……確かに、今の状態で街に入ろうものなら、俺はともかく、ラボスと百合江は、下手しないでも街の人々から、モンスターと間違われることだろうな。

そういえば、すっかり忘れていたけれど、ラボスが今の姿になった経緯をまだ聞いていなかったな。
今夜、野宿の際にでも、聞いてみることにしようかな。

そんなことをつらつらとハルトが考えていると、隣でラボスの右腕に抱えられた百合江が、
瞳をキラキラさせながら、興奮した口調で話しかけてきた。

「ねえ、ハルト見て!あそこにルカスの群れが走っているわ!!
空からの景色が、こんなに綺麗なものだったなんて、私、すっかり忘れていた!!」

百合江が、興奮するのも無理はない。なにせ、あの魔術研究所に長い間、囚われていたのだから。……それにしても、少しテンションが高すぎるような……。……まるで、何か、不安でも無理矢理振り払おうとしているかのようだ。

そう感じながらも、ハルトは笑顔で答える。

「ああ!こんな高い場所からの景色は最高だな!」

そんな二人のやり取りをニコニコしながら見ていたラボスが口を挟んだ。

「二人とも、ずっと僕の腕に抱えられたままでキツくないかい?休みたくなったら、いつでも言ってね」

「……そんな。一番辛いのは、ラボスさんじゃないですか。なんか申し訳ないです」

百合江が、すまなさそうにそう返すと、ラボスは相変わらずニコニコとしながら首を振って、

「いいや。なんか、この姿になってから、無尽蔵に力が湧いてくるようになったから大丈夫だよ」

と、答える。

ラボスのその言葉に、百合江の中で再び不安が鎌首をもたげてくる。……本当に大丈夫なのかしら。もうかれこれ、2時間は私たちを抱えたまま、飛び続けているっていうのに。

……そもそも、ハルトの話では、この人とはこの世界に来てすぐ出会ったっていうけれど、それにしたって、このまるで、モンスターのような姿は一体……?ハルトに聞いても、わからないって言うし…………。

どこか不安げな面持ちになった百合江の様子を見て、敏感に察したラボスが、その胸に抱いたハルトと百合江に向かって言った。

「…………僕が、こんな姿になってしまった経緯については、今夜、2人にはちゃんと話すからさ。君もそれでいいかい?ハルト?」

「ええ。それで大丈夫です」

そうして、その夜、コーダの街の近くまで移動してきた3人は、街の少し手前の森にて野宿することにした。
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