唯夏

たじ

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唯夏

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小学生の頃地元で俺はいつも3人の幼なじみと一緒に遊んでいた。

唯、浩、良和の3人と。

俺と浩、良和の3人はグループの中で紅一点の唯の事が好きだった。
でも全員他のメンバーとの仲が悪くなることを考えて言い出せずにいた。あと単に気恥ずかしかったのもあったかもしれない。

ーーそんなある夏の日の事。


     ◆  ◆  ◆  ◆


「お~~い!!たける~~~!!お前もこっち来いよ~~!!」

その辺りの子供達をまとめていたガキ大将の浩が自転車をこいで川原を通りすぎようとした俺に声をかけてきた。

「……何?俺まだ夏休みの宿題できてないから家に帰ってやりたいんだけど……。」

「バ~~カ!!だから今から皆で手分けしてやろうってんだろ!お前も一緒にやろうぜ!!」

「そう言うことなら乗った!!」

そして俺と浩、良和と唯は浩の家に集まってそれぞれ手分けして夏休みの宿題に取りかかった。


     ◆  ◆  ◆  ◆


「フーッやっと終わったな!!」

浩の言葉に全員が頷く。

全くやっていない状態からのスタートだったから結構な時間が経過していた。

外を見ると既に夕陽が地平線の果てに吸い込まれようとしている。

「唯!遅くなっちゃったから送るよ!」

気取り屋の良和が唯に声をかける。

「お前が送るなら俺も唯の事送っていくもんね~~!!」

「じゃあ俺も行くよ!」

良和だけにいい格好をさせまいとすかさず浩と僕も一緒に唯を家まで送ることになった。

外に出るとミ~ンミ~ンミ~ンと蝉があちらこちらで鳴いている。

うだるような暑さの中、俺達は唯の家の方角へと歩き出した。

すると浩の家から10分程歩いた頃だろうか。
俺達は豪雨に見舞われた。

ザーーーーーッッッッ!!
突然降りだした滝のような雨に慌てて俺達は近くにある雑木林まで走って小降りになるまで木々の下で雨宿りすることにした。


     ◆  ◆  ◆  ◆


「雨、中々止まないね……。」

透き通るような声で唯が呟く。

「本当だよな。いつになったら止むんだろ?」

俺はそう答えて時々稲光が閃く真っ黒な空を見上げていた。

横の浩と良和もどこか不安な顔をしていたのを今でも俺はハッキリ覚えている。

その時だった。突然唯が、

「…………ッッッ!!……お腹、痛い……。」

と言って腹を押さえてその場にうずくまった。

「おい!大丈夫かよ!?」

浩が唯に問いかける。ーーと、唯を見ていた浩の視線が唯の下半身に釘付けになった。

「うわっっ!!唯っっ!お前股から血ぃ出てんじゃねぇか!!大変だっっ!!」

それは今考えると初潮の訪れだったんだろうけどその時の俺達はまだまだガキだったから誰もそうとは分からず結果、唯の下着を取って雨でもいいから流れ出た血をとりあえず洗い流そうということになった。

当然唯は激しく抵抗したけれど浩が乱暴に下着を引っ張った際後ろの木に後頭部をぶつけて気を失ってしまった。初潮で体調が悪かったことも原因だったかもしれない。

……俺達は気を失ってパンツが半ば脱げている唯の姿に興奮していたように思う。

息を荒げながら誰が先と言うこともなく3人全員でゆっくりと唯のパンツを脱がし傷の具合を確かめようと履いていたスカートを捲り上げた。

「…………何だコレ?」

浩が唯の股間を見たまま思わず漏らした。

俺も良和も余りに衝撃的な光景に何も言えずに動きが止まる。

……信じられないことに唯の股間には俺たちのよりもやや小振りな陰茎がついておりその下には控えめな割れ目が流血しながら顔を覗かせていた。

後になって知ったことだけど世界には極々稀に唯のように男女両方の性器を持って生まれてくる子供がいるらしかった。

……しかしその当時の俺たちには当然そんな難しいことは分からない。

皆パニックになって口々に喚き始めた。

「……こいつっっ、俺たちを騙してたんだなっ!!本当は男だったんだっ!」

「信じられないっ!僕は心から唯のことが好きだったのにっっ!!」

「俺だってっっ!!…………こんなウソつきは死んじゃえばいいんだっっ!!」

俺は手近に転がっていた拳大の石を苦痛に呻く唯の、その整った顔に全力で叩きつけた。

「…………ッッッ!!」

相当痛かったのだろう。それまで気を失っていた唯が目を覚ます。

「……痛いっっ!!……あれ?何で3人ともそんな怖い顔で唯の事、見るの?」

「たけるっっ、それよこせっ!!」

浩が俺の手から石をむしりとり何が起こっているのか分からず未だ呆然としている唯の顔に向かってそれをうち下ろした。

「キャァァァァッッーーーーーー!!!」

「……僕もやるよ。浩それ貸して。」

普段はクールぶっている良和もこの時ばかりは憤怒に顔を歪ませて浩から手渡された石を力一杯唯に叩きつけ始める。

「よくも今まで僕たちを騙してくれたなっっ!!このクソ野郎っ!!」

ドガッ!ドガッ!ドガッッ!!

そう言って半狂乱になりながら唯の顔に何度も石を叩きつける良和の顔はいつの間にか涙でグシャグシャになっていた。

「……畜生!!……畜生!!……畜生!!!」

「おいっ!!止めろっ!!本当に死んじゃうだろっっ!!」

不意に我に帰った俺はなおも石をうち下ろす良和を後ろから羽交い締めにした。

「……おい。唯……。おいっっ!!唯、起きろっっ!!」

浩が俺達にボコボコにされた顔でグッタリとしている唯の両肩に手をかけて前後に揺さぶり声をかける。

…………しかし彼女はもう二度と動くことはなかった……。

……ゴロゴロゴロゴロッッ!
ドーーーンッッ!!

……どこかで雷の落ちる音がする。

……相も変わらず土砂降り雨の中俺達は初めて人を殺してしまった。


    ◆  ◆  ◆  ◆


……あれから近くの人が唯の死体を発見してすぐに警察が捜査にやって来た。
けれど余りに土砂降りだったものだから唯を殺した犯人に結び付くような証拠は何も見つからなかったらしい。やがて警察も引き上げていった。

……俺達は殺人者なのに逮捕されずのうのうと生き永らえてしまった。

……風の噂では浩は高校卒業後精神を病んで今は隔離病棟に軟禁されているらしい。

良和は罪の意識に耐えきれず中学の頃に校舎から飛び降りて自殺してしまった。

……そして俺はーーーーーーーーーー。







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